作家でごはん!鍛練場

『無職転生 - 異世界行ったら本気だす -』

理不尽な孫の手著

実力がどの程度なのか知りたい。
本音を聞かせて下さい。

 俺は34歳住所不定無職。
 人生を後悔している真っ最中の小太りブサメンのナイスガイだ。
 つい三時間ほど前までは住所不定ではない、
 ただの引きこもりベテランニートだったのだが、
 気付いたら親が死んでおり、
 引きこもっていて親族会議に出席しなかった俺はいないものとして扱われ、
 兄弟たちの奸計にハマり、見事に家を追い出された。

 床ドンと壁ドンをマスターし、
 家で傍若無人に振舞っていた俺に味方はいなかった。

 葬式当日、ブリッヂオ○ニー中にいきなり喪服姿の兄弟姉妹たちに部屋に乱入され、絶縁状を突きつけられた。
 無視すると、弟が木製バットで命よりも大切なパソコンを破壊しやがった。
 半狂乱で暴れてみたものの、兄は空手の有段者で、逆にぼっこぼこにされた。
 無様に泣きじゃくって事無きをえようとしたら、着の身着のまま家から叩き出された。


 ズキズキと痛む脇腹(多分肋骨が折れてる)を抑えながら、とぼとぼと町を歩く。
 家を後にした時の、兄弟たちの罵詈雑言が未だ耳に残っている。
 聞くに堪えない暴言だ。
 心は完璧に折れていた。
 俺が一体なにをしたっていうんだ。
 親の葬式をブッチして無修正ロリ画像(兄の娘を風呂に入れた時にデジカメで撮りました)でオ○ってただけじゃないか……。

 これからどうしよう。

 いや、頭ではわかっている。
 バイトか何かを探して、住む場所を見つけて、食べ物を買うのだ。

 どうやって?

 仕事を探す方法がわからない。
 いや、なんとなくだが、ハロワにいけばいいということはわかる。
 が、伊達に十年以上引きこもっていたわけじゃない。
 ハロワの場所なんかわかるわけもなし。
 それに、ハロワにいっても仕事を紹介されるだけだと聞いたことがある。
 紹介された所に履歴書を持っていき、面接をうけるわけだ。
 この、エッチな液体で袖とかカピカピなって、ところどころに血が付いた服で面接を?
 受かるわけがない。
 俺だったらこんなクレイジーな格好した奴は絶対に採用しない。
 共感は覚えるかもしれないが、絶対に採用はしない。

 そもそも履歴書の売っている店もわからない。
 文房具屋か?
 コンビニか?
 コンビニぐらいは歩いてればあるかもしれないが、金は持っていない。

 もし、それらがクリアできたとしよう。
 運よく金融機関か何かで金を借りることが出来て、服を新調して、履歴書と筆記用具を買ったとしよう。

 履歴書というものは住所が無いと書けない、と聞いたことがある。


 詰んだ。
 ここにきて、俺は人生が完全に詰んだのを自覚した。

「………はぁ」

 雨が降ってきた。
 もう夏も終わり、肌寒くなってくる時期だ。
 冷たい雨は何年も着古したスウェットに難なく染みこみ、容赦なく体温を奪った。

「………やりなおせればな」

 思わずそんな言葉が溢れる。
 俺だって、生まれた時からクズ人間だったわけじゃないのだ。
 そこそこ裕福な家庭の三男として生まれた。兄兄姉弟。5人兄弟の4番目。
 小学生の頃は、この歳にしては頭がいいと褒められて育った。
 勉強は得意じゃなかったが、ゲームがうまくて、運動もできるお調子者。
 クラスの中心だった。
 中学時代にはパソコン部に入り、雑誌を参考に、お小遣いを貯めて自作PCを作成。
 パソコンのパの字も知らなかった家族からは、一目も二目も置かれていた。

 人生が狂ったのは高校……いや、中学3年からだ。
 パソコンにかまける余りに、勉強をおろそかにした。
 勉強なんか、将来に必要ないと思っていた。役に立たないと思っていた。
 その結果、県内でも最底辺と噂の超絶バカ高校に入学するハメになった。
 そこでも、俺はイケる気でいた。
 やればできる俺は、他の馬鹿どもとは出来がちがうんだと思っていた。

 あの時の事は、今でも覚えている。

 購買で昼食を買おうとして並んでいた時、いきなり横入りしてきた奴がいた。
 俺は正義感ぶってそいつに文句を言った。
 当時、変な自尊心と、中二病心あふれる性格をしていたためにやってしまった暴挙だ。
 相手は先輩で、この学校でも一、二を争うほど危ない奴だった。

