集団的自衛権:容認の動き加速 「武力行使」戸惑う自衛官

毎日新聞 2014年05月03日 14時37分(最終更新 05月03日 16時30分)

昨年2月に行われた陸上自衛隊と在日米軍の共同訓練開始式=北海道千歳市の東千歳駐屯地で、小川祐希撮影
昨年2月に行われた陸上自衛隊と在日米軍の共同訓練開始式=北海道千歳市の東千歳駐屯地で、小川祐希撮影

 集団的自衛権を憲法解釈の変更で容認しようとする動きが加速化している。安倍晋三首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が今月中に報告書をまとめる方針で、4月に来日したオバマ米大統領も政府の方針を支持した。敗戦後、現憲法下で一貫して海外での武力行使を行わなかった日本。憲法に基づいて政治を行う「立憲主義」の在り方が問われている。武力行使することになる自衛隊員や、海外の戦地で戦った第二次大戦時の元兵士らは、自衛活動が拡大する動きを複雑な思いで見守っている。【小川祐希、野原寛史】

 「戦争に巻き込まれるのは怖い。でも任務なら行くしかない」。北海道内に住む30代の航空自衛隊員の男性は、居酒屋で周囲を気にしながらビールを片手に小声で漏らした。

 子供の頃から飛行機が好きで入隊。宣誓文を書くと「国を守る一員」との気持ちが湧いた。上官の命令は絶対で、任務について自分で考えることは少ない。決められた仕事をしていれば階級は上がる。有事に命を懸ける覚悟は徐々に薄れ、「平和ぼけ」していった。

 だが中国や北朝鮮の脅威が増し、「日本は本当は危ない国」と感じるようになった。北朝鮮がミサイルを発射する度に招集がかかる。「日本領土に入る前に撃ち落としたい。命令があればいつでも行けるのに」というもどかしさと、「自分のところにも飛んでくるかも」という恐怖心。家族は「何かあったら」と心配する。

 集団的自衛権を認める国の動きは、雲の上の出来事だ。現場隊員の中では「下が何を言っても変わらない」と冷めた見方が多いという。ただ、戦争に巻き込まれる可能性は今より高くなると思っている。「命令に従うしかない。けど、みんな死んでから後悔するんですよ。『なんで戦争に行っちゃったんだろう』って」と、諦めたようにつぶやいた。

 北海道千歳市内に住む20代半ばの陸上自衛隊員の男性は「撃ったり撃たれたりするという覚悟をせずに入隊した」。資格を取るために入隊し、周りも安定した職に魅力を感じて入ってきた人が多い。集団的自衛権を考えることも学ぶ機会もほとんどない。難しく考えると仕事が続かない。「戦場に行って初めて、気持ちが変わると思う。今はよく分からない」と笑顔で語った。

最新写真特集