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(仮)王様と王妃様 作者:ちしゃ

ルイザ・フュンフ・ツェーン

長いです。
私は、王都郊外に領地をもつ小さな子爵家の娘として生まれたわ。

お父様は、特に王都で役職に付くでもなくこの小さな領地をつつがなく治める事を第一とする善良な人で。

お母様は、お父様の幼馴染として一緒に育った騎士の家の娘でつましく、おおらかな人。


我が家の暮らしとて都の貴族様達の様に余裕のあるものでは無かったけれど、決して貧しいというものではなかったと思うの。


内の領地には孤児院があり我がツェーン家が、主だった援助をして、経営の手助けをしていたわ。

お父様は、私が小さなころ良く言い聞かせるように言っていたの。

「私達は食べるものにも、着るものにも飢えてはいない。
けれど孤児たちは、親を亡くしたそれだけで、温かな食事も、着るものも満足に会得ることは出来ない。

私達とて、すべての孤児にそれらを与えることは不可能だろう。

だが、私達が少し流行遅れの服を着るだけで、同じドレスを何度か着ることでその分を温かな食事に変え、孤児たちと分かち合い助けることはできる」

少し、寂しげで、誇らしげなその言葉にお母様がそっと、お父様の腕に触れ、

「そうですわね」

と答える。


そんな光景を見て育った私は、自然と時間のある時には孤児院で子供の面倒を見るようになっていったの。



孤児院には成人となる15歳までしか居ることを許されなかったの。

それまでに、仕事を見つけるべく、孤児院の子供達は皆12・3歳で住み込みで就職させてくれるところを探し始めて、でも、雇い入れてくれるところはとても少なかったの。

稀に運の良い、器量良しな赤ん坊が子供のいない夫婦にもらわれていく光景を、行く宛の無い年長の子が羨ましそうに見ている切ない光景も目にしたわ。



季節を重ね、ある年の事、この国の王様がこの孤児院に休憩と視察をかねて立ち寄ることになったのよ。

それは晴れていてとても気持ちの良い日の事だったわ。

その日、孤児院に王様が来ることはあらかじめ分かっていたので、私は上等な裾を引くドレスの中でも比較的動き易い物を選んで着ていたの。

子供の面倒を見ることも有り、軽いお化粧をしただけで宝飾品などはつけては行かなかったわ。

私にとっては、いつもよりおめかしをしていてかなり浮かれていたのよ。

けれど、王様を前にして、自分の、父の、母の格好がいかにみすぼらしいのかを実感してしまって途端に、自分の格好がひどく恥ずかしくなってしまったわ。

そんなみすぼらしい私にも王様は、優しく話しかけてくれたの。

所詮、私のオシャレなど、貴族と言うのもおこがましかったのだと実感させられたわ。

王様は、私の事を優しく美しい人って言ってくれたの。

甘い言葉を沢山くれて、こんなに愛しく感じたのは初めてだと、妃にならないかと誘われて夢見たいだと思ったわ。

両親は身分が違いすぎますと、即刻断っていたけれど、王様はその後予定を変えてしばらく私の側にいたいと滞在することになったの。

うちの子爵家程度では十分な警備も、おもてなしも出来ない事をお父様が追従の方々に訴えて、王様は騎士たちのの詰所近くにある宿を借り切って滞在することになったわ。

顔を合わせる度に、私に降り注ぐ素敵な言葉、王様が滞在を決めた2日後には王都から来た仕立て屋さんが来て、私のドレスを作ってくれることになって。

キラキラ、ひらひら素敵なドレスに、私の為に選ばれる素敵な宝飾品の贈り物。

今まで見ていた世界がいかに貧しかったのか思い知って、宝石やドレス、素敵な物が溢れる世界にあこがれるのに時間はかからなかったわ。

王様は政務の関係だと、1週間程滞在した後、王都に帰って行かれたけれど、毎日の様に手紙と、贈り物が届いたの。

両親は最後まで「止めなさい」と言っていたけれど、私は王様に付いていきたいとお返事を伝えたのよ。

王様はとても喜んで、うっとりするような素敵なエメラルドのネックレスを下さったの。

そのエメラルドのネックレスを見せながら、両親に言ったわ。

「私は、愛されて、望まれて嫁ぐのだから大丈夫よ」

「王様にはもうすぐお子が生まれる王妃様が居るんだ、分かっているのか?」

「大丈夫。だって、こんなに素敵な物を贈って下さるほど、私の事を愛して下さっているのよ?」

お父様は、顔を抑えてうつむかれてしまったわ。

王様と出会って3ヵ月ほどたったころ、我が家に豪奢な馬車が来て、私は王城へと物語の様に連れ去られたの。

王様は、迎えが遅くなったことをとてもすまながってくださったけれど、私にとってはこれから、夢の様な生活が始まるかと思うと、迎えに来るのが遅くなったことくらいどうって事なく感じたわ。