 放課後、俺は顔が腫れ上がるまで殴られ、全裸で校門に磔にされた。
 写真もいっぱい取られた。
 もし俺が美少女だったら、
 さんざんレイプされた挙句、写真を取られて脅されて性奴隷にでもされただろう。
 残念ながら、俺は小太りのキモオタだった。
 その時の写メは、いとも容易く学校中にバラまかれた。
 何の交渉もなく、ただ面白半分で。
 ヒエラルキーは一瞬にして最下層に落ちて、ホーケーという仇名を付けられてからかわれた。
 一ヶ月も学校に通わないうちに不登校になって引きこもった。

 父や兄は、そんな俺を見て、
 勇気を出せだの、頑張れだのと無責任な言葉を投げつけた。

 どうしろと言うんだ。
 あんな状況で、誰が学校にいけると言うんだ。

 俺は引きこもった。
 断固として引きこもった。
 同年代の知り合いが、みんな俺の全裸磔と股間部のアップの写真を見て笑っていると思っていた。

 ずっと引きこもってネトゲをやった。
 たまにP2Pソフトでエロゲーやエミュレータ、漫画を落としたりした。
 ネットとパソコンがあれば、時間はいくらでも潰せた。
 ネットで影響を受けて、色んな事に興味を持ち、色んな事をやった。
 プラモを作ったり、フィギュアを塗装してみたり、ブログをやってみたり。
 母はそんな俺を応援するがごとく、ねだればいくらでも金を出してくれた。
 が、どれも一年以内には飽きた。
 自分より上の人間を見て、やる気が失せたのだ。

 傍から見れば、ただ遊んでいるだけに見えただろう。
 けれど、一人だけ時間に取り残され、暗い殻に閉じこもってしまった俺には、他に出来る事がなかった。
 いいや、今にして思えば、そんなのは言い訳だ。
 ただ遊んでいただけだ。
 まだしも、漫画家になると言い出してヘタクソなWEB漫画を開始したり、
 ラノベ作家になると言い出して小説を投稿してみたほうがマシだったろう。
 俺と似たような境遇でそうしている奴はたくさんいた。
 そんな奴らを、俺は馬鹿にした。
 彼らの創作物を見て鼻で笑って、「クソ以下だな」と評論家気取りで批判していただけだ。
 自分は何もやっていないのに……。


 戻りたい。
 出来れば最高だった小学か、中学時代に。
 いや、一年でも二年でもいい。
 ちょっとでも時間があれば、俺には何かができたはずなんだ。
 どれも中途半端でやめたから、どれも途中から始められる。
 本気を出せば、一番にはなれなくても、プロにはなれたかもしれない。

 いや、よそう。
 無駄だ。
 無駄無駄。
 こんなことを考えるのは無駄なのだ。



「ん?」

 激しい雨の中、俺は誰かの言い争う声を聞いた。
 喧嘩だろうか。
 嫌だな、かかわり合いになりたくないな。
 そう思いつつも、足はまっすぐにそちらに向かっていた。

「――だから、あんたが――」
「おまえこそ――」

 見つけたのは、痴話喧嘩の真っ最中っぽい三人の高校生だ。
 男二人に女が一人。
 いまどき珍しいことに、詰襟とセーラー服。
 どうやら修羅場らしく、一際背の高い少年と少女が何かを言い争っていた。
 もう一人の少年が、二人を落ち着かせようと間に入っているが、
 喧嘩中の二人は聞く耳を持たない。

(ああ、俺にもあったな、あんなの)

 中学時代には、そこそこ可愛い幼馴染がいた。
 そこそこ可愛いといっても、クラスで4番目か5番目ぐらい。
 陸上部だったので髪型はベリィショート。
 町を歩いて10人とすれ違ったら、二人か三人ぐらいは振り返るかな、そんな容貌だ。
 当時の俺は完全に2次元にハマっていた。
 陸上部といえばポニテと言って憚らなかった。
 そんな俺にとって、彼女はブスもいい所だった。

 けど、家も近く、小中と同じクラスになる事も多かったので、
 会話をする機会は多かったし、口喧嘩をしたりしたものだ。
 中学になっても、何度か一緒に帰ったりもした。
 惜しいことをしたもんだ。
 今の俺なら、中学生・幼馴染・陸上部、それらの単語だけで3発はイケる。


 ちなみに、その幼馴染は七年前に結婚したらしいと風の噂で聞いた。
 風の噂たって、リビングから聞こえてきた兄弟の会話だが。

 決して悪い関係じゃなかった。
 お互いを小さい頃から知っていたから、気兼ねなく話せていた。
 彼女が俺に惚れていたとかは無かったと思うが、
 もっと勉強してあの子と同じ高校に入っていれば、
 あるいは、同じ陸上部に入って推薦入学でもしていれば、
 フラグの一つも立ったかもしれない。
 本気で告白すれば、付き合う事ぐらいは出来たかもしれない。

 そして、放課後に誰もいない教室でエロいことをしたり、
 彼らのように、帰り道で喧嘩したりするのだ。
 まさにエロゲーの世界。

(そう考えるとあいつらマジリア充だな。爆発し……ん?)

