「順当」という評価が大勢を占めているザックジャパンのW杯メンバー選考だが、いくつかの不安が露呈していることは衆目の一致するところだろう。不安の一つは、コンディションに疑問のある選手が3人も含まれていることだ。3人は「順当」ならいずれも各ポジションのレギュラーであり、なるべくなら交代カードを切りたくないポジションの選手。だから、余計に心配になるのだ。今年、2度の右膝手術をしたMF長谷部誠(ニュルンベルク)。2月に右太腿肉離れと腱損傷という重傷を負ったDF内田篤人(シャルケ)。3月下旬に左ひざじん帯を損傷し、全治6~7週間という診断を下されたDF吉田麻也(サウサンプトン)。彼らは試合を任せられる状態に仕上がるのだろうか。
5月12日の代表メンバー発表の席で、ザッケローニ監督は3人のコンディションを案じる質問に対し、こう答えている。「まず考えたのは6月14日の初戦まで1カ月あるということ。また、スタッフと綿密に情報を交換して3人の状況を把握してきた結果、合流のタイミングから100%の状態ですべてトレーニングに参加できるようになっているという情報が届いていること。そして、ブラジルに入るまでに3試合あり、そこでコンディションを高められるということ」。つまり指揮官の頭の中では、5月21日から始まる指宿合宿から彼らがフルメニューをこなせる状況になっていることが前提としてある。そのうえで、5月27日のキプロス戦、6月2日のコスタリカ戦、6月6日のザンビア戦という3度の親善試合で試合勘を取り戻していくことで、6月14日のW杯初戦・コートジボワール戦に間に合うという見立てがあるのだ。
6月14日から逆算したトレーニングはすでに始まっている。メンバー発表から4日後の5月16日。海外クラブ所属選手の自主トレ場所として、日本サッカー協会が用意した都内の施設に集まったのは、長谷部、内田、吉田と、所属のマンチェスター・ユナイテッドで出場機会確保に苦しんだ香川真司の4人だった。