集団的自衛権:容認指示「被爆者の涙まだ乾かないのに」

毎日新聞 2014年05月15日 22時57分(最終更新 05月16日 17時23分)

 他国を守るために武力を使う集団的自衛権の行使容認へ向け、安倍政権が一歩を踏み出した。広島・長崎の被爆者からは「戦争につながる」などと反発の声が上がった。

 安倍首相は記者会見で、集団的自衛権の必要性などをパネルを使うなどして説明した。広島市西区に住む韓国人被爆者の朴南珠(パク・ナムジュ)さん(81)はテレビで見ながら「いいように丸め込もうとしている印象だ。再び戦争につながる状況を、自ら作ろうとしているように見える」と冷静に話した。

 思い出すのは、無口だった父が終戦を知り「解放された」と朝鮮語でつぶやいた姿だ。「父は穏やかな顔だった。うれしかったのだと思う。私たちは戦争に翻弄(ほんろう)されてきた」と振り返る。「今の不穏な世界情勢から、今回の方針が示されたのかもしれない。被爆者の涙はまだ乾かないのに、政府の姿勢は『喉元過ぎれば熱さを忘れる』ということではないか」と憤った。

 一方、長崎の被爆者5団体は15日、長崎市内で記者会見を開き、安倍晋三首相への抗議を表明するとともに、「内閣の身勝手な解釈は許されない」などとする首相宛ての声明文を郵送した。5団体の一つ、「長崎県被爆者手帳友愛会」の中島正徳会長(84)は会見で「苦しみを知らない戦後世代が増え、同じことが繰り返されるという心配が非常に大きい。そのことを国民は十分認識し、抵抗すべきだ」と語った。【石川裕士、樋口岳大】

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