「御侍史/御待史」?何それ、どう読むの?

[病院を知ろう!プロジェクト] 2009/05/29[金]
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 どんな業界にも慣習がある。部外者からは奇異に見えることでも、それに慣れきった人達の間では当たり前のものがある。医療分野での筆頭は、「御侍史/御待史」。「おんじし」と読む。これは医師の宛名書きに使う尊称(脇付)で、たとえば「佐藤様」とする代わりに「佐藤先生御侍史/御待史」と記す。「御侍史/御待史」以外に「御机下(おんきか)」も使われる。
 いずれも意味は同じで、「私ごときが先生に直接お手紙を書くなんてめっそうもないので、先生の秘書様(=御待史)宛てに、ものを申し上げます。」ということだ。もちろん本気で「どうぞ秘書様に」と思っているわけではない。みな平気で医師本人に直接手渡しているし、今どき執事が事務連絡を取り仕切っている医師なんて滅多にいない。

 それでも紹介状など、医師同士でやりとりする手紙では「御侍史/御待史」は一般的だ。特に、業者が医師に対してビジネス文書やメールを書くときには、徹底されている。「先生」だけでは足りない。医療“業界”では、患者さんがいないところでは、あまりに医師が「偉い」存在に祭り上げられてしまうこともある。業者側が勝手に腫れ物に触るがごとく接するからだ。
 何を隠そうQLifeも、初めて有名な医師にお会いする場合には緊張気味になる。仲介者の顔に泥を塗ってはいけないから、「とりあえず失礼のないように」と尊敬語・謙譲語で塗り固めたコミュニケーションをしてしまいがち。良くないことだ。

医師当人は、「御侍史/御待史」と呼ばれることにむしろ違和感

 では、当の本人達は、この特別な呼ばれ方をどう思っているのか。全国の医師300人に実際にアンケート調査で聞いてみた。
 意外にも51%が“違和感ある”と答えた。うち16%は“できれば止めてもらいたい”とさえ思っている。違和感を覚える率は、病院勤務医よりも開業医の方が、高い。ただし“慣習”は年を経るに従って慣れるものだ。30代は65%が違和感を覚えているが、50代以上では40%前後に減る。ただし、「数十年その文化に浸った人でも、4割が慣れないと答える」ということは、根本的に不自然な慣習であるとも言えるだろう。

医師同士なら、「御待史」も良い?

 では、同様の「御侍史/御待史」尊称(脇付)を、業者からではなく、「他の医師」から使われるケースについては、どう思っているのだろうか。結果を見ると、業者から呼ばれる時よりも、同業者から呼ばれる時の方が、特別尊称に違和感を覚える人が少なく、43%に減る。

 これはなぜだろうか?相手が医師の方が、プロ同士として尊敬の念が自然ということだろうか。あるいは、紹介状を書く際に「私が対処できない患者さんをどうぞ宜しくお願いします」という謙譲の念と、謹んで委ねる意味あいが込められるからだろうか。
 もしこの解釈が正しいとすると、「業者から呼ばれるとき」と「他の医師から呼ばれるとき」とで、“違和感”の差が大きな医師群の方が、より専門職意識が強いのかもしれない。科目別では「眼/耳鼻咽喉系」や「精神科系」に差が大きく、「女性」セグメントも差が大きい。

うわべの「御侍史/御待史」は、もう止めるとき

 「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」という言葉がある。尊敬しているフリだけすること。これは医療業界に限らず、私達の日常生活でも頻繁に見られる。謙譲は日本人の美徳だが、「とりあえず控え目に振舞っておこう」「機嫌を損ねないように」と保身の盾として過剰に敬語を使ってしまうケースも多い。
 「ご覧になられる」「おっしゃられる」といった2重敬語は、文法的にも間違い。過ぎたるは及ばざるが如しで、やたらに敬語を使っている時は、相手を本気で尊敬していないことが多い。敬語で相手と心理的距離を作ってしまうと、逆にその人の素晴らしさを見つめたり、敬意を払う意識は薄れてしまう。勿体ないことだ。

 医師のなかには、本当に頭の下がる取り組みをしている人が大勢いる。高い志と慈愛を兼ね備えて休日なく地域を駆け巡ったり、社会のために全国で啓蒙活動を重ねる人もいる。こうした人の内面に触れた時には、「わー、なんて素晴らしい人だ」と気持ちよく尊敬できる。医師同志で尊称しあうのならともかく、業者など周囲の人がうわべだけで使う「御待史」はその芽を摘んでいる可能性がある。

●文中の調査の詳細レポートは、以下(pdfファイル):
病院での呼び方、呼ばれ方(2009年4月医師調査)

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