2014-05-17
一応、双葉町役場の方も弁護しておきます
例の騒動の前後関係がだいぶ明らかになったようです。
双葉町の健康福祉課では、取材に対し、町が岡山大などに調査を依頼し、調査結果の報告も受けたことは認めた。報告を受けたのは、現職の伊澤史朗町長のときになってからだが、なぜ美味しんぼ側に抗議したのか。こうした点などを聞こうとしたが、「担当者が退職するなどしており、詳しくは当時の書類を調べないと分からない」とし、5月16日夕までに回答はなかった。
町の秘書広報課では、「鼻血を出す人がそんなに大勢いないことは、保健所の聞き取り調査で分かっています。岡山大などからの報告を受けたわけではありませんが、町民の健康管理については今後検討していきます」と話している。
http://www.j-cast.com/2014/05/16204959.html?p=2
これ、前半部分に関しては、明らかに双葉町役場のミスだと思います。ですが、後半部分に関しては、止むを得ないところもあるかな、と考えてます。「鼻血を出す人がそんなに大勢いない」という表現から、一般の感覚で想像するのは患者の絶対数が多いという印象でしょう。しかし疫学調査でわかるのは、統計的に有意な差があるというもので絶対数は必ずしも多いとは限りません。
以前「無知と無理解による医療関係デマ」という記事を書きました。エイズ感染予防薬のニュースをネット民が誤読して、3〜4割の被験者をエイズに感染させたと騒いだ件について、指摘した記事です。この薬は有意に効果があったのですが、治療群とプラセボ群の感染率はそれぞれ、0.82%と2.96%と言ったレベルでした。
感染率3%が1%に減ったが、リスクに曝露されている当事者にとって感覚的に改善されたと実感できるかというと、まあ難しいでしょう。多くの感染があったか、と言われても絶対数として多いとは感じにくいと思います。
しかし、統計学的にはその差を拾うことができるわけです。
双葉町の件も同じようなもので、「鼻血を出す人がそんなに大勢いないことは、保健所の聞き取り調査で分かっています。」というのはそれはそれで実感としては事実なのでしょう*1。ですので、その件で双葉町役場を責めるつもりはありません。しかし、そういった実感で拾えないような差を疫学調査では拾ったということです。
で、以上を踏まえて個人的には、「統計学が最強の学問である」と多くの人に知ってほしいところと思いますね。
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