(英エコノミスト誌 2014年5月17日号)
欧州議会はEUの議会組織で、世界で最も強力な権限を持つ立法機関の1つに数えられている〔AFPBB News〕
欧州の市民の多くは、5年に及ぶ苦難の歳月を経て、政治階級を丸ごと地獄の業火に送り込んで苦しめてやりたいと願っているに違いない。あいにく、5月22~25日に行われる欧州議会選挙の投票用紙には、地獄行きの選択肢は含まれていない。そのため、恐らく記録的な数の有権者が、投票所に足を運ばずに済ませることだろう。
投票に行く有権者の多くは、ポピュリストと過激主義者を支持する人々だ。大まかに見れば反欧州派に分類される政党が、全体で4分の1を優に超える議席を獲得するかもしれない。
フランスの国民戦線、オランダの自由党、英国の独立党は、過去最高の票数を得る可能性が高い。そうなれば、各国内で政治的な騒動が持ち上がるはずだが、それは欧州連合(EU)に対する非難でもある。有権者の多くは、EUというプロジェクトを、困難と失敗に結び付けて考えるようになっている。
欧州の政治指導者たちは、選挙結果を無視したい誘惑に駆られるだろう。経済は上向きつつある。ひどい景気後退と長期にわたるユーロ危機との闘いを経て、成長は回復に向かいつつあり、国債利回りは急激に低下している。金融市場がユーロを(そしてEUを)破壊する危険性は、少なくとも差し当たりはなくなった。ピュー・リサーチ・センターが先日実施した最新の調査からは、EUに対する信頼がわずかながら回復している様子さえうかがえる。
政治家たちがここで頑張り通すことができれば、徐々にではあるが着実な回復により、不満を持つ市民の支持をすっかり取り戻せるのではないか?
いや、そうはならない。直近の危機は過ぎ去ったかもしれないが、その危機は欧州の中心にある根深い矛盾を悪化させた――統合を必要とするユーロ圏経済と、それを拒否する有権者という矛盾だ。
ポピュリズムの台頭が続けば、ユーロ加盟国のどこかで、ルールを破棄してユーロから脱退しようとする政権が選ばれるかもしれない。そうなれば、ユーロ危機が再燃するだろう。そして、政治的な動揺は経済的な動揺よりも、時に沈静化が難しい。
修繕と改革
欧州の指導者たちは、まず経済の見方からして甘い。成長は回復しているかもしれないが、活力に欠ける。失業率は依然として恐ろしいほどの高水準だ。欧州では2600万もの人が、今も職にあぶれている。
欧州のほぼ全域で、債務が危険なほど膨らんでいる。銀行が不安定なため、融資を受けるのも容易ではない。欧州の一部の国は、デフレの危機に瀕している。