税逃れは(米製薬大手ファイザーに)多額の利益をもたらした高脂血症治療剤「リピトール」と響きは違うかもしれない。それでも、米国の消費者は注意すべきだ。
米上院の常設調査小委員会で情報交換するレビン議員(左)とマケイン議員。米キャタピラーが法人税率の低い海外へ所得を移し、米国での課税逃れをしているとして、同社幹部を呼びヒアリングを行った(4月1日、ワシントン)=ロイター
ファイザーは英アストラゼネカと合併した後に英国へ拠点を移すと明言しているが、これは米法人税制に対する新たな一撃となる。これは各国の税制度の違いを利用して利益を得ようとする風潮の一端といえる。米税制改革はずいぶん遅れているが、米国は各国が際限のない法人税引き下げ競争に陥る事態を阻止できるように、もっと理にかなった法人税のモデル作りに努めなければならない。企業を短期的な会計操作でなく、戦略的な判断に導くような制度が理想的だ。米国だけが「結石」を取り除く影響力を持っている。
■利益2兆ドル分が海外に
ファイザーの拠点移転計画は米法人税制の欠陥を浮き彫りにした。35%という米法人税率は先進国で最も高く、英国を約15%上回っている。納税義務をきちんと果たしている企業もあれば、法人税をほとんど支払っていない企業もある。海外での収入に対しては米国に移した時点でしか課税されないというのが大きな抜け穴で、これにより2兆ドル近い米企業の利益が海外にとどめられるというおかしな状況になっている。
米国の税制を改革するならば、どこで収入が発生したのかを問わず世界での収入に課税するか、地域ごとの制度に完全に移行するかのどちらかに変えるべきだ。前者を採用する方がよい。そうすれば各国が自国の利益を最優先してほかの国の困難を顧みない「近隣窮乏」税制を食い止めることができるからだ。いずれにしても、いまの米税制には不備があり、米納税者には不公平で、アップルなどの企業が利益の大半を海外に滞留させておくことを促している。これでは会計士にもうけさせるだけだ。
最善の解決策は、経済活動が生じた場所に基づいて法人税の課税区分を定めるということで経済協力開発機構(OECD)加盟国が合意できるように米国が努力することだ。海外子会社への支払いなどを売上高から控除できる範囲を制限する案も考えられる。もっとも、利益を海外に移転するいまの流れを食い止めたいのなら、まずはこれを促す税制の抜け穴をふさがなくてはならない。
ファイザーは英アストラゼネカと合併した後に英国へ拠点を移すと明言しているが、これは米法人税制に対する新たな一撃となる。…続き (5/16)
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