The Top 20 Sci-Fi Films of the 21st Century by Rolling Stone21世紀における至高のSF映画ベスト20

Text: Masako Iwasaki

リュミエール兄弟が映画を発明してから約120年。この偉大な文化の器は、あらゆる時代においてその世相を映し出してきた。サイレントからドルビーデジタルへ、モノクロだった画面は今やリアリティ溢れる3Dへ——先達が注ぎ込んできた技術の粋により、映画の表現方法は今も進化し続けている。SF(サイエンス・フィクション)は、最もその恩恵に浴しているジャンルの1つだ。21世紀に入り、さらにクオリティが高まったSF作品の中でも最高の20本をRolling Stone誌が選出した

1位に選ばれた作品は「トゥモロー・ワールド」(2006・英米)。英国の女流推理作家P・D・ジェイムズの小説「トゥモロー・ワールド(人類の子供たち)」の映画化で、「ゼロ・グラビティ」でアカデミー監督賞を受賞したアルフォンソ・キュアロンが監督・脚本・編集を務めた。物語の舞台は人類が繁殖能力を失い、18年間にわたって1人も子供が生まれないという深刻な事態に陥った近未来。治安が劇的に悪化、退廃した世界でクライヴ・オーウェン演じる英国人官僚が、奇跡的に子供を身ごもった黒人女性を連れて命がけの逃避行に挑む。同誌コントリビューティング・ライターのデヴィッド・マーキーズは、「感情的な共鳴を呼び、大胆なほど予言的で、不安になるほどもっともらしい。トゥモロー・ワールドは現代におけるSci-Fiの最高峰にある」と絶賛している。

2位は日本でも大ヒットとなった「インセプション」(2010・米)。クリストファー・ノーランが10年以上に渡り構想を練った渾身の脚本は、複雑ながらも見る者を引き込み、米国内で2億9000万ドル、全世界で8億2千万ドルの興行収入を稼ぎ出した。他者の潜在意識の中に入り込み、アイディアを奪う産業スパイのコブをレオナルド・ディカプリオが、コブに仕事を依頼する大企業の社長サイトーを渡辺謙が演じている。

この作品を評価するには数え切れないほどの言葉が必要だと、同誌ライターのジェームズ・モンゴメリは言う。「エクストラクション(夢の抜き取り)を試みるコブたちの後を追うように、観客も夢の奥へ奥へといざなわれるが、その世界観を形成している作品の巧妙な構造に驚嘆せざるを得ない。ノーランの脚本は様々な時間帯と現実が格子状に積み重なる多層構造を成すが、最終的に提示される答えはほんのわずかに過ぎない。しかし、見終わったときに多くの疑問が提示される。レオのコマはまだ回り続けているのか。夢の共有はいつ実現するのか。そして、我々は今、本当に目覚めているのか」。

3位の「Under the Skin」(2013・英米)は日本未公開。「セクシー・ビースト」「記憶の棘」で知られるジョナサン・グレイザーのおよそ9年ぶりとなる新作だ。スカーレット・ヨハンソンが演じる異星人ローラは、地球上のハイウェイでセックスをちらつかせて男を捕獲、貧しい故郷の星へ送っている。そんな地球外生命体のファム・ファタールが、内なる人間性に気付いていくという物語。多くの映画が70年代SFの雰囲気を体現しようとしてきたが、Under the Skinはこれに成功した数少ない作品の1つだとRolling Stoneのデヴィッド・フィアーは評価している。そして、ほとんど表情を変えず、言葉少なに人間を捕らえていくローラの深層心理の機微をうまく掬い取って演技するヨハンソンの技量も称賛に値する。

全ランキングは以下のとおり。

1位「トゥモロー・ワールド」(2006・英米)
2位「インセプション」(2010・米)
3位「Under the Skin」(2013・英米)
4位「ウォーリー」(2008・米)
5位「ゼロ・グラビティ」(2013・米)
6位「第9地区」(2009・米)
7位「セレニティー」(2005・米)
8位「LOOPER/ルーパー」(2012・米)
9位「her/世界でひとつの彼女」(2013・米)
10位「ザ・ホスト」(2013・米)
11位「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(2013・英)
12位「月に囚われた男」(2009・英)
13位「マイノリティ・リポート」(2002・米)
14位「プライマー」(2004・米)
15位「クローバーフィールド」(2008・米)
16位「アタック・ザ・ブロック」(2011・英)
17位「サラマンダー」(2002・米英)
18位「モンスターズ/地球外生命体」(2010・米)
19位「ドニー・ダーコ」(2001・米)
20位「サンシャイン 2057」(2007・英)

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