集団的自衛権:本土復帰42年の沖縄 頭よぎる戦争の記憶

毎日新聞 2014年05月15日 23時08分

 他国を守るために武力を使う集団的自衛権の行使容認へ向け15日、安倍政権が一歩を踏み出した。この日はくしくも沖縄の本土復帰42年。「『平和憲法の下に戻ろう』と運動に取り組んだ。憲法の根幹である9条の形骸化は許せない」。祖国復帰協議会事務局長だった吉元政矩(まさのり)・元沖縄県副知事(77)は語る。

 首相は15日の記者会見で「法整備で抑止力が高まり、我が国が戦争に巻き込まれなくなる」と強調した。沖縄には現在も在日米軍専用施設の74%が集中している。吉元さんは、集団的自衛権の行使で沖縄が海外の戦地に向かう日米の軍事拠点になり、相手国の攻撃対象となることを懸念する。「安倍首相の発言は、他国の戦争に加担すれば自国民が被害を受けるということを隠している」。住民約9万人を含む約20万人が犠牲となった沖縄戦が脳裏によみがえる。

 安倍首相は会見で「国民の命や暮らしを守るのは私の責任」と強調し、集団的自衛権行使の必要性を訴えた。

大阪市大正区で沖縄文化を発信する「関西沖縄文庫」を主宰する金城馨(きんじょう・かおる)さん(60)は「聞こえのよい言葉だが、国のあり方に関わるような話を『私の責任』として、国民に問いもせずに憲法解釈を変えるのはおかしい」と憤る。「反対の意見には耳を傾けず、自分たちの考えを押しつけてくるのは、普天間飛行場の移設問題と同じ構図だ」【佐藤敬一、遠藤孝康】

最新写真特集