米防衛大手2社が政府から大規模な契約を受注しようと戦いを繰り広げている。契約の内容は、海外の軍隊やテロリストといった地球上の脅威とあまり関係がない。
国防総省は今月末までに60億ドル(約6085億円)のレーダーシステム「スペースフェンス」について第1段階の契約をそのうちの1社と結ぶ予定だ。スペースフェンスは、宇宙で急速に増えつつある廃棄物をさらに追跡するシステム。宇宙ゴミによる人工衛星や有人宇宙船への損傷・破壊が懸念されている。
米国防総省、宇宙ゴミから地球を守れるか
防衛大手の米ロッキード・マーチンや米レイセオンは米国が監視できる宇宙のゴミの量を5倍にし、人工衛星がそれらと衝突する前に、衛星のオペレーターにこれを警告できる強力なレーダーシステムを構築するという契約の受注に向け競っている。
マーシャル諸島にレーダー基地を建設するという第1段階の10億ドルのスペースフェンス契約は重要だ。国防総省の予算圧力で新しい軍事プロジェクトが微々たる数に減らされるなか、契約を受注した企業は後に続く事業でも有利となる可能性があるためだ。
米航空宇宙局(NASA)によると、地球を周回している宇宙ゴミは50万個と推定され、人工衛星を機能停止させたり破壊したりする可能性がある。残骸は、使用済みロケット部品から塗料まで(短期的には手袋まで)、数センチメートルのものから、重量9トン全長約9メートルの使用済み人工衛星まで多岐にわたる。
こうしたゴミのすべてが、軌道上にあるさまざまな国の観測衛星1200基に危険な存在となっている。これらの衛星は携帯電話サービス、インターネット接続、GPSによる地図作成、銀行の機械などの機能に不可欠だ。
軌道にある2つの廃棄物が衝突する場合、その両方の速度を合わせると時速2万2000マイル(約3万5000キロメートル)で、高速弾の6倍の速さだ。政府が資金提供する宇宙研究グループ、エアロスペースの著名エンジニア、フェリックス・フーツ氏によると、その速度での衝突の影響は巨大なショック波により増大する可能性がある。
フーツ氏は「宇宙ゴミが衛星を文字通り破壊してしまう」と述べ「(スペースフェンスで)われわれはさらに多くのデータを得られ、これまで観察した以上の数の廃棄物を確認できる」と指摘した。
SF小説の世界の問題ではないが、ハリウッドの映画作品にはなっている。米空軍宇宙軍の司令官ウィリアム・シェルトン大将は、昨年11月に宇宙ゴミについて、映画のワンシーンを利用して講演を行った。アカデミー賞を受賞した映画「ゼロ・グラビティ」で、宇宙ゴミの雲がスペースシャトルを破壊し、女優サンドラ・ブロックが演じる宇宙飛行士を宇宙に漂流させてしまう。