山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

8型Windows 8.1タブレットで電子書籍を試す

〜徐々に広がりつつある電子書籍のWindowsタブレット対応

レノボ・ジャパン「Miix 2 8」
発売中

価格:オープンプライス(実売価格:28,000円前後/32GB、39,000円前後/64GB)

 昨年(2013年)暮れから注目を集めているのが、8型サイズのWindow 8.1タブレットだ。それ以前のWindowsタブレットと言えば、操作性や端末の重量などいくつかの点がネックで、筆者も店頭で幾度となくデモ機を手に取って試し、そのたびに購入を見送ってきた経緯がある。

 その点、Windows 8.1を搭載した8型タブレットは、サイズが手頃なことに加え、UIもタブレットデバイスとして最適化されている。また、iPadやAndroidタブレットと比較した場合の弱点だった重量も遜色ないレベルに仕上がっている。特に今回取り上げるレノボ・ジャパンの「Miix 2 8」は重量が約350gと、8型サイズのWindow 8.1タブレットとしては軽量で、発売から5カ月経った現在でも人気があるのが納得できる。

 巷ではなぜか「艦これ」用途にフォーカスした記事が多く、そのほかの用途に言及される機会の少ないWindow 8.1タブレットだが、手軽に持ち運びが可能な8型サイズということで、電子書籍の閲覧に使いたいと考える人も多いはず。そこで今回は、レノボの「Miix 2 8」を例に、Windows 8.1タブレットと電子書籍の親和性について見ていきたい。

 なお、解像度などハードウェアに依存する点を除けば、8型のWindows 8.1タブレット全般に共通する内容だと考えられるが、Miix 2 8以外の機種については実機による検証は行なっていないので、予めご了承いただきたい。またレノボ「Miix 2 8」の詳細は石井英男氏のHothotレビューを、スペックなどの詳細は「この冬絶対買いたい8型Windows 8.1タブレット」なども参考にしていただきたい。

解像度や重量はiOS/Androidタブレットでは一世代前

 今回はMiix 2 8というハードウェアそのもののレビューではないが、電子書籍ビューワとして利用する際に関連する主要なスペックについてのみ、プラットフォームの異なる7〜8型クラスのタブレットと前もって比較しておこう。対象となるのは、iPad mini Retina、Nexus 7(2013)の2製品だ。

【表】他機種との比較
Miix 2 8 iPad mini Retinaディスプレイモデル Google Nexus 7(2013)
メーカー レノボ・ジャパン Apple ASUS
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部) 215.6×131.6×8.35mm 200×134.7×7.5mm 114×200×8.65mm
重量 約350g 約331g 約290g
OS Windows 8.1 iOS 7 Android 4.4
画面サイズ/解像度 8型/800×1,280ドット(189ppi) 7.9型/2,048×1,536ドット(326ppi) 7型/1,200×1,920ドット(323ppi)
通信方式 IEEE 802.11a/b/g/n IEEE 802.11a/b/g/n IEEE 802.11a/b/g/n
内蔵ストレージ 32/64GB 16/32/64/128GB 16/32GB
バッテリ持続時間
(メーカー公称値)
約10時間 最大10時間 約10時間

 約350gという重量は、8型のWindows 8.1タブレットの中では軽量な部類に入るが、「iPad mini Retinaディスプレイモデル」、「Nexus 7(2013)」と比較すると(画面サイズは違うにせよ)やや旗色が悪い。ここには掲載していないが、8.9型の「Kindle Fire HDX 8.9」は約374gということを考慮しても、そこそこの重量ではある。

 解像度についても同様で、1,280×800ドットというのは、Nexus 7の初代モデル(2012)と同じであり、iOS/Androidタブレットでいうと1世代前のスペックだ。1,280×800ドットで見開き表示を行なった場合、1ページあたりの解像度は640×800ドットとなるので、細かい文字の閲覧に厳しいであろうことは容易に想像がつく。ちなみに同じレノボから発売されている8.3型の「ThinkPad 8」は1,920×1,200ドットだが、こちらは430gとかなりのヘビー級で、かつ現時点で実売7万円台と価格差もあるので悩ましい。

