前口上
こうしている今も、たくさんの『名曲』が生まれている。
家でぼんやりしているとテレビ、ラジオ、PCから……
外に出て歩けば街頭から、お店から……
日常生活は常に音楽に溢れていて、音楽に囲まれている。
次から次へと『名曲』が生まれてくる世の中だから、もっともっと音楽に触れて、たくさんの音楽を知ってほしい。
今回、柴さんと語り合うことで、自分自身改めて心にグッとくる『名曲』がまだまだあったなぁと再認識する場になりました。
いいリズム、いいタイミングで、新たな『名曲』を振り返ってわいわい語れる場がありがたいです。
熱く語らせていただきましたが、構えたりせず、ゆったりと「あーこんな素敵な曲もあるのかぁ」と気軽に知ってもらえる場になったらいいなと思ってます。
音楽について語りたい。パァッと明るく話したい。
「CDが売れない」とか「シーンの先行きはどうなるか」みたいな暗い話じゃなくて。なぜなら、日々いい曲がどんどん届いているから。
年末恒例の「年間ベスト」だけじゃ物足りない。邦ロック、アイドル、洋楽、ボカロ、いろんなシーンに起こっているおもしろい動きを、がんがん紹介したい。熱く語らいたい。
そういうところから話は始まりました。
タイトルは「心のベストテン」。でも懐古的なトーンは一切なし。ダイノジ・大谷ノブ彦さんと、お互い「今はこの曲だ!」と思うものを持ち寄って、ぶっ続けの音楽談義。ぜひぜひ、聴きながら読んでみてください。
イラスト:長尾謙一郎
柴那典(以下、柴) さっそくやっちゃいますか。新連載です、よろしくお願いします!
大谷ノブ彦(以下、大谷) お願いします!
柴 ずっと僕はこういう企画やりたかったんです。とにかく心のベストテンを語り合いたい。
大谷 ははは! それは個人的なベストテンということ?
柴 実は二つやりたいことがあって。今の世の中って、みんなが見ている『ザ・ベストテン』的なものがないじゃないですか? オリコンチャートを見ても何が流行ってるのか、何がみんなに聴かれているのか、全然わからない。
大谷 指標にすらなってないですよね。
柴 で、今はもうYouTubeが普及して、そこで新曲を知る人がかなり多くなってきてますよね。だから、YouTubeの再生回数を参考にした新しい音楽チャートみたいなものが語れるんじゃないか?というのが一つ。
もう一つは、それ以前に、せっかくYouTubeで公式のMVがどんどん公開されているんだから、それを使っておすすめの新曲をウェブ上でどんどん紹介したいという。
大谷 なるほどね。今ってCDも売れなくなっていて、ラジオも広告がなかなか厳しくなっている。音楽を消費する環境は間違いなく複雑になっていますよね。でもね、じゃあ音楽リスナーが減ってるか?っていったら、そんなことないんですよ。間違いなく増えてる。だからラジオの役割はリコメンドだと思う。この連載の話をいただいた時も、そういうことが一つの芯になるといいなと思ったんです。
柴 まさに。YouTubeを使えばウェブ上でそれができるわけですからね。そんな感じでやっていければいいかな、って思ってます。
大谷 じゃあ早速、一曲ずついきましょう。
大谷ノブ彦の1曲目→「ハッピー」ファレル・ウィリアムス
「Happy」Pharrell Williams
2013/11/21UP 227,157,407play(2014/5)
大谷 最初はなんと言ってもこれでしょう! ファレル・ウィリアムスの「ハッピー」。
柴 僕も心のベストテン第一位はこの曲ですね。今年を代表する一曲になりそうな気がする。
大谷 ほんとに、今のファレルは世界のポップアイコンになったと思うんですよ。それだけじゃなくて、僕の中でも「今はこの曲だ!」って言える。自分がやりたい芸能、お笑いのスタイルもこれなんですよ。で、それはダフト・パンクの存在がすごくデカくて。
柴 というと?
大谷 お笑い芸人も、90年代はふだん根暗で無口なのに、ステージに出てきた時にみせる爆発力がすごいとか、そういう狂気の裏返しみたいな美しさの型が一つあったんですよ。音楽でも、レディオヘッドとかニルヴァーナとか人間関係が苦手なやつが作品の中でパッションを放つみたいなものが格好いい時代がずっとあった。でも、気づいたらそればっかりになっていた。
それで「あれ? なんかこの感じ違くないか?」と。そこにきて、去年、ダフト・パンクの『ランダム・アクセス・メモリーズ』聴いた時に、「やっぱ、こっちだよ!」って思ったんですよ。それって小沢健二が『LIFE』でやったのと同じ感覚なんです。
柴 なるほど。繋がってますよね。
大谷 一瞬だけでも人生を輝かせようとするような、能動的なエネルギーがサウンドとか世界観に入ってる。そういう陽性なものに対して「これだ!」って思った。だってタイトルからして「ハッピー」ですよ?
そこから僕は急にバックトゥー80sなモードになった。これ、お笑い芸人で言うと、「とんねるず」さんなんですよ。だから、今興味があるのはバブルの時代にディスコに行ってた人たちの音楽の聴き方とかで。あのパワーが今一番痛快だし、それを体現してるのかな、って思いますね。
柴 ダフト・パンクはデカいですよね。去年に出たダフト・パンクの「ゲット・ラッキー」がグラミー賞も受賞して2013年を代表する曲になって。そこで歌っていたファレル・ウィリアムスが、今度は「ハッピー」という曲を出した。そういう流れも象徴的で。
「Get Lucky」Daft Punk
大谷 ファレルはアカデミー賞でもパフォーマンスしたんですよね。で、みんなクラシカルな格好をしてるのに、一人だけジャージ着て出てきて。それで名だたる名優を手招きして参加させたりする。それがめちゃくちゃ格好いい。
柴 この曲、周りを引き込む力があるんですよね。それがいいなって思うんですよ。これ、観ました? デトロイトの小学生がこの曲を歌っている動画。
cakesに登録すると、多彩なジャンルのコンテンツをお楽しみいただけます。 cakesには他にも以下のような記事があります。