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【「われら」の憲法】

解釈改憲、環境変化は理由にならぬ 柳沢協二氏(元官房副長官補)

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 −安全保障環境をめぐる状況から、集団的自衛権行使容認の必要はあるのか。

 「中国の国防費が増え、北朝鮮の核開発が進んだのは事実。だが、これらの国から攻められたとしても個別的自衛権で対応できる。米国軍事力が相対的に低下したとも言われるが、米ソ軍事力が拮抗(きっこう)していた冷戦時代ですら、集団的自衛権を行使する必要はなかった。環境の変化が憲法解釈を変える理由にはならない」

 −集団的自衛権は他国への抑止力になるのか。

 「日本が抑止力を強めるほど、相手国も軍備増強に向かうという側面を忘れてはならない。中国の軍拡に拍車を掛け、日本を攻撃する恐れも高まる。報告書は抑止力の利点のみに注目していてバランスを欠く。国際平和に貢献するには、政府開発援助(ODA)や災害救助など軍事力に頼らないやり方がある」

 −報告書はさまざまな事例を挙げている。

 「現実的に起こり得ないものが多い。例えば近隣国で有事が発生した際の米艦防護を想定しているが、有事があれば米国は既に戦闘態勢に入っていて、日本に守られる必要はない」

 −報告書は、集団的自衛権が「必要最小限度」の武力行使に含まれるとした。

 「これまで政府は、日本に対する攻撃があった場合に限り、排除するための必要最小限度の実力行使を認めてきた。『必要最小限度の集団的自衛権』は論理矛盾だ。安倍政権は、この言い方なら国民受けすると考えたのだろう」

 −行使には「日本の安全に影響を及ぼす」「明らかな要請がある」など六条件が必要だとしている。

 「国際法上の手続きを踏むという当然のことを言っただけで、歯止めにはならない。最も驚いたのは、国際秩序が揺らぐかどうかが行使の判断基準にあること。米国の武力行使は国際秩序の維持が名目だから、日本はすべての場合に自衛隊を派遣することになる。集団的自衛権行使は義務ではないと主張しているが、相手国と良い関係を保とうと考えれば事実上、要請を断ることはできない」

 <やなぎさわ・きょうじ> 国際地政学研究所理事長。元防衛官僚で、小泉内閣時代の2004年に内閣官房副長官補に就任。09年まで務めた。

 

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