 と、俺はその瞬間に気付いた。
 トラックが一台、三人に向かって猛スピードで突っ込んできているのを。
 同時に、トラックの運転手がハンドルに突っ伏しているのを。

 居眠り運転。

 三人はまだ気づいていない。


 !!!!!



「ぁ、ぁ、ぶ、危ねぇ、ぞぉ」

 叫んだつもりだったが、十年以上もロクに声を出していなかった俺の声帯は、
 肋骨の痛みと雨の冷たさでさらに縮こまり、
 情けなくも震えた声しか発せず、雨音にかき消された。

 助けなきゃ、と思った。
 俺が、なんで、とも思った。

 もし助けなければ、五分後にきっと後悔するんだろうと直感した。
 凄まじい速度で突っ込んでくるトラックにハネられ、
 ぐちゃぐちゃに潰れる三人を見て、後悔するんだろうと直感した。
 助けておけばよかった、と。

 だから助けなきゃ、と思った。
 俺はもうすぐ、きっとどこかそのへんで野垂れ死ぬだろうけど、
 その瞬間ぐらいは、せめてささやかな満足感を得ていたいと思っていた。
 最後の瞬間まで後悔していたくないと思った。

 転げるように走った。

 十数年以上もロクに動いていなかった俺の足はいうことを聞かない。
 もっと運動をしておけばと、生まれて初めて思った。

 折れた肋骨が凄まじい痛みを発し、俺の足を止めようとする。
 もっとカルシウムを取っておけばと、生まれて初めて思った。

 痛い。
 痛くてうまく走れない。
 けれども走った。
 走った。
 走れた。

 トラックが目の前に迫っているのに気づいて、喧嘩していた少年が少女を抱き寄せた。
 もう一人の少年は、後ろを向いていたため、まだトラックに気づいていない。
 唐突にそんな行動にでた事に、きょとんとしている。

 俺は迷わず、まだ気づいていない少年の襟首を掴んで、渾身の力で後ろに引っ張った。
 少年は体重100キロの俺に引っ張られ、トラックの進路の外へと転がった。

 よし。
 あと二人。

 そう思った瞬間、俺の目の前にトラックがいた。
 安全な所から、腕だけ伸ばして引っ張ろうと思ったのだが、
 人を引っ張れば、反作用で自分が前に出る。
 当然のことだ。
 俺の体重が100キロを超えていようと関係ない。
 全力疾走でガクガクしていた足は、簡単に前に出てしまった。

 トラックに接触する瞬間、何かが後ろで光った気がした。

 あれが噂の走馬灯だろうか。一瞬すぎてわからなかった。
 早すぎる。
 中身の薄い人生だったという事か。

 俺は自分の五十倍以上の重量を持つトラックに跳ね飛ばされ、コンクリートの外壁に体を打ち付けた。

「かッハ……!」

 肺の中の空気が一瞬で吐き出される。
 全力疾走で酸素を求める肺が痙攣する。
 声も出ない。
 だが、死んではいない。
 たっぷりと蓄えた脂肪のおかげで助かった……。

 と思ったが、トラックはまだ迫ってきていた。

 俺はトラックとコンクリートに挟まれて、トマトみたいに潰れて死んだ。


 目覚めると、金髪の若い女性が俺をのぞき込んでいた。
 美少女……いや美女と言って良いだろう。

(誰だ?)

 隣には、同じくまだ年若い茶髪の男性がいて、ぎこちない笑みを俺に向けている。
 強そうでワガママそうな男だ。筋肉が凄い。
 茶髪でワガママそうとか、
 そういうDQNっぽいのは見た瞬間に拒否反応が出るはずなのだが、
 不思議と嫌悪感はなかった。
 恐らく、彼の髪が染めたものではないからだろう。
 綺麗な茶髪だった。

「―――・・――・・・・」

 女性が俺を見て、にっこり笑って何かを言った。
 何を言っているのだろうか。
 なんだかボンヤリして聞き取りにくいし、全然わからない。
 もしかして、日本語じゃないのか?