 一方で厚みは8.35mmと、iPad mini Retinaには負けるものの、Nexus 7(2013)よりは薄い。また本体サイズも、画面サイズの違いを差し引いて考えると、見劣りしないコンパクトなサイズに収まっている。数ある8型のWindow 8.1タブレットの中でこのMiix 2 8が支持を集める理由の1つと言っていいだろう。この表にはないが、iPad mini Retina、Nexus 7(2013)の2製品にないメモリカードスロット(microSDカード対応)を搭載しているのも強みとなるはずだ。

レノボ「Miix 2 8」。Windows 8.1を搭載した8型タブレット
画面を横向き表示にした状態
右側面に電源ボタン、音量調節ボタンがある。前面カメラのほか背面カメラも備える
裏面右上にスピーカーを備える
充電などに利用するMicro USBコネクタは右側面にある。隣はmicroSDカードスロット
裏面。縦向きを前提としたデザインであることが分かる
Windowsキーは物理ボタンではなくタッチ式で、突起はまったくない
左から順に、Miix 2 8(8型)、iPad mini Retina(7.9型)、Nexus 7(2013)(7型)。撮影にあたって輝度は変更しているので画面の明るさの差は無視してほしい

Windows 8.1タブレットで「快適に」電子書籍を楽しむには

 さて、まず最初に知っておきたいのは、各電子書籍ストアがリリースしている「Windows用」と銘打った電子書籍ビューワの多くは、今回のMiix 2 8のようなWindows 8.1タブレット上で快適に利用できるわけではないということだ。

 その理由は、タッチインターフェイスへの最適化だ。各社がWindows用として配布しているビューワは、キーボードとマウスを備えたマシンで利用することが前提になっており、Windows 8.1タブレットのようなデバイスのタッチインターフェイスで使うことを想定していない。もちろんマウスを使えば操作自体は行なえるが、iOS/Androidタブレットと等しい感覚でタッチ操作でページをめくることは不可能だ。

 そのため現時点でWindows 8.1タブレットで電子書籍を快適に楽しみたい場合は、各電子書籍ストアがリリースしている「Windows用」と銘打ったビューワを使うのではなく、現状おそろしく選択肢の少ない、Windowsストアアプリの「書籍」アプリの中から、自分が使えるストアを探すのが近道ということになる。これから新たに自分が使うストアを決める段階ならまだしも、すでに馴染みのストアがある場合は、自由度は極めて低い状況だ。

Windows 8.1のホーム画面。まずはWindowsストアを起動する
2010年以前の日本向けApp Storeを見ているかのような、Windowsストアアプリの「書籍」カテゴリ。ちなみに2013年12月の時点で、単体の書籍アプリと青空文庫を除いてこのカテゴリに登録されていたのはマガストアと、地球書店が提供していた「Chique」など数えるほどだったので、これでもまだ増えたほうである

 もう1つ、Windows 8.1ならではの厄介な挙動もある。それは「エッジスワイプ」と呼ばれる、画面の左右の端をまたいで内側にスワイプする操作だ。これらの操作は多くの電子書籍ビューワでは「次のページヘ」もしくは「前のページヘ」に割り当てられているわけだが、Windows 8.1で同じ操作をすると、チャームもしくは別ウィンドウへ切り替えるための画面が表示され、読書が中断されてしまうのだ。

後述するWindowsストアアプリ「紀伊國屋書店 Kinoppy」で電子書籍(うめ著「大東京トイボックス 1巻」)を表示したところ。文庫版よりも一回り小さいサイズだが、細かい文字を除けば見開き表示にもなんとか対応できるレベル
画面の中で左右にスワイプすればページをめくることができる
画面の外側から内側に向かってスワイプするとエッジスワイプとなり、右端にチャームが表示されてしまう。iOS/Androidでは区別のない操作でも、Windows 8.1では端をまたぐか否かで挙動が変わってくるのだ
ちなみに画面の左側で外側から内側にスワイプした場合、こちらもページがめくられずにアプリそのものが切り替わろうとする

