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標的になるのでは/論議が足りない 自衛官に不安と覚悟 命揺さぶる解釈改憲

(05/16 08:58)

記者会見で持論を展開する安倍首相=15日夕、首相官邸

記者会見で持論を展開する安倍首相=15日夕、首相官邸

 「敵の標的になるのでは」「任務の危険度は格段に高まる」―。安倍晋三首相の諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の報告書が15日提出され、集団的自衛権の行使容認へ向けた動きが加速する見通しになった。道内の自衛隊は国連平和維持活動(PKO)など海外派遣の機会が多く、隊員や家族からは、身の危険にさらされることへの不安や集団的自衛権をめぐる議論の不足を指摘する声が上がった。

 「海外で武力を行使する事態になれば、(これまで以上に)敵の標的になる可能性が高まる。行使容認は避けてほしい」

 自衛隊イラク派遣(2003年〜09年)の経験がある第2師団(旭川)の40代の男性隊員は、そう本音を漏らす。派遣当時、戦闘に巻き込まれる懸念を拭いきれないまま任務に就いたことを、今も覚えている。集団的自衛権の行使が容認されれば、隊員の危険性が増すのは必至だ。「自衛隊はこれからどうなるのか」と不安の表情を浮かべた。

 夫や息子を海外に送り出す隊員の家族たちも、複雑な思いを抱える。名寄市の40代女性は、東日本大震災の災害派遣に参加した夫を誇らしい気持ちで見送った。しかし、今後の海外派遣は同じ気持ちで送り出せる自信はない。「戦闘の可能性があるのなら別。本心は行ってほしくない」

 一方で、千歳市内の40代の男性隊員は「中途半端な議論で(行使容認が)決まってしまえば、死んでも死にきれない」と話し、安保法制懇などでの集団的自衛権をめぐる論議に物足りなさを感じている。行使容認が他国への抑止力になるのか、逆に日本が攻撃を受けることにつながらないか。雲の上で進む手続きに「自分たちが言ってもどうにもならない諦めがある。命がないがしろにされているのでは」と顔をゆがめた。

 憲法9条のもと、戦闘地域に赴かないはずの自衛隊は、変容してしまうのか。道央圏の男性隊員(41)はもともと公務員志望だった。「死ぬ覚悟をして自衛隊に入ったわけじゃない。戦闘になる可能性がある場所に、本心から派遣を希望する隊員がいるのか」

 道北の男性隊員は賛成派だ。「集団的自衛権を行使できるようにならないと、日本は守れない」と信じている。自身がイラクに派遣された経験を振り返り、「平和なのは日本だけと痛感した。時代の変化に対応するため、議論を深めるべきだ」。また、第2師団に所属する40代の隊員は「まだ政治の段階の議論。現場であまり話題にならないし、自分では深く考えたことがない」と、距離を置いている。<北海道新聞5月16日朝刊掲載>

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