「――――・・・・・―――・・・」

 男の方も、ゆるい顔で返事を返す。
 いやほんと、何言ってるのかわからない。

「――・・――・・・」

 どこからか、三人目の声が聞こえる。
 姿は見えない。

「あー、うあー」

 体を起こして、ここはどこで、あなた方は誰かを聞こうとした。
 引きこもってたとはいえ、別にコミュ障ってわけじゃないから、
 それぐらいは出来ると思った。
 のだが、口から出てきたのは、うめき声ともあえぎ声とも判別のつかない音だった。

 体も動かない。
 指先や腕が動く感触はあるのだが、上半身が起こせない。

(もしかして、事故の後遺症で……?)

 嫌な予感が脳裏を掠める。
 あれだけの大事故だったのだ、何日も意識不明で、今ようやく目覚めたにちがいない。
 全身打撲、内臓破裂、脊髄損傷、半身麻痺って所だろうか。
 後遺症も残るだろう。
 言葉がわからないのは、日本では助けられる医者がいなかったとか、そんな感じだろうか。

「・・・・・―――・・・―――」

 男が心配そうな顔を俺に向け、何かを言う。

「――・・・・―――」

 なんだろう。後遺症のことだろうか。

 それにしても、入院費用は誰が払ったのだろうか。
 まさか、俺を追い出した兄弟たちが?
 いや、そんなまさかだ。奴らが払ったとは思えない。
 むしろ奴らは、俺なんて死んだほうがいいと思っているだろう。
 葬式ぐらいはやってくれるかもしれないが、
 俺をのけものに遺産を三人で山分けするような守銭奴だ。
 葬式代だってケチるだろうし、入院なんてしたら見て見ぬふりをするに違いない。

 じゃあ、誰が……?

 ああそうだ、一人だけ引っ張りだすことに成功していたから、
 彼が命の恩人として俺を助けてくれたのかも………。

「・・・―――・・・・・・」

 と、思ったら男に抱き上げられた。

 マジかよ、体重百キロ超の俺をこうも簡単に……。
 いや、何十日も寝たきりだったのかもしれないし、体重は落ちているか。
 あれだけの事故だ。手足が欠損してる可能性も高い。
 死んだと思って目が覚めたら達磨。

(生き地獄だなぁ……)


 物心ついた初日。
 俺はそんな事を考えていたのだった。


---


 一ヶ月の月日が流れた。


 どうやら俺は生まれ変わったらしい。
 その事実が、ようやく飲み込めた。

 俺は赤ん坊だった。
 抱き上げられて、頭を支えてもらい自分の体が視界にはいることで、ようやくそれを確認した。
 どうして前世の記憶が残っているのかわからないが、残っていて困る事もない。
 記憶を残しての生まれ変わり。
 誰もが一度はそういう妄想をする。
 まさか、その妄想が現実になるとは思わなかったが……。

 目が覚めてから最初に見た男女が、俺の両親であるらしい。
 年齢は二十代前半といった所だろうか。
 前世の俺よりも明らかに年下だ。
 34歳の俺から見れば、若造といってもいい。
 そんな歳で子供を作るとは、まったく妬ましい。

 最初から気付いてはいたが、どうやらここは日本ではないらしい。
 言語も違うし、両親の顔立ちも日本人ではない、服装もなんだか民族衣装っぽい。

 家電製品らしきものも見当たらない(メイド服きた人が雑巾で掃除してた)し、食器や家具なんかも粗末な木製だ。先進国でないだろう。
 明かりも電球ではなく、ロウソクやカンテラを中心に使っている。
 もっとも、彼らが特別に貧乏で電気代も払えないという可能性もある。

 ……もしかして、その可能性は高いのか?
 メイドっぽい人がいるから、てっきりそれなりに金があるのかと思ったが、
 彼女が、父か母の姉妹と考えれば、なにもおかしい事はない。家の掃除ぐらいするだろう。

 確かにやり直したいとは思ったが、電気代も支払えないほど貧乏な家に生まれるとは……。


 でも、ただで美女の母乳を吸えるのは最高だ。
 体が成長していないせいか、
 それとも相手が母親であるせいか、
 まったく興奮はしなかったが……。


---

 
 半年の月日が流れた。


 半年も両親の会話を聞いていると、言語もそれなりに理解できるようになってきた。
 英語の成績はあまりよくなかったのだが、やはり自国語に埋もれていると習得が遅れるというのは本当らしい。
 それとも、この身体の頭の出来がいいのだろうか。
 まだ年齢が若いせいか、物覚えが異常にいい気がする。


 この頃になると、俺もハイハイぐらいは出来るようになった。
 移動できるというのは素晴らしい事だ。
 身体が動くという事にこれほど感謝したことはない。

「眼を放すとすぐにどこかにいっちゃうの」
「元気でいいじゃないか。
 生まれてすぐの頃は全然泣かなくて心配したもんだ」
「今も泣かないのよねぇ」

 両親はそんな風に言っていた。
 さすがに腹が減った程度でビービー泣くような歳じゃない。
 もっとも、シモの方は我慢してもいずれ漏らすので、遠慮せずぶっ放させてもらっているが。


