「福島原発事故は過去の自民党政権の遺産だ。腐れ自民党どもが! 貴様らの悪政が今の悲劇を招いているんだ」
2011年3月、東日本巨大地震が発生した直後、日本の人気漫画家・雁屋哲さん(72)は自らのブログにこのような文章をつづった。長い間与党として政権を握ってきた自民党に対し、雁屋さんははばかりなく批判を繰り広げた。これに対し、いわゆる「ネット右翼」が即座に攻撃し、ブログへのアクセスも不可能な状態に陥ったため、雁屋さんは結局「日本に言論の自由があるというのはとんでもない間違いだと痛感した」として、5カ月間ブログの更新を中止した。
昨年初め、雁屋さんは1年半ぶりに反撃に出た。週刊漫画雑誌『ビッグコミックスピリッツ』に1983年から連載している代表作『美味しんぼ』に「福島の真実」というサブタイトルを付けた。日本の食文化に根差す「匠の精神」を見事に表現し、高い人気を誇るこの作品を通じ、安倍政権の福島第一原発事故への対応を真っ向から批判したのだ。
とりわけ、最近掲載された2話では、福島県を訪れた主人公が鼻血を出す場面や、福島第一原発がある双葉町の前町長が「このような症状は被ばくしたのが原因だ」と発言する場面が描かれ、物議を醸している。
今回もまた、雁屋さんに対する攻撃が繰り広げられている。福島県や政府の閣僚にとどまらず、今月17日には安倍晋三首相までもが「根拠のないうわさに対しては政府レベルで全力を挙げて対応する」と述べた。
騒ぎが収まらない中、『ビッグコミックスピリッツ』の発行元である小学館は、事実上の白旗を上げた。小学館は19日号で、編集長の名で「ご批判、お怒りは真摯(しんし)に受け止めて、表現のあり方を今一度見直していく」という文章を掲載する予定だ。