こんな記事を読んだ。
「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」と名付ける安倍政権のセンス
http://www.huffingtonpost.jp/satetsu-takeda/story_b_5341480.html
この記事自体は正直、ただのいちゃもんみたいな文章で、大学受験の現代文風に筆者の主張を抜き出すならば、
「男性リーダーのネットワークを使って、女性を多めに昇格させていきましょう」という姿勢が気に食わない。
このような取り組みの主語は女性であるべきだ。
ということだろう。
「男性リーダーのネットワークを使う」という姿勢自体が女性の社会進出を考えることができていない、と言いたいらしい。
大事なのはネーミングより中身だと思うんだけど。
ここまで書いたけれど、今回の記事は、冒頭の記事にツッコミを入れるためのものではない。
記事を読んで、昔色んな人と話していたことを思い出したので、軽くまとめておきたくなったのだ。
この記事は「男女」という非常にセンシティブな話題に触れるため、偏見が多くなるかもしれない。
それでも偏っているなりに、自分がこれまで聞いてきた話を元に、考えをまとめてみたいと思った次第だ。
結論から言うと、女性が活躍する社会基盤ができて、女性リーダーが増えることで、
逆に、普通の女性が働きづらくなる職場になる可能性もあるんじゃないか、と思っている。
今まで付き合った人の中には、看護師や保育士、CAみたいな、「女性の職場」で働く人がいた。
付き合っている間は、たまに仕事の話なんかをするんだけど、女性の上司がすごく意地悪だ、という話を聞くことが多かった。
もちろん、実際にその人の職場にいたわけではないから、主観は多分に入っていると思う。
それでも僕が聞いた限りでは、女性主体の職場の女性上司というのは、男性主体の会社の上司よりも理不尽な意地悪をしていることが多いように感じた。
化粧や髪型の注意や、しゃべり方が気に食わないと言われたこともあるらしい。
決して偏見を広めたいわけではないんだけれど、看護師の子から聞いた話では、妊娠中もギリギリまで夜勤のシフトを入れられ、
結果として身体に負荷がかかり、流産してしまった人もいると聞いた。
それで、そういう意地悪をする女性上司の多くは、「結婚せず、仕事に尽くして、頑張って出世した人」みたいなんだよね。
色んな子から聞いた話を総合するに、女性上司はとにかく、非常にパワフルな人が多い。
そうやって、ある意味で何かを犠牲にしてきた女性(ひと)や、仕事に献身的に身を捧げてきた女性(ひと)にとって、
たとえば育休を取って仕事休みます、妊娠してるから早く帰ります、なんていうのは甘えに見えてしまうのかもしれない。
そもそも出世する人はハードワーカーが多いだろうし、そうやってハードワークしてきた女性にとって、
結婚したら仕事を辞めます、なんていう女性の気持ちはなかなか受け入れられないんじゃないだろうか?
というのも、多くの会社員がニートに対して、「何やってんだ働け」と言うように、
自分が何かを(犠牲にして)頑張っているときは、"自分と同じような立場にもかかわらず"、努力していない人の気持ちをなかなか理解しづらいものだからだ。
ワタミの渡邉美樹みたいな、超人的に"頑丈な"経営者が、社員にも同じような働きを求めることに似ているのかもしれない。
「俺もできたんだから、お前もできるだろ」
というロジックである。
これは悪魔のロジックで、これを言われるとなかなか言い返せない。
「あなたにはできたかもしれませんが、僕にはできません」
というのは、人間として劣っていると認めてしまうようなもので、なかなか受け入れがたいからだ。
ひるがえって、男女の問題を考えてみる。
当たり前だけど、どう考えても、男と女は違う。
もちろん、これはビジネス能力が異なっているという意味ではない。
生物的に違うという意味だ。
男は妊娠の苦しみとかわからない。生理もこない。
体力も違う。
女性の身体のことは、わからない
でも、性別(=立場)が違うからこそ、想像する。
それしかできないからだ。
こういうときはきっと、辛いだろうな。大変なんだろうな、って。
そこに、
「俺もできたんだから、(女性に対して)お前もできるだろ」
というロジックが入る余地はない。
そもそも、生まれたときから違っているんだから。
思いやりとは、異なる他者を受け入れることだ。
他者との違いを認めることだ。
そのためには、想像力が必要だ。
「自分ができたから、君もできる」
という主張は、想像力の欠如で、思いやりの欠落でもある。
もし仮に、これからの社会に、ハードワークで出世した女性上司が多く誕生して、
「私はこうやって生きてきた。(女性に対して)あなたもできるでしょ」
という主張が多く出てくるならば、それは決して"普通の"女性にとって働きやすい職場ではないように思える。
少なくとも、(離職率の高さからもわかるように)、看護師などの女性主体の職場が、女性にとって働きやすい職場であるようには見えない。
大事なのは、男性/女性の対立構造ではなく、他者を理解しようとする想像力なのだ。