出版大手のKADOKAWAと「ニコニコ動画」などを手掛けるドワンゴが10月に経営統合すると発表した。日本のアニメやゲームなどをインターネットで世界に発信する狙いだ。米企業が主導するネット市場で日本発の情報発信が加速することを期待したい。
KADOKAWAは角川書店を中核にアニメやゲーム、映画など幅広いコンテンツ事業を手掛けている。携帯向けゲームから出発したドワンゴは、音楽や映像などのネット配信で220万人を超える有料会員を抱える。両社が統合することで、様々な分野のコンテンツを提供できる体制が整う。
両社が接近した背景には、新しいコンテンツ産業の姿を模索する角川歴彦会長とドワンゴの川上量生会長の盟友関係が見逃せない。角川氏はグーグルやアマゾン・ドット・コムなど米企業によるネット支配に警鐘を鳴らしてきた。ドワンゴの和製ネット技術を活用すれば、日本からの情報発信が可能になると考えたようだ。
両社の経営統合は2000年に話題となった米メディア大手タイムワーナーと米ネット大手AOLの統合を思い起こさせる。この計画はネットバブルの崩壊で頓挫してしまったが、クラウドやスマートフォンなどの新技術が登場した今は、新たな相乗効果を生み出せる可能性が高いだろう。
KADOKAWAは特にアニメやゲームなどのサブカルチャーに強く海外にもファンが多い。クール・ジャパンの重要な担い手といえ、ネットによる情報発信力を高めれば、日本の魅力を海外に一層訴えられるに違いない。
ドワンゴの動画配信サービスは政治家の発言などをネットで生中継し、視聴者が自由にコメントを投稿できる仕組みが人気を集め、若い世代に支持されている。広告モデル中心のネット市場で課金サービスが成功した珍しい例といえ、海外展開にも力を入れている。
日本のコンテンツ市場は米国に次いで大きいが、海外輸出比率は5%程度で米国の18%に比べ見劣りする。新生「角川ドワンゴ」が日本の作品を海外に広める役割を担えば、若い日本のクリエーターを育てることにもなろう。
ただ経営トップが手を組んでも現場がついてこなければビジネスの成功は望めない。文化も生い立ちも異なる企業同士が一緒になれるかどうかは、新会社を担う経営者の手腕にかかっている。
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