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震災の心血管系へ及ぼす影響報告は多数ある

心臓足首血管指数でモニターした動脈壁硬度の巨大地震による硬化(A Huge Earthquake Hardened Arterial Stiffness Monitored with Cardio-Ankle Vascular Index)


Journal of Atherosclerosis and Thrombosis(1340-3478)20巻5号 Page503-511(2013.05)

2011年に発生した東日本大震災において、震源から300km離れた病院で巨大地震が心臓血管指数(CAVI)に及ぼした影響について調べた。健常者43名(男26名、女17名、平均33.4歳)を対象とした調査では、平均CAVIは地震翌日で7.3、地震7~14日後に6.8に減少し、地震30日後は7.0であった。血圧には30日間で変化は見られなかった。心血管危険因子を有する32名(男22名、女10名、平均64.5歳)を対象とした調査では、平均CAVIは地震の12ヵ月前で8.95、6ヵ月前で8.99、地震1~5日後で9.34であり、地震6ヵ月後で8.83に減少した。血圧は地震後には僅かに上昇したが、地震前との間に有意差はみられなかった。震源から遠く離れた場所であっても、巨大地震後には健常者においても心血管危険患者においてもCAVIが増加することが示唆された。


https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat/20/5/20_16097/_pdf


東日本大地震の心血管疾患に対する影響 被災地域の10病院の報告(Effect of the Great East Japan Earthquake on Cardiovascular Diseases: Report From the 10 Hospitals in the Disaster Area)


Circulation Journal(1346-9843)77巻2号 Page490-493(2013.01)

東日本大地震災害地域における10病院の循環器科に2011年3月11日(地震発生日)の前4週から発生後15週までの期間に入院した患者計14078を対象として、心血管疾患の発症について調べた。心不全、肺血栓塞栓症、感染性心内膜炎を含む重症心血管疾患の週別発症率は大地震後に急激に有意に増加した。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/77/2/77_CJ-12-1594/_pdf



血管攣縮性狭心症患者における東日本大地震後のRhoキナーゼ活性上昇(Enhanced Rho-Kinase Activity in Patients With Vasospastic Angina After the Great East Japan Earthquake)

 

Circulation Journal(1346-9843)76巻12号 Page2892-2894(2012.11)

 

血管攣縮性狭心症患者11例について東日本大地震前後に好中球中のRhoキナーゼを測定した。その結果、Rhoキナーゼ活性は地震の6ヵ月後に有意に増加し、12ヵ月後には前値に復した(0.99±0.34、1.71±0.23、0.90±0.34、前値と6ヵ月後でP<0.001、6ヵ月後と12ヵ月後でP<0.001)。心的外傷後ストレス障害(PTSD)スコアと比較したところ、Rhoキナーゼの変化率はPTSDスコアと有意な相関が見られた。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/76/12/76_CJ-12-1238/_pdf

地震に関連する心血管疾患と静脈系疾患
松尾 武文(兵庫県立淡路病院)
日本血栓止血学会誌(0915-7441)23巻4号 Page383-386(2012.08)

 

震災ストレスによる交感神経活性化に伴う心血管疾患のリスクファクターとして、血圧上昇がある。阪神淡路大震災では震災による高血圧が一過性か持続性かを鑑別しないままで、不用意な降圧剤の投与による副作用に悩まされた。そして、震災による高血圧の発症、増悪は、災害高血圧として新たな疾患概念が提唱されている。「阪神淡路大震災震源地で経験したこと」「地震被災地からの情報発信」「被災地における臨床研究」について述べた。


心不全 東日本大震災心不全
Annual Review循環器2013巻 Page88-93(2013.01)


これまでも,阪神大震災新潟中越地震の発災後に,様々な心血管病が増加したと報告されているが,震災後の心不全増加の報告はなかった.今回,我々は2011年3月11日に生じた東日本大震災心不全発症に与える影響について精査するため,2011年の当院へのICDあるいはCRT-Dが植込まれた心不全患者の入院数の推移および宮城県内の救急車搬送件数を調査した.その結果,前年同時期と比し,心不全による入院患者および搬送患者は3月11日の震災後に有意に増加していた.心不全増加の機序としては,身体的・精神的ストレス,寒冷,感染症の増加などが考えられる.また,ICD,CRT-Dの解析結果からは震災後に心室不整脈が増加していることが明らかになり,不整脈の増加も心不全増悪の一因である可能性が示唆された.本稿では,1.これまで報告されている震災関連の心血管病について,2.本震災における心不全の増加について,3.心不全増加の機序について,述べる.


