今年で機動戦士ガンダム放送開始から35周年。
ガンダムシリーズは、膨大な数のシリーズやサイドストーリーを持っている。先日のマンガHONZでも漫画家うめ(小沢)が「最早これは歴史と言えるレベル」と評した。
初めて「ガンダムシリーズ」に触れる方、好きではあったが、まだ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(以下ORIGIN)を読んでない方には3つの理由で本作がお勧めである。
1:アニメの主な内容は、基本的にこのマンガ全23巻で抑えられる。
2:以降のシリーズ通しての裏主人公「シャア・アズナブル」のルーツが判る。
3:アニメでは描かれなかった、大人キャラたちの1年戦争初期の活躍が読める。
ロボットアニメとして始まっているガンダムにおいて、秀逸とされていた人間・組織描写が、より緻密になっているのが、私の思うORIGINの見所である。
機動戦士ガンダム THE ORIGINという作品
富野由悠季監督のアニメ/機動戦士ガンダムに対して、アニメではキャラクターデザインを担当した、安彦良和御大がこの漫画を描いている。アニメ放送が1979年開始なのに対して、ガンダムシリーズ専門雑誌「ガンダムエース」創刊号にて2001年より連載された。
23巻で完結するが、1巻から8巻までは、アニメ版の主筋をなぞっていく。安彦先生が漫画家として、ガンダムをどう解釈していたか追うという面白い体験だ。しかし、9巻「シャア・セイラ編」の序盤、劇場版Ⅱ哀戦士のラストシーンの直後に一転する。舞台がアニメ版にはなかった、過去の出来事に移る。すなわち、本作の2大勢力、地球連邦とジオン公国のうち、ジオン公国の始祖であるジオン・ダイクンが議場で謀殺されるシーンである。この謀殺は、ダイクンの近臣であった、ザビ家の陰謀とみて間違いない。
シャア・アズナブルと言う男
ガンダムを知らない人でも、機動戦士ガンダム主人公であるアムロ・レイと、ライバルのシャア・アズナブルの名前を知る人は多いと思う。シャアの本名はキャスバル・ダイクン。つまり、一方の勢力であるジオン公国始祖の落胤である。アムロも主人公として卓越した活躍を見せるが、ガンダムをシリーズとして見た場合、初期の所謂ファーストガンダムから、Ζガンダム、逆襲のシャアや、最新作のガンダムUCまで、多くの作品でシャアが名前や形を変えて大きな影響を与えている。敢えて言うと、シャアのザビ家への復讐心を反映した驚異的行動力が、各シリーズのストーリーが動いていく原動力となっているとも言える。
シャアはモビルスーツのエースパイロットであり、指揮官としての能力、カリスマ性、イケメンと、卓越したものをいくつも兼ね備えている。ファーストの初登場時点では、21歳の若き少尉という設定で、化け物じみた強さがあった。この強さの理由はアニメでの唐突な出現では計れなかった点も多いが、ORIGINで語られる父の暗殺以降の、幼少期から青年期の出来事を追うと、強い復讐の意志力やカリスマ性など、納得できるところが多い。
シャアの復讐が凄いのは、ジオン公国軍に所属しながら、その上長や指導者であるザビ家の関係者を謀殺していくところにある。手始めに、士官学校時代の同期で親友でもあったザビ家の末弟、ガルマ・ザビを、策謀で憤死させる。
君はいい友人であったが、君の父上がいけないのだよ・・・。
戦争が進むにつれ、戦局やシャアによって一人一人死に追い込まれるザビ家の係累達。
最後には、実質的にジオン公国のナンバーワンとなった、ガルマの姉でもあるキシリア・ザビを仕留めることで、ザビ家への復讐は完結したかに見えた。
ガルマ、私の手向けだ。姉上と仲良く暮らせ。
しかし、シャアの復讐は、終わらない。むしろ、ますます激しく、迷走していく。