 ここ3〜4年でタッチ操作に対応した電子書籍アプリおよび端末が続々と登場し、ページめくりなどの操作体系が徐々に統一されてきつつあったところを、Windows 8.1が根本からひっくり返しにかかった格好で、個人的には非常に残念である。Windows 8.1が登場してから半年以上経った現在でも、Windowsストアに登録されている電子書籍事業者のビューワアプリがごく僅かなのは、各社の開発リソースの優先度の問題だけではなく、こうした制約が影響している部分もありそうだ。

 もっとも、こうした状況下でありながらも、電子書籍をWindows 8.1のタッチインターフェイスに対応させようとする動きは徐々に見られるようになりつつある。今回はその中から、Windowsストアアプリ版の電子書籍ビューワをリリースしている「紀伊國屋書店ウェブストア」と、自炊データの閲覧に適した多機能ビューワ「Pico Viewer」、さらにブラウザビューワの代表例として、eBookJapanの「ブラウザ楽読み β版」の3つをチェックしていく。

市販の電子書籍を読むなら「紀伊國屋書店 Kinoppy」

 2014年1月末になってWindowsストアアプリ「紀伊國屋書店 Kinoppy」をリリースしたのが紀伊國屋書店ウェブストアだ。もともとマルチプラットフォームが売りのストアということで、以前からWindows用のデスクトップ版アプリも取り揃えていたが、新たにリリースされたのはこれとはまったく別物となるWindowsストア版アプリだ。

 インストールして起動するとおなじみの本棚が表示され、タップすると購入済みの電子書籍のダウンロードが行なわれてページが開く。ビューワとしての機能はAndroid版アプリに近く、タップ、スワイプでのページめくりが行なえる。コミックではページの一部をズームしながら順に表示していく同社ならではのトレースズーム機能なども健在だ。

 大きく操作性が異なるのがオプションメニューの表示方法で、Androidなどでは画面中央をタップして表示されるのが、Windowsストア版アプリでは画面上から下もしくは下から上へのエッジスワイプでメニューを表示するという、Windowsストアアプリに準拠した操作方法を採用している。それゆえAndroid版アプリの操作に慣れた状態で使うと、メニューを表示しようとして画面中央をタップ→メニューは表示されずにページがめくられる→戻る→また画面中央をタップ→またページがめくられる、という操作ミスを繰り返すことになる。同社のビューワを使い込んでいるユーザーほど、このループにはまりやすい。

 もっとも、違いは強いて挙げたそれくらいで、ほかのプラットフォームを使い込んでいるユーザーが違和感を抱かないよう操作性をなるべく維持しつつ、Windowsストアアプリの作法も取り入れた、至ってまっとうな移植であると感じる。実際に使う上でネックになるのは、前述した左右のエッジスワイプでチャームやアプリ切り替え画面が表示されてしまう問題だが、これはアプリには非はなく、このあと紹介するビューワでも同様だ。

紀伊國屋書店 Kinoppy」。無料で利用できる
起動すると購入済みの本が本棚に並んだ状態で表示される。タップすると本が開く
本の並べ方を変更するとクラウド経由で同期され、ほかのプラットフォームのアプリにも反映される
うめ著「大東京トイボックス 1巻」を表示したところ。比率の関係で上下に余白ができる
画面上から下もしくは下から上へのエッジスワイプでオプションメニューが表示できる
「ページ設定」からは単ページ/見開きの切り替えや、ページめくり時のエフェクト、トレースズームのオンオフが設定できる
しおり機能も利用できる
夏目漱石著「坊っちゃん」を表示したところ。テキストコンテンツではフォントサイズ、行間、余白を調整できるほか、横書きへの切り替えも可能
見開き表示にも対応するが、Miix 2 8では1ページあたりの解像度が640×800ドットとなるため、さすがに細かい文字は読みづらい

自炊データの閲覧なら「Pico Viewer」

 紙の本を裁断してスキャナでデータ化した、いわゆる「自炊」本を読むのであれば、「Pico Viewer」がお勧めだ。近いコンセプトのアプリとしては、無料の「MetroComicViewer」が有名だが、「Pico Viewer」はその上位互換といっていい機能を有するアプリだ。本棚のデザインも洗練されており、多数の自炊データをサムネイルで並べられるので、一般的な電子書籍ストアのビューワと近い感覚で利用できる。

