(2014年5月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
オバマ大統領にとって慎重な外交政策は美徳だが・・・〔AFPBB News〕
米国のバラク・オバマ大統領は、イラクから米軍を撤収したという在職中の自らの成功をことさら強調してきた。だが、オバマ氏は、頭の中では往々にして、前任者が侵略したこの中東の国から一度も離れたことがないようだ。
海外での米国「軍隊」の利用を命じるべきかどうかについてオバマ氏が問われた時の口癖に注目してほしい。一番最近では、先月のアジア歴訪の終わりにウクライナ危機を巡って説明を求められた。
オバマ氏は2012年の大統領選でよくやったように視点を変え、「軍隊」について語るのではなく、あたかも2つの言葉が不可分であるかのように「軍事的冒険」について語り、この問題の構図を変えようとした。
オバマ氏はイラクについては正しかったかもしれないし、同氏の反戦の立場は奏功した。2008年には、イラク侵攻に賛成票を投じた民主党の対立候補ヒラリー・クリントン氏を撃退する助けになったし、2012年には、共和党の外交政策を性急で高くつく戦争と同一視することで成果を上げた。
戦争か傍観かの二者択一はまともな外交政策ではない
しかし、「軍事的冒険」のような言葉の使い方は、外交政策を単純な二者択一に変えており――米国は戦争を始めるか、それともその選択のコストや恐ろしさを考え、傍観者の立場にとどまるか――、オバマ氏に悪い結果をもたらし始めている。
米軍をウクライナやシリアに派遣することを本気で支持している人は誰もいない。ブッシュ政権でさえ、ディック・チェイニー氏を別にすれば、1期目の終わりまでにはイラク戦争の教訓を学び始め、それに応じて政策を調整していた。
ある評論家の言葉を借りれば、オバマ氏の度重なるイラクへの言及は、絶えず「ストローマニスタン*1」に攻め込むようなもので、自分自身の外交政策を作り出すことの代用品としてはお粗末だという。
ホワイトハウスは、軍事力行使に過度に慎重である米政府の姿勢に対する、戦争疲れした米国民の確固たる支持をよく引き合いに出す。だが、この議論には限界がある。
実際、オバマ大統領の外交政策に対する支持率は、広く注目されるウォールストリート・ジャーナル/NBCの最新の世論調査で38%に低下した。これは、オバマ氏が大統領になって以降最も低い値で、同氏の全般的な職務遂行に対する支持率をはるかに下回る。
*1=Strawmanistanに関する論評「Obama Invades Strawmanistan While Rubio and Others Offer Ideas」より、わら人形論法(いわゆる詭弁)とかけた言葉