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「ファッションビジネスの未来1」では、ファッションビジネスの歴史を振り返った。80年代のアパレルメーカー主導の時代から小売企業主導の時代へと変わったことにより、ファッションは顧客との距離を縮めた。90年代は第一世代SPAと言って「良品質の低価格販売」が台頭し、00年代は第二世代SPAに進化し「トレンドファッションの低価格販売」を実現させた。そして10年代以降の第三世代SPAは「高品質トレンドファッションの中間価格販売」へと進化する。
この流れはH&MやZARA主導ですでに始まっている。H&MはCOS(コス)を、ZARAはUTERQÜE(ウテルケ)という新業態をスタートさせている。これらのブランドは高級セレクトショップ並の店舗内装を施しており、H&MやZARAに比べて価格も高めに設定されている。また、品質もH&MやZARAに比べて高品質だ。店舗内装にこだわっているのはもちろんブランド力を高めるためだ。
事実、ZARAやH&Mの品質が悪い。顧客はセレクトショップのような「高品質トレンドファッション×高価格」とファストファッションブランドの「低品質トレンドファッション×低価格」で二者択一に迫られていて、「高品質トレンドファッション×中間価格」ががら空きになっているのだ。第三世代SPAは高品質商品をいかに中間価格で販売するか「手の届く贅沢」がテーマになっていく。
さて、アダストリアHDは第三世代SPA時代に向けて2010年に水平分業型SPAから垂直統合型SPAへと大きく舵を切った。国内のアパレル業界は企画・生産を商社に丸投げするSPA企業で溢れかえり、アイテムが同質化し差別化ができなくなっているからだ。差別化するためには自社で企画・生産をやるしかないため、ナチュラルナインのような企画・生産を手掛ける企業の買収は必然だった。
しかし、垂直統合型SPAの完成には当初から5~7年の歳月を要すると言われており、その間の「産みの苦しみ」を企業も投資家も負担しなければならない。今回の業績下方修正はその過程で大きな混乱が生じたことによるもの。株価は市場のコンセンサスで動くためコントロールできないが、事業の混乱は修正しコントロールすることができる。
相場のコンセンサスに振り回されることが投資家の役割ではない。事業がどうあるべきか、そしてそれに向かって事業は進んでいるか、問題は長期的に解決不可能なのか、あるいは一時的なものなのか、そうしたことに注目して注意深く見守っていかなければならない。
株価の暴落でパニックに陥った人に何を言っても無理かもしれないけれど、バフェットの言葉を借りれば投資で重要なことは知性ではなく「辛抱強さ」と「冷静さ」だ。また、バフェットの投資哲学に大きく影響を与えたフィリップフィッシャーは、投資したダウ・ケミカルの株価上昇に7年待ったと言われている。ぼくはまだ3年。
★★★
今夜午後6時に「アダストリアHDの暴落を受けての考察」をエントリーします。