波多野陽
2014年5月16日23時10分
東京電力福島第一原発の汚染水対策で、東京電力や国が切り札とする「凍土壁」が、予定通り6月に着工できるか見通せない状況になっている。氷の壁で建屋を囲んで地下水の流入を防ぐ前例のない対策に、原子力規制委員会が安全性や効果に疑問を呈したからだ。東電側もデータを示しきれずにいる。
16日、第一原発の敷地内で凍土壁の試験が報道陣に公開された。壁の外側は地下水が地表近くまであるが、内側で掘った穴に水はない。露出させた凍土をスコップでたたくと硬い音が響いた。「遮水ができている。課題の第一歩はクリアできた」と施工を受け持つ鹿島の担当者は解説した。
凍土壁はトンネル工事などに使う技術を応用。零下30度の液体を入れた管を1メートル間隔で埋め、周囲を凍らせる。1日約400トンの地下水流入量を130トンまで減らせるとされ、国も320億円を負担。来年3月にも凍結を始め、7年後までこれでしのぐ計画だ。
だが、試験は10メートル四方を囲んだのに対し、実際は延長1500メートル。これだけ大規模なのは異例で、トラブルがあれば汚染水対策や廃炉作業を左右しかねない。
東電が認可を得るため3月に提出した申請書はA4判3枚で、規制委の検討会で更田豊志委員は「これでは審査できない」と指摘。地盤沈下や汚染水流出のおそれはないか、凍土壁が解けた場合の対策など24項目の説明を文書で求め、決着の見通しは立たない。
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