生活扶助費切り下げと特殊消費者物価指数(CPI)―――「生活扶助相当CPI」
厚労省は、2013年8月から生活保護支給のうち月々の生活費に相当する「生活扶助費」の大幅削減を開始した。3年間で総額670億円。平均6.5%、と未曾有の削減である。うち86.6%に相当する580億円については2008年から2011年までの物価の下落によるものだとしている。1)根拠として「生活扶助相当CPI」が下がったと主張している。厚労省作成この特殊消費者物価指数(CPI)に焦点を当てて検討した。いったい、これは正当なものと言えるのであろうか。
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経済動向の分析や長期デフレ対策としてのリフレ政策においては消費者物価(CPI)の動向が重要な指標として使われている。今度は「生活扶助相当CPI」という特殊CPIである。厚生労働省が独自に作成したものだ。生活保護世帯は医療費・家賃・義務教育関係費などが無料であったり、原則として支出しないことになっている品目があるため、「生活扶助相当CPI」はこれら費目(除外品目)を取り除いた品目(以下、「生活扶助に相当する品目」)について物価指数を計算したところ2008年から2011年に4.78%下落したというものだ。総務省が一般標準世帯について発表する消費者物価指数CPIの下落率は2.35%だ。
2013年の国会審議等を経て分かったところによると、この特殊「CPI」はすくなくとも3つの重大きな過ちをおかして作成された欠陥品である。
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注1)残りの引き下げ分は、全世帯の月収入額を十に階層分けしたときの最低層である「十分位階級」第Ⅰ階級、つまり下位10%の世帯の支出に比べて生活保護世帯平均の支出が上回っているという、「生活保護審議会基準部会」が2012年にとりまとめた調査結果を受けたものとされる。しかし、この部会の専門家もこの結果からただちに扶助費を引き下げるべきだという提言をおこなっていない。
(1)比較する年があきらかに妥当でない。
第一に、最後の扶助費引き下げがおこなわれた2004年以降のデフレにスライドさせると言いつつ、2008年のCPIと2011年とを比較していることだ。2008年といえば、サブプライムローン問題から世界の余剰マネーが石油や食料などの商品市場への投機に回ったため、日本でも石油の高騰に牽引されて総合CPIが急上昇した年である(図1.)。08年から10年にかけての総合CPIは激しい変動を示している。それは第一次・第二次オイルショック
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