 ハイハイとはいえ、移動できるようになると、色んな事がわかってきた。

 まず、この家は、裕福だ。
 建物は木造の二階建てで、部屋数は五以上。メイドさんを一人雇っている。
 メイドさんは最初は俺の叔母さんかとも思ったが、明らかに顔立ちが違った。

 立地条件は、田舎だ。
 窓から見た景色からは、のどかな田園風景が見えた。
 他の家はまばらで、一面の小麦畑の中に、2~3軒見える程度。
 かなりの田舎だ。
 電柱や街灯の類は見えない。近くに発電所が無いのかもしれない。
 外国では地面の下に電線を埋めると聞いたことがあるが、
 ならこの家で電気を使っていないのはおかしい。

(さすがに田舎すぎるなぁ。
 文明の波に揉まれてきた俺にはちょっと……
 生まれ変わってもパソコンぐらい触りたいじゃん)



 などと思っていたのは、ある日の昼下がりまでだ。

 することが無いのでのどかな田園風景でも見ようと思った俺は、
 いつも通り椅子によじ登り、窓の外を見てギョッとした。

 父親が庭で剣を振り回していたからだ。

(ちょ、え? 何やってんの?)

 いい年してそんなの振り回しちゃうようなのが俺の親父なわけ?
 中二病なわけ?

(あ、やべ……)

 驚いた拍子に椅子から滑った。
 未熟な手は椅子を掴んでも身体を支えることが出来ず、重い後頭部から地面へと落ちていく。

「キャア!」

 どしんと落ちた瞬間、悲鳴が聞こえた。
 見れば、母親が洗濯物を取り落とし、口に手を当てて真っ青な顔で俺を見下ろしていた。

「ルディ! 大丈夫なの!?」

 母親は慌てて駆け寄ってきて、俺を抱き上げた。
 視線が絡むと、安堵した顔になって胸をなでおろした。

「……ほっ、大丈夫そうね」

(頭を打ったときは、あんまり動かさないほうがいいんだぜ、奥さん)

 と心の中で注意してやる。
 あの慌てようを見るに、そうとう危ない落ち方をしたのだろう。
 後頭部からいったしな、アホになったかもしれん。あんま変わらんか。
 てか、後頭部がズキズキする。
 まあ、一応は椅子に掴まろうとしたし、勢いは無かった。
 母親があまり慌てていない所を見ると、血は出ていないようだ。
 たんこぶ程度だろう。

 母親は注意深く俺の頭を見ていた。
 傷でもあったら一大事だと言わんばかりの表情をしている。
 そして最後に、俺の頭に手を当てて、

「念のため………
 神なる力は芳醇なる糧、力失いしかの者に再び立ち上がる力を与えん
 『ヒーリング』」

 吹きそうになった。
 おいおい、これがこの国の「イタイのイタイのとんでけ」かよ。
 それとも、剣を振り回す父親に続いて母親の方も中二病か?
 戦士と僧侶で結婚しましたってか?

 と、思ったのもつかの間。
 母親の手が淡く光ったと思った瞬間、一瞬で痛みが消えた。

(………え?)

「さ、これで大丈夫よ。
 母さん、これでも昔はちょっとは名の知れた冒険者だったんだから」

 剣、戦士、冒険者、ヒーリング、詠唱、僧侶。
 そんな単語がぐるぐると俺の中を回っていた。
 なんだ、いまの。
 何したの?

「どうした?」

 母親の悲鳴を聞きつけて、窓の外から父親が顔をのぞかせた。
 剣を振り回していたせいか、汗をかいていた。

「聞いてあなた、ルディったら、椅子の上になんかよじ登って……今日は危うく大怪我する所だったのよ」
「まぁまぁ、男の子はそれぐらい元気でなくっちゃ」

 ちょっとばかしヒステリックな母親と、それを鷹揚に流す父親。
 よく見る光景だ。
 だが、今回は後頭部から落ちたせいだろう、母親も譲らなかった。

「あのねあなた、この子はまだ生まれてから一年も経ってないんですよ。もっと心配してあげて!」
「そうは言ったってな。
 子供は落ちたり転んだりするものさ。そうやって丈夫になっていくものじゃないか。
 それに、怪我をしたなら、そのたびにおまえが治せばいい」
「でも、あんまり大怪我をされて治せなかったらと考えると心配で……」
「大丈夫だよ」

