2010年10月22日11時20分
【動画】10段の人間ピラミッド
10段ピラミッドを組み始める男子生徒たち=9月25日、兵庫県伊丹市鴻池3丁目、市立天王寺川中学校提供
上に乗る生徒は補助役の生徒に肩車をしてもらい、よじ登る=9月25日、兵庫県伊丹市鴻池3丁目、市立天王寺川中学校提供
上に乗る生徒たちは補助役の生徒に肩車をしてもらい、よじ登る=9月25日、兵庫県伊丹市鴻池3丁目、市立天王寺川中学校提供
一番上に乗った生徒が両手を広げ、10段ピラミッドが完成=9月25日、兵庫県伊丹市鴻池3丁目、市立天王寺川中学校提供
崩すときは、最上段の生徒がまずゆっくりと降りる=9月25日、兵庫県伊丹市鴻池3丁目、市立天王寺川中学校提供
9月25日の体育大会で10段ピラミッドを組みあげ、解体する様子=いずれも兵庫県伊丹市立天王寺川中学校提供
ピラミッド前面の生徒が頭を下げ、上の生徒から順に滑り降りる=9月25日、兵庫県伊丹市鴻池3丁目、市立天王寺川中学校提供
兵庫県伊丹市の市立天王寺川中学校の生徒が体育大会の組み体操で10段の巨大な人間ピラミッドを完成させ、話題になっている。その様子が公開されたインターネット上の動画サイトは1カ月足らずで57万回以上のアクセスを記録した。「危ない」という意見もあるが、生徒らは「支えあうことの大切さを学んだ」と喜んでいる。
人間ピラミッドは9月25日にあった体育大会で披露された。3年生の男子生徒137人が約1分半かけて組み、頂上の生徒が両手を広げて、約5秒静止した。
高さは約7メートル。頂上に立った堀拳太君(14)は「さすがに足が震えた。でも、完成したときはすごくうれしかった。みんなの絆(きずな)が深まった」。外から見えない最下段の中央にいた梶村祐介君(15)は「めっちゃ暑いし、薄暗かった。外の様子がわからないから成功を信じて耐えた」。
指導したのは体育教師歴26年の吉野義郎さん(49)=大阪府池田市。2009年度から県の制度を利用して兵庫教育大大学院に通い、組み体操の教材化を研究しており、今回初めて10段ピラミッドの設計図を描いた。
最も体重がかかる下段中央付近には体格がよく筋力がある生徒を、上段には体重が軽くバランス感覚の高い生徒を選抜。手の方に体重をかけがちになるのを防ぐため、3対7の割合で足側にかけるように意識させるなどした。
四つんばいになっている生徒らの腹部を、立って両腕で抱きかかえる「かすがい」役も配置し、教師や生徒が落下や倒壊時に備えて補助役として周囲に待機した。
「誰もが主役で1人でも欠けたらできない。組み方は綿密に計画し、崩れ方や落ち方を先に教えた。安全性には自信があった」と吉野さん。
生徒たちは9月上旬からほぼ毎日練習した。体育大会当日は全員が「一心不乱」と背中に書かれた赤いTシャツを着て臨んだ。
全国でも10段を完成させた例は少ないとみられる。組み上がる様子を教師が撮った動画がネット上の動画投稿サイト「ユーチューブ」に流れると、「すごい、感動した」「青春だな」などとたちまち話題になった。
一方、「危険すぎる」「事故が起こったら学校側は責任をとれるのか」といった厳しい意見もあった。04年には兵庫県の中学校で、10段のピラミッドに挑戦しようとしてバランスを崩し、生徒4人が軽傷を負う事故も起きている。しかし、天王寺川中学校は昨年と3年前にも9段ピラミッドを完成させていた。
木下誠校長(60)は「一歩間違えれば大変な事故になるが、安全性を高めるために工夫をすれば、実現できる。生徒たちが感じた代え難い感動や達成感は、その後の人生に必ず生きると信じている」と話している。(山崎聡)