集団的自衛権についてEconomist誌もコメントしているように、英語でpacifismというのは、日本語でいえば「平和ボケ」という意味に近い。平和主義によって平和が実現できるとは限らない。歴史はその逆を教えているのだ。
本書はスタンフォード大学の考古学の大家が書いた、最近の「戦争史観」のサーベイである。本人も序文で認めるように、内容は『文明と戦争』の二番煎じだが、それより短く時系列で整理されているので読みやすい。20年前にKeeleyの"War before Civilization"が出たときは大論争を呼び起こした説が、今では学問的に確立され、歴史の見方を大きく変えつつあることがわかる。
本書はスタンフォード大学の考古学の大家が書いた、最近の「戦争史観」のサーベイである。本人も序文で認めるように、内容は『文明と戦争』の二番煎じだが、それより短く時系列で整理されているので読みやすい。20年前にKeeleyの"War before Civilization"が出たときは大論争を呼び起こした説が、今では学問的に確立され、歴史の見方を大きく変えつつあることがわかる。
20世紀の戦争に関連する死者は合計1~2億人にのぼるが、延べ人口の1~2%で、石器時代より90%以上少ない。次の図のように、石器時代には人類の10~20%が暴力(戦争と殺人)で死んでいたのだ。

この平和を実現した最大の原因は、逆説的だが、戦争である。戦争が国家を生み出し、国家が互いに戦ってつぶし合った結果、広い領土を統治する主権国家と国際条約によって平和が実現したのだ。20世紀後半以降、人類は歴史上もっとも平和な時代を過ごしている。その最大の要因は、軍事力の均衡である。
集団的自衛権に反対する平和主義者は(主観的にどう思っていようと)中国に対して「日本は反撃しない」というシグナルを送って、戦争のリスクを高めている。「戦争のできる国にはならない」という安倍首相のメッセージも間違っている。戦争を抑止するために、戦争のできる国になる必要があるのだ。残念ながら、それ以外に戦争を防ぐ方法はない――というのが本書の結論である。
この平和を実現した最大の原因は、逆説的だが、戦争である。戦争が国家を生み出し、国家が互いに戦ってつぶし合った結果、広い領土を統治する主権国家と国際条約によって平和が実現したのだ。20世紀後半以降、人類は歴史上もっとも平和な時代を過ごしている。その最大の要因は、軍事力の均衡である。
集団的自衛権に反対する平和主義者は(主観的にどう思っていようと)中国に対して「日本は反撃しない」というシグナルを送って、戦争のリスクを高めている。「戦争のできる国にはならない」という安倍首相のメッセージも間違っている。戦争を抑止するために、戦争のできる国になる必要があるのだ。残念ながら、それ以外に戦争を防ぐ方法はない――というのが本書の結論である。