心臓デバイス留置患者における東日本大震災後の頻脈性不整脈心不全による入院の増加(Increased Incidence of Tachyarrhythmias and Heart Failure Hospitalization in Patients With Implanted Cardiac Devices After the Great East Japan Earthquake Disaster)

 

Circulation Journal(1346-9843)76巻5号 Page1283-1285(2012.04)

東日本大震災の前及び後の6ヵ月間、除細動器など心臓デバイスを留置した患者連続189例を対象とした。除細動器留置患者では頻脈性不整脈の1ヵ月当りの頻度が震災後に有意に増加(28±5から34±3、P<0.05)、両室ペースメーカ留置患者における1ヵ月当りの心不全による入院患者数も有意に増加した(1.2±1.0から2.7±1.2、P<0.05)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/76/5/76_CJ-12-0261/_pdf


東京都CCUネットワーク活動状況報告2010
ICUとCCU(0389-1194)36巻10号 Page781-783(2012.10)

東京都CCUネットワークでは、2010年に総計23,063例の患者を収容した。急性心筋梗塞は4,653例、院内死亡率6.0%で例年と同等の死亡率であった。急性心不全の収容数は年々増加傾向にあり、2010年は5,000例を超えた。2011年11月までの主な活動内容として、1)東日本大震災後方広域支援活動、2)急性大動脈スーパーネットワーク継続および検証、3)心臓病患者家族のためのAED講習会およびホームAEDプログラムの継続、4)加盟施設機能評価・自己評価、5)学術委員会活動および主要疾患データ解析、があげられる。今後は近年注目されている病院前心停止、重症急性心筋梗塞、急性大動脈疾患をターゲットとした緊急医療体制の構築、一般市民への啓発、病院到着後の循環器集中治療の実施を目指して、さらなる展開が期待される。

たこつぼ型心筋症の評価
日本保険医学会誌(0301-262X)110巻2号 Page146-155(2012.06)

たこつぼ型心筋症という病名はいかにもユニークなものの一つである。近年は震災等の被災後に多発した疾患としても報道され、一般にも広く知られるようになった。高齢女性に好発するという疫学的な特徴を有し、精神的および身体的ストレスがトリガーとなる場合も多い。本症は心筋症のカテゴリーに属するものの、長期に渡る心筋の異常を呈することの多い肥大型心筋症や拡張型心筋症とは異なり、一般には速やかに心機能が回復し良好な経過を取る。原因については冠攣縮等の関与も言われているが、未だ結論は出ていない。稀に不整脈等により死亡の転帰をとる例があるが、回復後の死亡率は一般人口と変わらないという報告がある。また再発を認める例がある点は入院保障の観点からも重要である。最近の知見として、収縮異常の部位が定型例とは逆のパターンをとる「逆たこつぼ型心筋症」に関する国内外の報告も増えてきている。

 

災害に特徴的な症状と疾病 低体温症
小早川 義貴(国立病院機構災害医療センター 臨床研究部), 近藤 久禎, 小井土 雄一

最新医学(0370-8241)67巻3月増刊 Page775-784(2012.03)

 

東日本大震災では巨大津波により,多くの人が津波による溺水で死亡した.津波による被水や避難所の寒冷環境から,低体温症に陥った被災者も多いと考えられている.低体温症は深部体温に応じて,軽度,中等度,高度の3つに分類される.高度低体温症は死亡と区別が難しいことがあり,注意が必要である.東日本大震災における低体温症の実態調査を行い,それに基づいた大規模災害時の低体温症管理に関する包括的な研究と,指針策定が必要である.



日本の農村地帯における急性冠症候群及び脳卒中の発生に対する大地震の影響 能登半島地震からの経験(Impact of Severe Earthquake on the Occurrence of Acute Coronary Syndrome and Stroke in a Rural Area of Japan: Experience From the Noto Peninsula Earthquake)

 

Circulation Journal(1346-9843)73巻7号 Page1243-1247(2009.06)

能登半島地震は2007年3月25日午前9時45分に発生した。地震から15分後に最初の急性冠症候群(ACS)が発生し、72時間後に脳出血(CH)が発生した。35日間に地域救急施設を受診した患者49名のうち5名(10.2%)がACS、8名(16.3%)がCHであり、4名が死亡した。ACS患者数、CH患者数共に過去3年間の同時期・同地域の平均患者数(ACS:2.0名、CH:2.3名)を上回った。ACSの殆どが地震後7日間に発生したことが注目される。地震によりACS及びCHの発生が増えることが示された。


新潟中越地震後における一過性左室心尖部膨隆(いわゆる"たこつぼ"心筋症)発症率増加(Increased Incidence of Transient Left Ventricular Apical Ballooning (So-Called 'Takotsubo' Cardiomyopathy) After the Mid-Niigata Prefecture Earthquake)

Circulation Journal(1346-9843)70巻8号 Page947-953(2006.07)

2004年10月23日に新潟中越震度6.8の地震が発生し、その後、1ヵ月以内に"たこつぼ"心筋症患者16例(男1、女15、平均年齢71.5歳)を診断した。13例(81%)は震度6以上の地域の居住者であり、11例(69%)は地震当日に自覚症があった。地震後の"たこつぼ"心筋症発症頻度は震源地付近では地震前の約24倍であった。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/70/8/70_8_947/_pdf


ストレスと臨床病理 阪神・淡路大震災ストレスの血液検査に及ぼす影響 心筋梗塞の発症と関連して
臨床病理(0047-1860)46巻6号 Page593-598(1998.06)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9691769