 父親はそう言って、母親と俺を一緒に抱きしめた。
 母親の顔が赤く染まる。

「最初は泣かなくて心配だったけど、こんなにヤンチャなら、大丈夫さ……」

 父親は母親にチュっとキスをした。
 おうおう、見せつけてくれるねお二人さん、ヒューヒュー。

 その後、二人は俺を隣の部屋で寝かせると、
 上の階へ移動して、俺の弟か妹を作る作業へと入っていった。
 二階に行ってもギシギシアンアン聞こえるから分かるんだよ、リア充め……。


(しかし、魔法か……)

 それから、俺は両親やお手伝いさんの会話に注意深く耳を傾けるようになった。
 すると、聞く単語に聞きなれないものが多い事に気付いた。
 特に、国の名前や領土の名前、地方の名前。
 固有名詞は聞いたことのないものしかなかった。
 もしかするとここは………。
 いや、もう断定していいだろう。

 ここは地球ではなく、別の世界だ。

 剣と魔法の異世界だ。



 ………うん。
 悪くない。
 年甲斐もなくワクワクする。
 そんな世界に記憶を持って転生できたのだ。
 これでワクワクしないやつはニートになんかならない。

 よし、決めた。

 俺はこの世界で本気で生きていこう。
 もう、二度と後悔はしないように。
 全力で。


 リーリャはアスラ後宮の近衛侍女だった。
 近衛侍女とは、近衛兵の性質を併せ持つ侍女の事である。
 普段は侍女の仕事をしているが、有事の際には剣を取って主を守るのだ。

 リーリャは職務には忠実であり、侍女としての仕事もそつなくこなした。
 しかし、剣士としては十把一絡げの才能しか持ち合わせていなかった。
 ゆえに、生まれたばかりの王女を狙う暗殺者と戦って不覚を取り、短剣を足に受けてしまうこととなった。
 短剣には毒が塗ってあった。王族を殺そうとするような毒である。
 解除できる解毒魔術の無い、厄介な毒である。
 すぐに傷を治癒魔術で治し、医者が解毒を試みたおかげで一命は取り留めたものの、後遺症が残ってしまった。
 日常生活を送る分には支障は無いが、全速力で走ることも、鋭く踏み込むこともできなくなった。
 リーリャの剣士生命はその日、終わりを告げた。

 王宮はリーリャをあっさりと解雇した。
 珍しい事ではない。リーリャも納得している。
 能力がなくなれば解雇されるのは当然だ。
 当面の生活資金すらもらえなかったが、
 後宮務めを理由に、秘密裏に処刑されなかっただけでも儲けものだと思わなければいけない。

 リーリャは王都を離れた。
 王女暗殺の黒幕はまだ見つかっていない。
 後宮の間取りを知っているリーリャは、自身が狙われる可能性があると深く理解していた。
 あるいは王宮はリーリャを泳がせて、黒幕を釣ろうとしていたのかもしれない。

 昔、なんで家柄もよくない自分が後宮に入れたのかと疑問に思ったが、
 今にして思えば、使い捨てになるメイドを雇いたかったのかもしれない。
 何にせよ、自衛のためにも、なるべく王都から離れる必要があった。
 王宮が餌として自分を放流したのだとしても、
 何も命じられていない以上、拘束力はない。
 義理立てする気もさらさらなかった。

 乗合馬車を乗り継いで、広大な農業地域が続く辺境、フィットア領へとやってきた。
 領主の住む城塞都市ロア以外は、一面に麦畑が広がる長閑な場所だ。
 リーリャはそこで仕事を探すことにした。
 とはいえ、足を怪我した自分には荒事は出来ない。
 剣術ぐらいなら教えられるかもしれないが、出来れば侍女として雇ってもらいたかった。
 そっちのほうが給料がいいからである。
 この辺境では剣術を使える者、教える者は数多くいるが、家の仕事を完璧に出来る教育された侍女は少ないのだ。
 供給が少なければ、賃金も上がる。
 だが、フィットア領主や、それに準じた上級貴族の侍女として雇われるのは危険だった。
 そうした人物は、当然ながら王都ともパイプを持っている。
 後宮付きの侍女近衛だったと知られると、政治的なカードとして使われる可能性もあった。
 そんなのはゴメンだ。
 あんな死にそうな目には、二度と遭いたくない。
 姫様には悪いが、王族の後継者争いは自分の知らない所で勝手にやってほしいものである。

 といったものの、賃金の安すぎる所では、家族へ仕送りもままならない。
 賃金と安全の二つを両立出来る条件は中々見つからなかった。


 一ヶ月かけて、各地を回った所、一つの募集に目が着いた。
 フィットア領のブエナ村にて、下級騎士が侍女を募集中。
 子育ての経験があり、助産婦の知識を持つ者を優遇する、と書いてある。

