世界三大自動車レースのひとつ ル・マン24時間耐久レースに、プレイステーション用ソフト グランツーリスモ の GT アカデミー出身ドライバー4名の参戦が決まりました。ゲームプレイヤーからプロのレーシングドライバーになった彼らの走りに注目が集まっています。

GT アカデミーは、欧州日産と SCEE(ソニー・コンピュータ・エンターテインメント・ヨーロッパ)が主催する プレイステーション用ソフト グランツーリスモ を使ったレーシングドライバー育成プログラム。2009年から今年までの間に8人の卒業生を輩出しています。
 

(左から オルドネス、ライプ、マルデンボロー、シュルツイスキー)
 
GT アカデミー出身ドライバーの筆頭は、Engadget でも取り上げたことのあるルーカス・オルドネス。初代 GT アカデミーウィナーで、昨年のル・マンでは LMP2 クラス3位で表彰台に上がり、2014年は日本の SUPER GT 選手権にも参戦しています。もう一人は2012年欧州 GT アカデミー勝者で、昨年プロデビューを果たしたウォルフガング・ライプ。そして日本のエースドライバー本山哲選手の3人で24時間を戦います。

一方、2011年 GT アカデミー勝者のヤン・マルデンボローは、今年2月に F1 チャンピオンチーム レッドブル・レーシングのドライバー開発プログラムに選ばれた逸材。2012年 GT アカデミー ロシアチャンピオンのマーク・シュルツイスキー、そして元 F1 ドライバー マーティン・ブランドルの息子、アレックス・ブランドルとともに2014年のレースに挑みます。
 
 
ドライバー陣も注目ですが、日産のレースカーも話題性では引けを取りません。オルドネス/ライプ/本山組がドライブするマシンは日産が開発する変態レーシング EV、ZEOD RC。2012年のル・マンに出走した日産デルタウィングのコンセプトを発展させたマシンで、次世代技術プロモート用に設けられた「ガレージ56」枠からの参戦です。

パワーユニットには、日産ジューク用をベースに約400馬力を絞り出す1.5リッター3気筒ターボ「DIG-T R」エンジンと、電力走行用のモーターを搭載します。F1 の KERS システムのようにモーターを加速アシストとして使うのではなく、エンジンとモーターを切り替えて走行する方式で、日産では ZEOD RC をオンデマンド型 EV と称しています。

モーターが使用する電力はエンジン走行中にブレーキ回生で生産し、バッテリーに蓄えます。充電にかかる時間はル・マン24時間レースの舞台となるサルテサーキット約10周前後。蓄えた電力で走行できるのが約1周ということで、10周前後エンジンで走れば次の1周をモーターで走るという、変則的なドライビングを行うことになります。

マルデンボロー/シュルツイスキー/ブランドル組がドライブするもう一台の参戦車両は、かつての名門 F1 チームの名を冠した リジェ JS P2。こちらはLMP2 クラスへの参戦で、もちろんクラス優勝を目指します。

2014年ル・マン24時間耐久レースは、6月14日から15日にかけて決勝レースが行われます。GT アカデミー出身ドライバーたちがどこまで上位に食い込めるか、期待は高まります。

ちなみに、GT アカデミーは数ラウンドの課題を経て開催されるオンライン予選の通過者だけがプロドライバー育成プログラムに進めるしくみですが、育成プログラム対象となる国は限られています。しかも主催企業のお膝元にもかかわらず、日本はこれまで対象国になったことがありません。諸事情はあるのでしょうが、せめて一度ぐらいは日本でもこの育成プログラムを開催し、国内のグランツーリスモプレイヤーたちに夢を見させてほしいものです。

下は、ウォルフガング・ライプによる ZEOD RC のテスト走行および、日産による2012年ル・マン挑戦の模様