 自炊データのフォーマットはPDFのほか、ZIP圧縮JPEGにも対応する。ローカルはもちろんネットワーク経由での読み込みに対応するので、NASから直接自炊データを読み込むこともできるほか、OneDriveからの読み込みも可能なので、自炊データをクラウドに置いて外出先から取り出すという使い方もできる。

 Pico Viewerの最大の特徴は設定の柔軟さで、一般的な自炊ビューワに備わっているほとんどのカスタマイズ機能を網羅しているほか、背景色の変更や余白カットのオン/オフや明るさなどのリアルタイム補正にも対応。さらに表示をグレースケールに切り替える機能も有しており、スキャン時に誤ってカラーモードで読み取ってしまったモノクロページもオリジナルに近い画像が得られる。これら機能面と設定の柔軟さで本アプリと張り合えるのは、筆者が知る限りではAndroid用の「Perfect Viewer」と「ComittoN」くらいだろうか。300円の有料アプリだが、これから長期に渡ってWindowsタブレットで自炊データを楽しむのであれば、早めに購入しておいて損はない。

 なお、このPico Viewer自体は100MBを超える自炊データも難なく読み込めるが、雑誌のような大判の画像を表示するためには、Miix 2 8は画面サイズも足りなければ解像度も足りない。iPadで言うところのRetina解像度を見慣れている場合、明らかに粗く感じるので、大判の自炊データを閲覧するためのWindowsタブレットを探している場合は、もう少し解像度が高く、かつ画面サイズの大きい製品を選んだ方が良いだろう。

Pico Viewer」。300円の有料アプリだ
データの読み込みはローカルPCのほか、ネットワーク、さらにOneDriveからも行なえる。ちなみにネットワークからの読み込みはパスの手入力が必要なので、NASを予めネットワークドライブに設定しておき「PC」から探した方が無難
読み込み先のフォルダから、本棚に追加する自炊データを1つずつ指定する。PDFのほかZIP圧縮JPEGにも対応。自炊データ以外ではPNGやGIFなどにも対応する
本棚に自炊データが表示された。1ページ目がサムネイルとして表示される。ダブルタップすると本が開く
本の並び替えや上下の棚への移動はもちろん、タイトルの編集なども可能。操作性はやや独特だが、それほど利用頻度は高くないので支障ないだろう
本棚の設定画面。「スワイプ時に斜めにスクロールしない」など、他ではあまり見かけない細かいカスタマイズが可能だ
うめ著「大東京トイボックス 1巻」の自炊データを表示したところ。背景色は初期値は黒だが、設定画面から自由に変更できる
画面上から下もしくは下から上へのエッジスワイプでメニューを表示できる。ページプレビューはもちろん色の補正、グレースケールへの切り替えなど項目は盛りだくさん
これに加えてビューワにも設定画面がある。こちらはページ送りの方法や左右綴じの切り替え、余白処理や背景色変更など、細かすぎて伝わらないほどの設定項目が用意されている
もちろん見開き表示にも対応する。解像度が足りなく感じられるのはほかのアプリと同様で、Miix 2 8のハードウェアに起因する問題だ

アプリ不要で電子書籍が楽しめるブラウザビューワという選択肢も

 Windowsストアでの電子書籍ビューワはまだユーザーが自由に選べる状況には程遠いが、ストアアプリとは違った形でWindows 8.1タブレットへの対応を果たしている電子書籍事業者もある。それはWebブラウザビューワを用いる方法だ。

 例えばeBookJapanのブラウザビューワ「ブラウザ楽読み β版」であれば、同社ストアで購入した電子書籍を、IE(Internet Explorer)上で快適に読むことができる。タップやスワイプといった操作性もほぼそのままなので、少なくともページをめくっている間は、アプリではなくブラウザ上で読書していることをまったく感じさせない。ブラウザの全画面表示を元に戻す時に初めて、ブラウザだったことに気付くくらいだ。

 ネックとなるのは、本を快適に読める状態にするまで、Webブラウザを起動したり全画面表示にしたりといくつかのステップ数が必要になること、またテキストコンテンツはブラウザでの表示に非対応のケースがあることだ。表示できてもアプリのようにフォント選択の自由度は高くないので、どちらかというとコミック向けといっていいだろう。

