ドイツを駆け巡るシュピーゲル誌の特ダネ
5月12日発売のシュピーゲル誌で、特ダネがあった。見出しは『原子力のためのバッドバンク』。バッドバンクとは、金融機関が抱える不良資産を買い取り、管理・処分する機関である。金融機関から不良資産を切り離すことにより、損失拡大を食い止め、財務状況を改善し、金融システムを健全化することが目的だ。
では、シュピーゲル誌のすっぱ抜いた『原子力のためのバッドバンク』とは何かというと、E.on、RWE、EnBWの大手電力会社3社(ドイツには電力会社は4社あり、残りの1社は外国資本)とドイツ政府の間で、バッドバンクのような機関を設立しようとする秘密計画が進められているというのだ。この場合の不良資産とは、電力会社の原発部門である。
具体的には、「電力会社から原発部門を買い取って、脱原発の後始末をする機関(バッドバンク)を作る。これは、基本的に国営。電力会社はそこに原発閉鎖のときのために積み立ててきたお金300億ユーロ(4.2兆円)を拠出する。そして、原発閉鎖までの稼働と、その後のことは、すべてバッドバンクに委託」とシュピーゲル誌。とはいえ、原発の後始末代が300億ユーロを越えると、あとはもちろん公的資金が投入されることになる。早い話、それは税金である。
シュピーゲルは毎週月曜発売だが、日曜にはその中身がインターネットで見られるようになる。つまり、11日の日曜以来、この特ダネはドイツを駆け巡っている。
報道は概ね、"政府と電力大手が、国民に内緒で何か悪いことを企んでいる"、"電力会社は脱原発の後始末、つまり、原発施設の解体、除染、そして、核廃棄物の最終処分などを、すべて国民に押し付けようとしている"、"電力会社は、過去の原発導入の際に補助金を受け、それが軌道に乗れば民営企業として儲け、最後の後始末のときは国営になる"という非難で満艦飾だ。シュピーゲル誌の記事も、同じく非難のスタンスで書かれている。
しかし、本当にそうなのか?
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