中国vs.フィリピン
南沙諸島問題は明日の尖閣問題
南シナ海、南沙諸島の領有権問題でフィリピン、中国間の対立が深刻化する中、フィリピン政府は22日、中国との2国間交渉を打ち切り、国連海洋法条約に基づき中国を国際仲裁裁判所に提訴したことを発表した。
一説には埋蔵量200億トンとも言われる巨大油田や天然ガス田が発見された南沙諸島を巡っては、フィリピン、中国、ベトナム、台湾、マレーシア、ブルネイの6カ国が領有権を主張している。近年は中国艦船によるベトナム船への銃撃や拿捕が相次ぎ、特に緊張が高まっている。
フィリピンの地元紙記者が語る。
「南沙諸島の中核をなすスカボロー礁の一部は、すでに中国が実効支配しています。わずか120平方キロメートルほどのサンゴ礁と小島の集まりですが、ここを中国に完全に獲られれば、フィリピンは領海の38%、およそ50万平方キロもの排他的経済水域を失うことになります。この海域は世界有数の海運ルートであり、軍事的要衝でもあるため、フィリピン政府としては絶対に譲れないのです」
昨年4月からおよそ2カ月に及んだスカボロー礁での比中艦船の睨み合いの際は、中国人観光客の団体旅行のキャンセルや、フィリピン産バナナの検閲強化など、中国による厳しい経済制裁も行われた。
02年にASEAN諸国と中国の間で交わされた「南シナ海行動宣言」は、領有権問題の平和的解決を目的に合意されたが、法的拘束力を持たない。表面的にはASEANとの協調路線を取りつつ、自国の実効支配の既成事実化と海洋権益の保全を進めてきた中国の前に、フィリピン政府はなす術がないのだ。
「今回の提訴について、デルロサリオ外相が『フィリピンが中国との領海問題を平和的に解決するための政治的、外交的手段は尽きた』と語っています。圧倒的な軍事力を背景に南沙に侵出する中国への対抗手段が、フィリピンにはない。苦肉の策として仲裁裁判所の判断を仰ぐわけですが、南シナ海問題を台湾やチベット問題と同じ『核心的利益』と位置付ける中国が易々と引き下がるとは思えず、今後の動向から目が離せません」(同前)
中国のやり口は尖閣問題と酷似する点が多い。日本にとっても、対岸の火事ではない。