STAP論文:マウス購入記録なし 万能性証明実験前
毎日新聞 2014年05月19日 07時30分(最終更新 05月19日 08時46分)
「STAP細胞」の万能性を示す証拠として理化学研究所の小保方晴子・研究ユニットリーダー(30)側が「2012年1月24日」に実施したとするマウス実験を巡り、正規の予算で必要なマウスを購入した記録がないことが、毎日新聞が入手した理研の会計システムの資料から分かった。理研調査委員会は実験の結果として論文に掲載された画像を「捏造(ねつぞう)」と認定しているが、その元となる実験の存在や適正な実施、成功が疑われる事態となった。
問題の実験はSTAP細胞を免疫不全マウスの皮下に移植し、体のさまざまな組織を含むテラトーマ(腫瘍)ができることを確認するもの。小保方氏側は実験ノートの記載を根拠に「12年1月24日」にマウスからテラトーマを取り出したと主張している。
ところが理研の会計システムに残る物品購入記録によると、小保方氏が客員研究員として若山照彦氏(現山梨大教授)の研究室に入った11年3月以降、この実験に使える運営費交付金で若山研が初めて免疫不全マウスの購入手続きをしたのは12年1月24日。6週齢の雄のマウスを受け取ったのは3日後の27日だった。理研によると全予算の出納は会計システムで厳格に管理されており、記録を残さずに物品を買うことはできない仕組みだ。マウスを管理する動物施設の記録とも一致しており、実験日には必要なマウスが届いていなかったことになる。
理研が許可した動物実験計画によると、テラトーマに関する実験は11年10月〜13年3月に行い、必要とする免疫不全マウス150匹は全て業者から購入することになっていた。理研広報室によると、若山研は12年1月末以降、6月までの間に21匹を購入。これとは別に科学研究費補助金(科研費)で、11年12月と12年10月に計6匹を買っている。
理研を所管する文部科学省によると、STAP細胞研究の予算は国の運営費交付金だけ。科研費など他予算は充てられない。小保方氏の弁護団も毎日新聞の取材に「理研の購入記録に記載されたマウスで実験した。他予算の流用や自家繁殖、別ルートでの購入など許可されていない方法で行われた事実はない」と流用などを否定している。