それからしばらく、ユリウス王子が生まれるまでは本当に満ち足りてとっても素敵な日々を過ごしたの。


王様は私に王様の事を“ジュリアス様”って名前で呼ぶことを許して下ったの。
ううん、むしろ名前で呼んで欲しいって・・・

ジュリアス様に甘く、名前を呼ばれて過ごす夢の様な日々。

ジュリアス様は優しくて、理知的で私の欲しい物を何でも与えてくれたわ。

王宮での生活は町で暮らしていた私には、若干堅苦しいものでは有ったけれど、流行最新のドレスを着て、色とりどりの宝石に囲まれる夢のような毎日。

ある日、庭園の散歩中、雑草の沢山植わっている中庭を発見して、野に咲いている様な花を摘むことにいたわ。

だって、お城の温室にある薔薇や、百合の花を摘むのはまだ、敷居が高かったし、お部屋が豪華すぎるから、こっちの方が落ち着くと思ったのよ。

でも、そこの担当庭師だという人が慌ててやって来て、勝手に花を摘まない様に言われたわ。

きっと、自分がサボっていたのが伝わるのが怖かったのね。
別に雑草なんだし、いいじゃない。



また、ある日はお天気もいいし、芝生でお茶を頂いていたら、侍女っぽいお仕着せを来た女の人に、「ここで、そのような行為はお控えください」って言われたの。


こんな事も有ったわ。

侍女が私の髪を、セットしているとき嫌がらせで思いっきり髪を引っ張られて痛かったから罰を与えようとしたら、ほかの侍女たちに止められのよ。

仕立てたばかりのドレスにワザとお茶をこぼして台無しにしてくれた侍女もいたわ。

みんな、みんな、私の立場が羨ましいから、私が妬ましいからって嫌がらせをするのね。


そんなときは、うんと泣いてジュリアス様に甘えるの。

そうするとジュリアス様はいつもより、もっともっと私を愛してくれる。

あと、出会いが孤児院だったからか、ジュリアス様は孤児院にもうちょっと寄付をしたいって言うと、『私に割いている予算の中なら』って言いながらも後で、必ず追加の予算を割いてくれるわ。

勿論、孤児院にも寄付しているけれど、最近はちょっと違うことにも使っているの。

・・・ふふふ。
ジュリアス様が知ったらきっとびっくりっするけど褒めてくださるわ。

本で見た挿絵みたいに、私の見つけた雑草だらけの中庭がお花のじ絨毯になったら素敵なので、こっそり改装しようと計画中なの。

その度に庭師がやって来て、「やめてくれ」って言われるけど、私気にしないわ。




ユリウス王子が生まれたと聞いたとき、ジュリアス様の愛情がユリウス王子にも向くんじゃないかと不安になったわ。

王城に返ってきた王妃様は本当にびっくりする程美しくて、ユリウス王子も赤ちゃんなのに私が、今まで孤児院で見てきたどんな子よりも可愛いの。

こんなに素敵な生き物に勝てないって思ったの。

ユリウス王子を抱かせてもらった時、このまま手を放せばこの子は死んでくれるかしら?って思ったら、ユリウス王子に大泣きされたわ。

早々に乳母っぽい女の人に抱き取られ、その後は、私の触るチャンスが無かったの。


王妃様が帰って来てから、庭園のあちこちでお会いするようになったわ。

私の見つけた雑草園(今だ、庭師の抵抗にあって綺麗なお花が植えられない)で、雑草をブチブチ摘んでいたら

「ここの花や、草を勝手に摘んではいけませんよ」

って言われて。

芝生の上でお茶をしていたら

「お茶を注ぐのに、カップに残るお茶を芝生に捨ててはいけません。
何より、そこのサロンから丸見えです。
行動を慎まれた方がよろしいかと思いますが。。。」

って、せっかくいい気分でいたのに色々台無しだと思うの。

きっと、今までの使用人の人たちの嫌味もこの王妃の指示だったのね。

ジュリアス様に言いつけてやるんだから、覚えてらっしゃい。
そうして、王様は王妃様の指示で自分の大事なルイザが虐められたと思って大暴走。

お読みいただきありがとうございました。
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5/12一部文章手直し致しました。
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