わたしはカラオケと焼肉が嫌いなんですけどそれらを好む人が多くいることはよく知ってますし、ただわたしは行かない、わたしは食べたくない、というだけでお好きな人はどんどん歌って食べたらよろしいと思いますし、他人から「カラオケ行って楽しかった」と言われたらいつも心から「良かったね!」と答えていますし、焼肉店の壁に「だめじゃん Gジャン ユッケジャン」とスプレー缶で落書きするような嫌がらせもしません。
それらやそれを好む人を排斥したり憎んだり、その嗜好を否定したりも決してしません。でも誘われて断る時に理由を聞かれてこう答えるとたまに「カラオケ(or焼肉)が嫌いだなんて! なんでそんなこと言うの!」って怒り出しちゃう人がいて、ナンダヨプンスカーてなっちゃって、これはおそらく「嫌い」って単語のインパクトが強すぎるせいだと思うので何年か前からなるべく「好きじゃない」とか「興味が無い」って言うようにはしてるんですけど、そうすると「カラオケ(or焼肉)の本当の楽しさ(orおいしさ)を知らないからよ! 今度一緒に行こうよ!」ってなってしまって「いやいや、あの……」ってなって、タジタジーてなって結局「嫌い」って言わなきゃならなくて、まったく困ったなーとか思ってます。
本音を隠し通して「カラオケ最高! 焼肉最高!」つってゴーしてみたこともあるんですけど、やっぱりだめでした。根が小心者なので嘘をついているというストレスで腹から腰にかけて見たこともないようなへんなブツブツがいっぱいできました。おしゃれなカーテンみたいで見ようによってはかっこよかったですけど、痒いからだめです。
そういうわけで相手の感情を害さずに、そして腹から腰にかけてへんなブツブツができないようにするにはどうしたらいいのか考えてたんですけどこれがなかなか難しいのです。「わたしの星ではカラオケと焼肉は法律で禁止されている」とか言えばよいのか。でも「ここは地球だ」って言われたらおしまいだしね。我らが美しい地球つってね。イエスセイブザアースつってね。
「宗教上の理由で」っていうのも考えて、「モヌモヌ教」っていう架空の宗教団体に入ってるっていう設定までしてたんですけど、相手がモヌモヌ教に興味持っちゃう場合もありえるでしょ。ぜひわたくしもモヌりたいですわって。そしたらやっぱりわたしは夫を架空のモヌ神に仕立て上げないといけなくなりますよね。他に頼める人もいないし。あんたちょっとモヌ神やってくれん? って。でも夫はいやがると思う。なんで俺がモヌ神になんかならないといけないんだよ、そもそもモヌ神ってなんだよって話になるよね。だから無理なんです。だいたいモヌ神ってなんなんですか?
なので最近は最近は「へへっ……コレがコレなもんで」と言いながらクネクネしたり髪の毛をむしったりしてごまかしてます。「コレ(クネクネ)がコレ(毛むしる)なもんで」です。全然意味はわからないと思うんですけど、むしろやってる本人も全然わかってないんですけど、とりあえず相手は「あ……へえ……」って後ずさりしながら遠ざかって行ってくれるので、「つまりどういうこと?」って追求してくる人が現れるまではもうしばらくこれで行けるっぽいです。蒲田行進曲ってすごいっていう、そういうお話でした。おわりです。