 また今回紹介したeBookJapanの「ブラウザ楽読み β版」はタップやスワイプといった操作に対応しているが、あらゆる電子書籍ストアのWebブラウザビューワが同様かというとそうではない。各ストアを見ても対応しているのか否かはっきりしないので、各社にはぜひ検証および結果の明示をお願いしたいところだが、そもそも何を持ってWindows 8.1に対応しているかと判断するのか難しい。基本的にはユーザーが自力で試すしかないだろう。

 とは言え、ハードルはWindowsストアアプリよりは明らかに低く、近年やや影が薄くなっていたWebブラウザビューワが見直されるきっかけになるかもしれないと感じる。普段使っている電子書籍ストアがWindowsストアアプリをリリースしていない場合、Webブラウザビューワが使えないか、チェックしてみる価値はあるだろう。冒頭に述べたエッジスワイプでチャームが表示されてしまう問題はあるものの、Windows用のデスクトップアプリよりは親和性は高いはずだ。

IEからeBookJapanにアクセスし、サイトの右上にある「ブラウザ楽読み」をクリックする
ログインすると「ブラウザ楽読み β版」が起動する。購入済みの本が表示されている
うめ著「大東京トイボックス 1巻」を表示したところ。ブラウザを全画面表示にしていると、アプリを使っているのと見た目も変わらず、操作性もほぼ同等。レスポンスも速い
画面中央をタップするとメニューが表示される。Windowsストアアプリではないため、操作性はむしろiOS/Androidアプリに近い
ページ表示モードの切替や、ダイアログ表示の有無などが設定可能
サイドバーを表示させ、シリーズ作品や関連作品を表示することも可能
こちらはBookLive!のブラウザビューワ「ブラウザビューワβ」。eBookJapanの「ブラウザ楽読み β版」と同様タッチ操作で快適に読める
ただしテキストコンテンツなどはブラウザでの閲覧に対応しておらず、かわりに「アプリで読む」をタップするとデスクトップ向けのアプリのダウンロードを促される
こちらはJコミのブラウザビューワ「ムラサメ」で赤松健著「ラブひな 1巻」を表示したところ。スワイプなどには対応せず、ブラウザ上に配置された「次へ」ボタンをタップしてページをめくる形になる

まとめ

すでにタブレット事業からの撤退が報じられている電子書籍ストアnookからはWindows 8.1向けにアプリがリリースされているが、これはあくまで既存ユーザー向けで、新たなアプリが登場するとの噂も根強い

 ざっと見てきたが、すでに8型のWindow 8.1タブレットを所有しているならば、電子書籍が快適に読める環境は徐々に整いつつあり、試してみる価値はある。しかし電子書籍の閲覧を主目的にこれから7〜8型のタブレットの購入を検討する段階なら、Windowsタブレットは現時点では見送った方が良い。そもそも「ただ動く」のと「快適に使える」のはまったく異なる。今回試用したビューワのように、ほかのプラットフォームと遜色ないアプリを用意している事業者はまだほんの一部で、ユーザーが自由にストアを選べる状況には程遠いからだ。

 過去に各電子書籍ストアがローンチした際、それぞれのプラットフォームにきちんと対応できるまでに要した期間を考えても、現状のiOSやAndroidと同じくらい充実するまでに、おそらく1年程度では難しいだろうというのが筆者の予測だ。現状はシェア的にも各社にとって対応の優先順位は低いはずで、そこに前述のエッジスワイプのようにインターフェイスの設計を変更せざるを得ないという要因を加味すると、もう少し日数を要すると見てもいいかもしれない。

 ちなみにここまで見てきた3つのプラットフォーム、すなわちiOS、Android、Windowsのうち独自の電子書籍ストアを有していないのはWindowsだけであり、Microsoftが出資しているBarnes & Noble傘下のNOOK Mediaが将来的に日本向けに電子書籍ストアを展開したり、あるいはまったく別のラインで同社が自社ストアをローンチすることがあれば、状況は大きく変わるだろう。本稿執筆時点では具体的な情報があるわけではないが、なんらかの大きな動きがあった時点で、本連載でもあらためてレビューをお届けしたい。

(山口 真弘)