後のシリーズでは、いったい彼は何がしたいのか判らなくなっている時期も垣間見える。その迷いが、ガンダムシリーズの作品にゆらぎを生じさせ、より複雑で人間味のあるストーリーを、大きなスケールで織りなしていく。
その復讐心は、後にシャアを一軍事勢力の指導者まで上り詰めさせ、地球に小惑星を落下させるという大立ち回りに繋がっていく。ORIGINにおいても、なぜ彼がそこまでするのか思索するヒントは与えられる。大人になってもガンダムについて考え続けることを飽きさせない。
ランバ・ラルという漢
私の考えるもう一つのガンダムの魅力は、超人的な若者たちの前に立ちはだかる、戦争屋と呼ばれたランバ・ラルをはじめとした、渋い漢達の存在である。
ラルは、シャアが謀殺したガルマの弔い合戦をするためだけに、自身の小隊を率いて戦線に投入される。シャアの策謀の結果、アムロがガンダムと共に乗艦するに強襲揚陸艦ホワイトベースが、直接的にはガルマを討っているためである。戦時中にも関わらずジオン軍の作戦行動とは別枠の、ザビ家の私的遊軍のごとき、少し歪な立場にも甘んじる。
仔細あり、砂漠の街のレストランで会う、ラルとラルの内縁の妻クラウレ・ハモンとアムロ。
初対面にしてはご挨拶なやり取りのあと、ラルとアムロの間に緊張が走る。
いい目をしているな、それに度胸も良い。ますます気に入ったよ。
戦場を渡り歩いたラルの迫力に気おされ、後にアムロは思う。
ぼくは・・あの人に勝ちたい・・・
そして、ラル隊とホワイトベースの3度目の対決。
ジオン軍の中にも派閥争いがあり、戦線においては周囲の部隊の協力を得られず、ラル隊は十分な補給を受けられなかった。結果的に巨大な戦艦でもあるホワイトベースに、白兵で乗り込む形で、得意と意気込むゲリラ戦に臨む。艦内での戦闘中、乗艦していたセイラ(シャアの妹)と鉢合わせたラルは激しく動揺し、その油断をつかれて致命傷を負う。
この油断から、ラル隊の白兵突入戦は失敗。追い詰められたラルは、ホワイトベースの若いクルーたちを前に自決する。
見ておくがいい、戦いに敗れるとは、こういうことだ!
漢である。
この時ランバ・ラルは享年35歳。強力にラルを慕う部下を率い、内縁の妻を軍船のブリッジに帯同させるも、部下たちはその事を何も不自然に思わない。子供の頃もカッコいいと思ったが、40を過ぎて最早劣等感すら感じる。多くの古参ガンダムファンはその年齢を超えていると思うが、少なくとも私はまだ、ラルの域には達していない。
アニメ版ではここまでの描写であったが、ORIGINの「シャア・セイラ編」では、ラルやハモンが、ジオン・ダイクン暗殺後に担った大きな役割が語られている。即ち、父を暗殺されて遺児となった、幼少期のシャア(本名キャスバル)とセイラ(本名アルテイシア)の窮地を救う。また、何故ラルがここまで強い軍人となったか、モビルスーツの操縦に精通しているかと言うことへの回答も描かれている。
特に、戦争史にもあまり公にされてない、地球連邦とジオンのモビルスーツ同士の初直接対決「雨の海海戦」のエピソードは圧巻である。ジオン側5機のモビルスーツは、パイロット全員が、後の巨星、彗星、三連星と呼ばれるスター集団で、それはもう滅法強く、たまらないものがある。
ラルが何故あんなにカッコよくて強いのか良く判る「シャアセイラ編」だけでも、ガンダムファンで、ORIGINはまだ見てないという人には必見である。
私が年上の女性好きになって、姉さん女房と結婚した原因は、ハモンさんなのかマチルダさんなのか、その問題を片付けることは随分前に諦めた。まぁもう、どっちの歳も上回っちゃっいましたしね。全く、冨野監督も罪な方である。
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