 ブエナ村はフィットア領の端にある、小さな村である。
 田舎中の田舎、ド田舎だ。
 不便な場所ではあるが、まさにそういう立地こそ自分は求めていたのだ。
 それに、雇い主が下級騎士とは思えないほど条件が良かった。
 何より、募集者の名前に見覚えがあった。

 パウロ・グレイラット。
 彼はリーリャの弟弟子である。
 リーリャが剣を習っていた道場に、ある日突然転がり込んできた貴族のドラ息子だ。
 なんでも父親と喧嘩して勘当させられたとかで、道場に寝泊まりしながら剣を習い出した。
 流派は違えども、剣術を家で習っていた事もあり、彼はあっというまにリーリャを追い越した。
 リーリャとしては面白くなかったが、今となっては自分に才能がなかっただけだと諦めている。

 才能溢れるパウロはある日、冒険者になるといって道場を飛び出していった。
 嵐のような男だった。

 別れたのは七年ぐらい前になるか。
 あの時の彼が、まさか騎士になって結婚までしているとは……。

 彼がどんな波瀾万丈の人生を送ってきたかは知らないが、リーリャの記憶にあるパウロは決して悪いヤツではなかった。
 困っているといえば助けてくれるだろう。
 ダメなら昔のことを持ちだそう。
 交渉材料となる逸話はいくつかある。
 リーリャは打算的にそう考えて、ブエナ村へと赴いた。

 パウロはリーリャを快く迎えてくれた。 
 奥方のゼニスがもうすぐ出産という事で、焦っていたらしい。

 リーリャは王女の出産と育成に備えてあらゆる知識と技術を叩きこまれたし、顔見知りかつ出自もハッキリしているということで、身元も安全。
 大歓迎だった。
 賃金も予定より多く払ってくれるというので、リーリャとしても願ったり叶ったりだった。


 子供が生まれた。
 難産でもなんでもない、後宮でした練習通りの出産だ。
 何も問題は無かった。
 スムーズにいった。

 なのに、生まれた子供は泣かなかった。

 リーリャは冷や汗をかいた。
 生まれてすぐに鼻と口を吸引して羊水を吸い出したものの、赤子は感情のない顔で見上げているだけで、一声も発しない。
 もしや、死産なのか、そう思うほどの無表情だ。
 触ってみると、暖かく脈打っていた。
 息もしている。
 しかし、泣かない。
 リーリャの心中に、先輩の近衛侍女から聞いた話がよぎる。
 生まれてすぐに泣かない赤子は、異常を抱えている事が多い。
 まさかと思った次の瞬間、


「あー、うあー」

 赤子がこちらを見て、ぼんやりした表情で何かを呟いた。
 それを聞いて、リーリャは安心した。
 何の根拠も無いが、なんとなく大丈夫そうだ、と。


---


 子供はルーデウスと名付けられた。

 不気味な子供だった。
 一切泣かないし、騒がない。
 身体が弱いかもしれないが、手間がかからなくていい。
 などと、思っていられたのは、最初だけだった。

 ルーデウスははいはいが出来るようになると、家中のどこにでも移動した。
 家中の、どこにでも、だ。
 炊事場や裏口、物置、掃除道具入れ、暖炉の中……などなど。
 どうやって登ったのか、二階にまで入り込んだこともあった。

 とにかく眼を離すと、すぐにいなくなった。
 だが、なぜか必ず家の中で見つかった。
 ルーデウスは、決して家の外に出ることはなかった。
 窓から外を見ている時はあるが、まだまだ外は怖いのか。

 リーリャがこの赤ん坊に本能的な恐怖を感じるようになったのは、いつからだろうか。

 眼を離していなくなり、探して見つけ出した時だろうか。
 大抵の場合、ルーデウスは笑っていた。

 ある時は台所で野菜を見つめて、
 ある時は燭台のろうそくに揺れる火を見つめて、
 また、ある時は洗濯前のパンツを見つめて、
 ルーデウスは口の中で何かをブツブツと呟いては、気持ち悪い笑みを浮かべて笑うのだ。

 それは生理的嫌悪感を覚える笑みだった。

 リーリャは後宮に務めていた頃、任務で何度か王宮まで足を運んだのだが、その時に出会った大臣が浮かべる笑みによく似ていた。
 禿頭をテカらせて、デップリと太った腹を揺らしながら、リーリャの胸を見て浮かべる笑みに似ているのだ。生まれたばかりの赤ん坊が浮かべる笑みが。

