【北京=島田学】中国で日本政府が沖縄県尖閣諸島を国有化したことへの反発が広がり、在留邦人にも被害が出た。上海の日本総領事館には13日までに、路上で暴行を受けて打撲傷を負ったり、ラーメンを顔にかけられて目を負傷するなど計6件の被害が報告された。インターネット上では、北京や四川省成都などでの今週末の反日デモを呼びかける書き込みも相次ぎ、日本人社会に緊張感が高まっている。
■日本製品ボイコット容認
上海は日本人長期滞在者が約5万6千人と、中国で最大の日本人コミュニティーを抱えている。総領事館によると、レストランで中国人に因縁をつけられ暴行を受ける、路上でメガネを割られる、路上で炭酸飲料を頭からかけられる――などの被害が出た。
ネット上では「酒に酔った日本人が中国人女性をナイフで傷つけた」などと反日感情をあおる偽の書き込みも。北京の日本大使館には13日夜現在、邦人被害の報告はないが、タクシーの乗車拒否などが相次いでいる。
中国の外交当局は関係改善のきっかけを探っていたが、一度火が付いた国民レベルの反日感情は当面収まりそうにない。中国メディアの報道ぶりの影響も大きい。国営中央テレビは日本が尖閣国有化を決めた10日以降、日本を批判する特集番組を相次ぎ報道している。
中国各地で今週末に再び反日デモが発生する可能性は高まっている。ネット上では13日から、重慶や四川省成都、湖南省長沙などでの週末のデモ呼びかけが始まった。「今週末に北京の日本大使館前に集まって生卵を投げよう」との書き込みも広がっており、「それなら卵を無料で提供する」という人も出ている。
中国外務省の洪磊副報道局長は13日の記者会見で「中国国民は政府による正義の要求や対抗措置を支持している」と述べ、反日デモを容認する考えを示唆した。
「中国の消費者が理性的な方法で自らの考えを表明することに、政府としては理解を示すべきだ」。中国商務省の姜増偉次官は13日の記者会見で「日中の経済貿易関係にマイナスの影響を与えることは避けられない」と指摘し、日本製品のボイコットを容認する考えを示した。