あざなえるなわのごとし

ネット事件から妄想まで雑食




罪とか罰とか汚れちまったASKAとか

愛はおしゃれじゃない
人と、創作物と。 - いつか電池がきれるまで
ASKA氏のドラッグSAY YESな逮捕について。
曲とその歌い手のイメージが付いて回る、というお話。


そりゃあこういう「イメージが切り離せない」と言うのは解るんですよ。
どーしてかと言えば普段は「○○の××」とイメージをセットにして売ってる。
「あの○○が5年ぶりの新曲を発表!」
「大御所○○驚愕の新曲!初披露!!!」

もちろん、何も無いときなら
楽曲+名前=作品価値
こんな風に名前が作品の価値にプラス効果を与える。
名前、物語、背景、さまざまな創作者のデータを創造物に乗っけて価値判断をしてる。
それは売り手側の意図でもあり、買い手側が勝手にやってる価値操作。


ところが何かしでかすと
楽曲+(名前―事件)=作品価値

こうなる。名前が付いているせいでその作品の価値自体が下がる。
それは反対に言えば、
「普段は、いかに名前をプラスして価値判断してるのか」
と言うことでもある。
今回のASKAもそうだけども。

ポール・マッカートニー取調室


ところが人間は覚えない生き物ですから、今さらポールを見てもポール・マッカートニー取調室なんてotsun○氏でも見かけない限りは思い出さない。
ポール=逮捕、ではなく、ポール=元ビートルズ、ですよ。
伊武雅刀が張り切ってますが、考えてみりゃあ伊武雅刀竹中直人がこういうことやってたって若い方は知らないし、もう役者のイメージで見てるんだろう。

何ごとも価値は絶対的でなく相対的、そいつの観測範囲次第。
ミック・ジャガーだって今や健康志向でランニングやってる時代。

TEARS IN HEAVEN


Eric Clapton/Tears in heaven - YouTube
クラプトンの「ティアーズ・イン・ヘヴン」
泣ける曲ですよね。
でもクラプトンも過去にドメスティックバイオレンスで奥さんをボコボコにしてた過去があるわけですよ。
ドラッグでドロドロになってた時期ですがそれが原因で離婚してる。

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元奥さんをドラッグ中毒でボコボコにしてるわけですからそりゃあ「罪だ!」と言うひとからすれば「なにが「ティアーズ・イン・ヘヴン」だよ。がっかりだよ」と思われるかもしれない。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。
しかし知らなきゃあ「亡くしてしまった天国の息子に送る感動する歌だよね」と聴ける。

悪そうなやつはだいたいともだち

アメリカ、特にラッパーなんかはその育ちや素行の悪さを前面に出すわけです。
いいところのお坊ちゃまがラップでレペゼンだのファ○クだの言っても説得力に欠ける。
殺人事件、ポン引き、ポルノ映画監督……スヌープ・ライオンの数奇な人生(1/3)|サイゾーウーマン
スヌープなんざ今やレゲェ・アーティストになって。
先日もNBAオールスターにファレルと一緒にステージに上がってた。

誰も「あの人って元ギャングだよね」なんて言わない。
だってラッパーは「悪そうなやつは大体友だち」ですから。
潔癖に「アーティストの身元はクリーンじゃなきゃあ作品の価値も落ちる」なんて聞き方をリスナーはしない。



Afrika Bambaataa & Soul Sonic Force - Planet ...
アフリカ・バンバータなんてレジェンドですけど、ブロンクスでギャング団を結成してましたからね。
悪いことを売りにするヒップホップ界隈の場合は素行の悪さも箔になりえる。
だからって作品の質が劣るわけじゃあない。
結局、サンプリング、ライムとかテクニック、センスによって評価もされるんだから、だったら「クリーンでなきゃ評価されない」業界よりよほど実力主義ともいえるかもしれない。

やんちゃ時代

赤井英和は、昔電車の中を端から端まで歩いて足を組んで、座ってるやつがいたらその足を蹴り上げて喧嘩を売って回ってたそうで。ボクシングの場合、そういうやんちゃな時代もハッタリになる。
前田日明もいろいろヤバい話がありますし。
とはいえ「プロレスラー、ボクサーはクリーンな過去じゃなきゃあダメ」とも思わない。

宇梶剛士は有名な暴走族 ブラックエンペラーの総長。
的場浩司バッドボーイズとかパンクブーブー黒瀬も元暴走族でしたっけね。


この「暴力、やんちゃはセーフ、ドラッグはアウト」という感覚もよく解らない。
だってどっちが人に迷惑かけてるかっていえば、暴力の方が被害者がいる分迷惑。
アウトならどっちもアウトが普通。
クラプトンなんて暴力+ドラッグですよ。

「歌手はクリーンじゃなきゃ作品価値が落ちる」
というならクラプトンの作品価値は、地に落ち続ける。

それともあれですかね。
楽曲+(名前―(ドラッグ+DV))x子供の死=作品価値
こうなってんのかな?

もしくは
楽曲+(名前―(ドラッグ+DV))x子供の死=作品価値
こうかもしれない。

しみけん

そりゃあ清水健太郎くらいになってしまったら色々仕方ないかもしれない。
もう「失恋レストランの~」じゃなくて「ドラッグ関係で七度逮捕でお馴染みの~」になってる。
後を追う田代まさしにしろ5回逮捕されてるし、もはややせ細ったイメージしかない。
ノリピーが「蒼いウサギ」を歌っても脳裏にタトゥーがちらつく。

でもね、やっぱり人間はやり直せるし、それを切り離せずに観れない聞けないってのは何か差別しちまってる。
観たとき聴いたときに罪を切り離せなくてもいいけど、それを価値を上げ下げする要因にしちゃあいけない。


別にクリーンな身じゃなきゃきれいな曲が書けないわけじゃあない。
酒におぼれる作家も多いですが、酒だってドラッグですからね。


中島らもにしろバロウズにしろドラッグでトビながら名作を数々ドロップしてる。

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罪は罪でしかないし、それを裁くために法があって、それ以外のイメージだのなんだのは自分の差別とか潔癖さが招いてるんじゃないのかね。
「創作者自体がクリーンでなければ創作物の価値が劣る」
というのは非常に錯誤な視点だ、ということをまず考えなければおかしい。


よく刑務所作業製品と言うモノを売ってますが、じゃあ囚人が作ったものは汚れているのか、と。
CAPIC 〜 e−shop 〜
ここで売ってるモノは何かしら罪を犯して刑務所に収監されている人が作っているわけですが、ではこの品々に「罪」があるのか、と。
聖別されクリーンに育った人がクリーンに作るクリーンな品に囲まれ、クリーンなアートとクリーンな音楽を聴いて。
そんな世界はどこにもない 笑
もしそう思ってるのだとすれば、そんなお花畑はその人間の頭の中にしかない。

まとめ ~罪のログ~

ドラッグであれ暴力であれ、その事件により法の裁きを受ければそれで終了。
そういう人の可視化された「罪のログ」という鏡
その「過去の罪」をどう判断するかは、その人次第ですよ。
ASKAはまだ捕まって間もなくこれから色々あって世間的にも裁かれてイメージも落ちた。
で、ここからASKAの作品を聴いたときこそ自分がその「罪のログ」という鏡を見てどんなふうに判断するのか。
自分の顔がそこに見える。

人の罪を「汚れ」と感じる前に、まず、お前の罪を数えろ。


と言うことでもちろん最後は岡村ちゃんでお別れしましょう。

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