汚れが付きにくく、タンクをなくして水の使用量を大幅に減らしたパナソニックの住宅用便器「アラウーノ」が、平成18年の発売以来8年ぶりに刷新された。新築やリフォームでの住宅需要をにらみ、小便の跳びはねを徹底的に防ぐことで掃除機能を追求した。TOTO(トートー)やLIXIL(リクシル)グループも市場拡大中のタンクレストイレに注力。「節水」「汚れが付かない」という究極のトイレをめぐる競争が熱を帯びてきた。
パナソニックは6月2日、材料に陶器ではなくアクリル樹脂(有機ガラス)を採用したアラウーノの新モデルを発売する。パナソニックによると、便器がオール樹脂製なのは同社だけ。初代発売から8年ぶりのモデルチェンジだ。
陶器製は焼くと縮むため不良品が発生する。そこで同社はアクリル樹脂に着目。不良品が生じにくく、重量は陶器製の半分程度。掃除などで傷が入らない限り表面に凸凹が生じず、汚れが付きにくい。
細かな作り込みも可能で、小便の跳びはねや便器外への垂れを抑制するデザインだ。便器の端に高さ3ミリの縁を設け、小便が床にこぼれるのを防ぐ。便座を上げると水位が下がって泡が発生し、主に男性が立って用を足す際のハネを抑える機能も持たせた。
^水道代もお得に
開発を担当するパナソニックエコソリューションズ社ハウジングシステム事業部の嶋澤祐子さんは「トイレの悪臭の元は床や壁にかかった小便。掃除の時間を大幅に減らしてもらえると思う」と語る。
水洗便器の国内市場はTOTOがトップシェアを握り、2位のリクシル、3位のパナソニックが追う。洋式の水洗便器の国内市場は年間290万台前後で、このうちタンクレスは15%程度。この分野ではパナソニックがシェア3割を占め、1位を争っている状況という。
タンクに水をため、重力を利用して流すタンク式と比べ、タンクレス式は水の使用量を半分程度に抑えられる。このため新築住宅やリフォームでの採用が増えているのだ。
東京都の上下水道料金で計算すると、20年前のタンク式便器と比べ、タンクレス式は4人家族で年間1万4千円の節約が見込まれるという。消費電力も小さくなっており、電気代と合わせ年間2万円以上を節約できる計算だ。
パナソニックの推計によると、タンクレス便器の国内総需要は約25万台だった17年から24年まで毎年5〜10%の伸び率で拡大。25年には45万台弱に達した。
^タンクレス機能充実
この商機をとらえようと、大手各社はタンクレス便器の機能を一層充実させている。
TOTOの「ネオレスト」は使用前に霧状の水道水を便器面に吹き付け、使用後には次亜塩素酸水を吹きかける「便器きれい」機能を搭載。渦を巻くように流すことで、水の使用量を大幅に抑えた。
「サティス」を展開するINAX(イナックス)ブランドのリクシルは、グループが手がける住宅設備と組み合わせたトイレリフォームに注力。便器に汚れにくいコーティングを施したり、資本業務提携するシャープの除菌技術を搭載したりと、清潔さを前面に押し出している。(南昇平)
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