私は喉が渇くからいつもそれを飲む。
器の中の水は少し変な味がした。飲むことはやめなかった。
毎日1杯の水を飲んで私は生きてきた。
私は喉の渇きさえ満たさればそれで十分だった。
小さな器の中に少しだけミルクティーを注いだ。
初めて感じたその味は甘くておいしかった。
私は口の中の甘いそれを全て吐き出した。
足りなかったので継ぎ足した。器は重くなった。
全部口につけてもまだ足りなかった。
小さな器の中に自分が欲しいだけミルクティーを注いだ。
器の中から膨らみだしても、注いだものが全部こぼれだしても、私は止めなかった。
止められなかった。
小さくて重い器に口をつけようとしたが、あまりに重かった。
器はひっくり返ってしまった。
器の奥底からは水道水がたくさん出てきた。
まっさかさまにしても水は止まらなかった。
出しても出しても止まる気配はなかった。
私は水の味では満足できなくなっていた。
もう一度私はミルクティーを注いだ。
水の存在なんてなくなるほどに注いだ。
それを口に含むと、甘くておいしい味がした。全て吐き出した。
何度注いでも、何度口に含んでも、それは甘くておいしかった。
口に入ったそれは一度も喉を通ることがなかった。
器の奥から水がわき出ているのを感じた。
喉が渇いていたので、私は水を口に入れた。
甘い味に慣れた私にとって、それを飲むことは苦痛すぎた。
全て吐き出した。
ショーケースの中に、綺麗で小さな器があった。
私は手に持っていた歪んだ器を、強く強く握りしめた。
壊れることはなかった。
中には甘くておいしいミルクティーが注がれていた。