広島に投下された原爆で左足を失い、被爆体験を語り続けた故・沼田鈴子さんをモデルにした映画「アオギリにたくして」が25日、福岡市南区高宮3丁目のアミカスで上映される。親交のあったシンガー・ソングライターの中村里美さん(50)がプロデューサーとなって製作費を集め、兄の柊斗(しゅうと)さん(52)が監督を務めた。一人の被爆者をめぐる物語に、生きる悲しみや喜びを描いている。

 沼田さんは被爆後、焼け焦げたアオギリの幹から新芽が出ているのを見て、勇気を得たという。そんな体験を1980年代から語り続け、2011年に亡くなった。沼田さんの体験を朗読で紹介していた里美さんは「戦争体験のない私たちが沼田さんの思いを伝えたい」と映画づくりを思い立った。

 映画は、福島でアオギリの苗が植えられているのを見た週刊誌の女性記者が、アオギリにゆかりのある被爆者の女性に関心をもち、彼女の生涯を調べ始めるところから始まる。被爆後の悲しみや絶望、そこから被爆体験を語り始めるまでの心の揺れと、悩みを抱えながら生きる女性記者の心情とを重ねて描く。