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まずは一局面を重点的に見よ! プロに学ぶテレビ観戦での試合分析術

 COACH UNITED編集部です。これから2回に分け、FELICE MONDO テクニカルダイレクター・林雅人さんによる「プロに学ぶテレビ観戦での試合分析術」と題した記事をお届けします。

 自チームのトレーニング、試合、それらへの準備、さらに他の仕事で収入を得なくてはならない、単純に地域にスタジアムがないetc......チーム作りの参考にしたいと思ってプロの試合を観戦しようと思っても、スタジアムでなくテレビ観戦に頼らざるを得ない人は多いと思います。まして海外の試合となれば、日本人コーチの90%以上はテレビ観戦となるでしょう。
 
 そこで問題となるのは、テレビが映す絶対的な限界。ボールにフォーカスしすぎる画が多いため全体像を見渡せない、特にボールの位置に対するDFラインの動き、FWの動き、ボール周辺の視野から外れた位置での選手の駆け引き、そういったものはどうしても見づらいところです。

 しかし、そうは言ってもすぐにスタジアム観戦の数が増やせるわけではありません。また、テレビ観戦が絶対的に劣っているというわけでもありません。要は、テレビというメディアの特性を活かし、そこから得られるものを最大化できれば良いわけです。

 では、そのコツをどうやって手に入れれば良いのでしょうか? 数多くの試合観戦術・分析術の書籍を刊行されているプロフェッショナルである林雅人さんにお話を伺いました。(取材日:2014年4月8日 取材・文:篠幸彦 図表:五百蔵 容)

<目次>

■キックオフ前のコツ
■開始10分間の見方のコツ
■前半10分以降の見方のコツ
■ミスの原因を見分ける
■ハーフタイム
■後半~試合終了
■倍速で観る

■キックオフ前のコツ

1)情報収集
 テレビ観戦では画面に映る範囲が狭く、ボール中心のカメラワークになるため全体がどうしても把握しづらくなります。現地観戦と比べて得られる情報が限られる中で、少しでも全体像を見るために「事前の情報収集」というのが大事な下準備になります。

・両チームの選手名
・直前の練習状況
・怪我人の状況
・フォーメーション
・サッカースタイル

 まずはこのような情報をインターネットなど通じて収集しておきましょう。

2)作戦ボードを使う
 フォーメーションや選手の動きなどは作戦ボードでマグネットを使いながら整理するのがオススメです。

3)片方のチームに絞って分析する
 両方を見ようとすると複雑でなかなか分析しきれなくなってしまいます。サッカーは片方を分析すればもう片方のことも必ず見えくるので、1チームに絞ってしっかりと観るようにしましょう。

4)個人ではなくチームの流れを見る
 テレビでは選手のアップが多く、つい局面のテクニック(ドリブル・パス・トラップ)ばかりを見がちですが、試合を分析するならば個人のテクニックよりもチームの流れを見る必要があります。

■開始10分間の見方のコツ

1)フォーメーションの確認
 試合開始の10分間は、調べた情報と照らし合わせながらフォーメーションや選手の実際の並びを確認します。また、事前に情報を集める時間がない場合にも、この10分で両チームのフォーメーション情報を収集しましょう。
 
 慣れていない人は"ゴールキック時"に確認することをオススメします。ゴールキックでは両チーム共にポジションにセットし直すことが多く、また、ペナルティエリアからハーウェライン付近までを引いたアングルで比較的ゆっくりとしたカメラワークで映すので、本来のフォーメーションの形を確認しやすくなります。

2)フォーメーションを噛み合わせる
 両チームのフォーメーションが確認できたらそれを噛み合わせて、どのポジションがマッチアップし、どのポジションが浮いてしまうのか、どこにスペースができるのかといった情報が俯瞰できるマッチアップ図を作ります。

【図a】林さん原稿用20140509_Risized.jpg

 常にこのマッチアップ図を頭の中に入れてピッチ全体を把握し、テレビの狭い画面の外の状況を予測しながら観ることが、テレビ観戦において大事なコツになります。

■前半10分以降の見方のコツ

 マッチアップ図ができたら攻撃と守備の2つの局面にわけて見ていきます。上級者であればさらに切り替えの2局面(攻→守、守→攻)の計4つの局面にわけて分析しますが、慣れてない人はまず攻・守2つの局面の整理をしていきましょう。  このとき、攻撃や守備、攻守の切り替えすべてを一度に見ようとするとうまく整理がつかなくなります。まずは1つの局面だけを重点的に見るようにし、ある程度整理ができたら他の局面を見るようにしましょう。前半で各局面を整理できることが目標になります。

<1>守備の局面の見方
 攻守の順番では相手のボールを奪うことができなければ攻撃は始まらないので、まずは守備の局面を分析していくと状況が整理しやすくなります。

○2つのラインを見る
 守備の局面でまず確認するポイントは、前線とDFラインの2つのラインがどこに設定されているか。高い位置から積極的にプレッシャーをかけているのか、あるいは引いて守備ブロックを敷いてスペースを消しているのか、そのブロックをどのエリアに敷いているのかなど、この2つのラインの位置でそのチームがボールを奪いたい守備のベースのエリアがわかります。また、2つのラインの距離を見ることで、コンパクトな陣形で守れているのか、間延びして相手にスペースを与えてしまっているのかも判断できます。

 その2つのラインの位置が確認しやすいのは、マッチアップ図の時と同じゴールキック時、または相手がDFラインでボールを回して攻撃をやり直している時です。こういう場面では守備側もポジションをセットし直すので、そのチームの守りの意図が見えやすい場面と言えます。

【図b】林さん原稿用20140509_Risized.jpg

○11人のポジションを見る
 次に守備時の11人のポジショニングを見ていきます。ボールと相手の位置によって選手たちは、少しずつポジションをズラしていくものです。そのポジショニングを画面に映る2対2や3対3といった局面で切り取り、マッチアップ図上で再現して各エリアの守備の図をボードに作っていきます。各選手のポジショニングが整理されれば、「画面の外の動き」が予測できるようになり、試合の全体像がかなり見やすくなります。
 
 そうすると流れのパターンが読めるようになり、画面が次の局面に切り替わった時にフリーの相手がいたら誰がマークするべきなのか、あるいはスペースを与えていたのなら誰がそこを埋めるべきなのかがわかるようになります。

【図c】林さん原稿用20140509_Risized.jpg
 
<次号に続く>
 
林雅人(はやし・まさと)
1977年岐阜県出身。FELICE MONDO INC.テクニカルディレクター。日本体育大学サッカー部卒業後、8年間オランダに滞在。03年にオランダ1部・フィテッセとプロ指導者として契約、日本人として初めてとなるオランダサッカー公認1級ライセンス、UEFA公認A級ライセンスを取得。帰国後はファンルーツアカデミーコーチ、東京都社会人1部東京23FCヘッドコーチ、J1浦和レッズ監督通訳を経て現職。著書に『サッカートレーニング・メニュー解体新書―練習のフォーカスポイントが一目でわかる!』など多数。

取材協力:FELICE MONDO(フェリーチェ モンド)株式会社 http://felice2005.com/

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