Financial Times

危機を警戒する中国が日本から学ぶべき教訓投資家や政策立案者は日本がやったことではなく、言うことに倣え

2014.05.19(月)  Financial Times

(2014年5月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

進む円高の謎、世界経済の3つの逆説

今の中国には、日本の過去の失敗から学ぶべきことがたくさんある〔AFPBB News

官僚や銀行家、エコノミストが今、日本の失敗から学んだ方がいい国があるとすれば、それは中国だ。

 今回が初めてではない。10年前、筆者は1990年代の日本の銀行危機に関する本を書き、それが中国でベストセラーになった。当時は大いに驚いたものだ(特に、筆者は中国本土で誰にも版権を売らなかったからだ)。だが、今にして思えば、あの出来事は象徴的だった。

 中国が今、バブル崩壊寸前の1980年代の日本とよく似た、信用供与と不動産価格の爆発的な伸びを経験しているという事実はどうでもいい。1980年代の日本のように、中国は今、銀行中心で国家統制下にある金融システムを自由資本市場が主体の制度に変えようとしている。そして、経済が成熟するに従い、この転換は必要になるが、巨大なリスクを生み出すことにもなる。

 それゆえ、一部の中国政府高官が静かに日本の失敗から何を学べるか自問していることは当然だし、さらに、外交関係の冷え込みにもかかわらず、日中両国の中央銀行が内々に規制緩和と不良債権について議論していることも理にかなっている。

中国の投資家と政策立案者が学ぶべき「6つのD」

 では、中国の投資家と政策立案者はどんな教訓を学ぶべきなのか? 少なくとも半ダースの教訓がある。何なら、これを「6つのD」と呼ぶといい。

 まず、「減速(deceleration)」は害を及ぼし得る。日本経済が急成長していた1980年代当時、銀行融資はうまくいっていた。だが、1990年代に経済が減速すると、不良債権が急増した。それは分かりきったことに思えるかもしれないが、日本の銀行と官僚は不意を突かれた。中国の成長率が7%を割り込もうとしていることを考えると、中国の当局者は注意した方がいい。

 「デフレ(deflation)」は極めて有害で、特に銀行にとっては命取りだ。物価が下落する時、債務負担が大きくなる。通常は不良債権も増加する。ここでも問題は明白だが、日本の銀行はデフレに対しても準備ができていなかった。

 もし中国がデフレに陥るようなことがあれば、警鐘が打ち鳴らされるはずだ。中国の消費者物価は上昇しているが、生産者物価は26カ月連続で下落している。

 「否認(denial)」は悪影響をもたらす。日本の銀行は不良債権を隠すことで悪名高かった(邦銀は1992年に不良債権はたった8兆円だと述べていたが、2000年になると、これを100兆円に修正した)。この事実の否認は危機を遅らせたが、やがて訪れるショックをずっと大きいものにした。

 中国の銀行が既に帳簿をよく見せるために財務上の操作…
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