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第36回勉強会 (H19.8.28) |
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肩関節疾患の評価と考え方 |
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今回の勉強会は、当院の小林久文理学療法士により、以前研修会に参加した際に学んできた肩関節の評価について、参加者に実際に体を動かして行ってみるという実習形式で行いました。勉強会には、当院スタッフをはじめ実習生を中心に近隣病院から数多くのスタッフが参加しました。
ここでは、実際に勉強会で行った評価とその考え方について解説していきます。 |
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肩関節疾患の発生の流れ
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関節包と腱板の関係 |
●関節包
関節包が他動的に伸張されると、伸張されている関節包が関節の安定化を図り、反対側は弛緩する。
●腱板
運動時に関節包の機能を補助する。弛緩した側の安定性を補正する。 |
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関節包の特徴 |
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scapula plane上45°外転・内外旋中間位という肢位は関節方の上下、前後の全ての関節包が均等に緊張する。このことにより、肩関節の安定性を関節包の影響なしに評価することができる。 |
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Initial Abduction Test
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肩関節屈曲外転0度、内外旋0度の状態にさせ、外転方向に力を入れてもらう。検者は非検者の上肢抹消を持ち、運動に対して抵抗をかける。一方の手は検査側肩甲骨の位置が分かるように配置しておく(下角周辺が触診に好都合)。
この肢位での検査では、腱板(主に棘上筋 )に対して、筋伸張刺激を加えることになる。この際、主に腱板断裂、滑液包炎を呈していると疼痛として現れる。肩峰下滑液包炎・腱板・肩関節に炎症などの組織損傷があると、肩周囲、あるいは上腕・肘にかけて疼痛が生じる。
しかし、腱板機能不全によるインピンジメントは生じない。 |
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45 Abduction Test |
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scapula plane上45°外転・内外旋中間位の状態にさせ、Initial Abduction Testと同様に行う。この際に起こる痛みは、主にインピンジメントが原因であるが、腱板断裂や滑液包炎が重度な場合は、疼痛を呈することもある。
これらのテストによって生じた疼痛の部位や程度、肩甲胸郭関節の反応(挙上、下方回旋等)や指示した運動の再現性などから問題点を抽出していく。 |
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前述の通り、肩関節のポジションにより対応した箇所の関節包が伸張されるので、逆側では関節包が緩む為、腱板が機能していなくては関節を安定させておくことができない。このことから、abduction
testの際にscapula plane上ではなく、屈曲位や外転位に近づくと、対応した腱板の関与が高くなる。即ち、屈曲位では肩甲下筋、外転位では棘下筋の関与が高くなるので、腱板を成す筋の細かい評価を行うことが出来る。 |
肩甲骨固定の意義 |
肩甲骨固定により疼痛の軽減、筋力の向上が認められる場合、肩甲胸郭関節の機能障害が疑われる(第三の安定化機構の破綻)。 |
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最初に下垂位外転(initial abduction test)での検査を行い陽性であれば腱板損傷、滑液包炎等の組織損傷を考える。下垂位外転での検査が陰性の場合は、次に45°外転(45 abduction test)を行う。この検査によりインピンジメントによる症状や肩甲骨の異常運動を呈した場合は、肩甲骨を固定し、再度検査を行う。肩甲骨を固定しても疼痛がでる場合は、腱板の問題であると考える。
また、症状が消失した場合は肩甲胸郭関節の機能不全による問題であると考える。
肩甲胸郭関節の問題であると判断したら、次はそれが肩甲骨周囲筋の筋力が低下していることによるものなのか、もしくは他関節からの影響によるものかを評価しなくてはならない。前者の場合は肩甲骨の周囲の筋肉の筋力を徒手筋力検査(Manual Muscle testing:MMT)の方法を用いて検査していく。この際、MMTの判断基準だけでなく、左右差、他関節の反応も注意して診ていく。後者の場合は、なぜ肩甲骨周囲筋が筋力を発揮できないのかを腹背筋・下肢の筋力や、柔軟性をチェックして問題点を探していく必要がある。 |
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肩甲骨固定により症状が消失する場合、肩甲胸郭関節の機能不全が考えられ、その原因を評価して問題点を挙げることが大切である。問題点(原因)としては、上図のようなものが考えられ、それを改善するには各々の介入方法をする必要がある。検者が考えていた原因が事実であるかを確認するには、介入後、再度同様の検査を行う必要がある。介入後も症状が変化しない場合は、再度他の視点から問題点を考えていく必要がある。 |
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腱板損傷等が原因の場合は、他の腱板や肩甲胸郭関節、上腕二頭筋(長頭)による代償を図る。腱板機能不全によるインピンジメントが原因の場合は、腱板トレーニング(cuff-Ex)を行う。
肩甲胸郭関節の機能不全が原因の場合は、肩甲胸郭関節機能訓練や体幹機能訓練、下肢機能訓練等を展開していく必要がある。 |
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<こんな研修会に参加してきました>
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・研修会名 : 肩をふれあう会
・テーマ : 『運動連鎖』〜投球肩障害と運動連鎖の講演と実技研修〜
・研修会開催日 : 8月5日(日曜日)
・場所 : 相澤病院ヤマサホール
・講師 : 千葉慎一先生(昭和大学藤が丘病院理学療法士) |
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