 特に、恐ろしいのはルーデウスを抱き上げた時だ。

 ルーデウスは鼻の穴を膨らませて、
 口の端を持ち上げて、
 鼻息も荒く、
 胸に顔を押し付けてくる。

 そして喉がひくつかせて、
 笑い自体を隠すように、
 「フヒッ」とも「オホッ」の中間ぐらいの奇妙な声で笑うのだ。

 その瞬間、ゾッとする悪寒が全身を支配する。
 胸に抱く赤ん坊を、思わず地面に叩きつけたくなるほどの悪寒が。

 赤ん坊の愛らしさなど欠片もない。
 この笑みは、ただひたすらにおぞましい。
 若い女の奴隷をたくさん買い入れているという噂の大臣と同じ笑み。
 それを生まれたばかりの赤ん坊がするのだ。
 比べ物にならないぐらい不快で、赤ん坊相手に身の危険すら感じてしまう。

 リーリャは考えた。
 この赤ん坊は何かがおかしい。
 もしかすると、何か悪いモノでも憑いているのかもしれない。
 あるいは、呪われているのかもしれない、と。

 思い立ったリーリャは、居てもたってもいられない気持ちになった。
 道具屋へ走り、なけなしの金を使って必要なものを購入。
 グレイラット家が寝静まった頃、故郷に伝わる魔除けを行った。
 もちろん、パウロらには無断でだ。

 翌日、ルーデウスを抱き上げて、リーリャは悟る。
 無駄だった、と。

 相変わらずの気持ち悪さだった。
 赤ん坊がこんな顔をしているというだけで不気味だった。
 ゼニスも「あの子ってお乳を上げる時に、舐めるのよねぇ……」などと言っていた。
 とんでもないことだと思う。

 パウロも女に目がない節操無しだが、こんなに気持ち悪くは無い。
 遺伝としてもさすがにおかしい。

 リーリャは思い出す。
 ああ、そういえば、後宮でこんな話を聞いたことがある、と。
 かつて、悪魔に憑かれたアスラの王子が、悪魔復活のために、夜な夜な四つん這いで後宮を動きまわる事件があったという。
 そして、それと知らずに、見つけて迂闊にも抱き上げてしまった侍女を、王子は後ろ手に隠したナイフで心臓を一突きにして殺してしまったのだ。

 なんて恐ろしい。
 ルーデウスはソレだ。
 間違いない。
 絶対そういう悪魔だ。
 今は大人しくしているが、いずれ覚醒し、
 家全体が寝静まった頃に一人、また一人と……。

 ああ……早まった。
 明らかに早まった。
 こんな所に雇われるんじゃなかった。
 いつか絶対襲われる。

 ………………リーリャは迷信を本気で信じるタイプだった。




 最初の一年ぐらいは、そんな風に怯えていた。
 しかし、いつからだろうか。
 予測できなかったルーデウスの行動がパターン化された。
 神出鬼没ではなくなり、二階の片隅にあるパウロの書斎に篭るようになった。

 書斎といっても、何冊か本があるだけの簡素な部屋だ。
 ルーデウスは、そこに篭って出てこない。

 ちらりと覗いてみると、本を眺めてブツブツと何かを呟いている。
 意味のある言葉ではない。
 ないはずだ。
 少なくとも、中央大陸で一般的に使われている言語ではない。
 言葉を喋るのもまだ早い。
 文字なんてもちろん教えていない。
 だから 赤ん坊が本を見て、適当に声を出しているだけだ。
 そうでなければおかしい。

 だが、リーリャには、それがどうしても、意味のある言葉の羅列に聞こえて仕方がなかった。
 ルーデウスが本の内容を理解しているように見えて仕方がなかった。

 恐ろしい……。
 と、ドアの隙間からルーデウスを見ながら、リーリャは思う。
 しかし、不思議と嫌悪感はなかった。

 思えば、書斎に篭るようになってから、正体不明の不気味さや気持ち悪さは次第になりを潜めていった。
 たまに気持ち悪く笑うのは変わらないが、抱き上げても不快感を憶えなくなった。
 胸に顔も埋めないし、鼻息も荒くならない。
 どうして自分はこの子をおぞましいなどと思っていたのだろうか。
 最近はむしろ、邪魔してはいけないと思うような真摯さや勤勉さを感じるようになった。

 ゼニスも同じ事を感じたらしい。
 放っておいたほうがいいのでは、と相談された。

 異常な提案だと思った。
 生まれて間もない赤子を放っておくなど、人としてあるまじき行為だ。

 しかし、最近のルーデウスの瞳には知性の色が見えるようになった。

 数ヶ月前までは痴性しか感じられなかった瞳にだ。
 確固たる意志と、輝かんばかりの知性がだ。

 どうすればいいのか。
 知識はあれども経験の薄いリーリャには、判断が難しい。
 子育てに正解など無い、と言っていたのは、侍女近衛の先輩だったか、それとも故郷の母親だったか。

 少なくとも、
 今は気持ち悪くないし、
 不快にもならない、
 怖気も走らない。

 ならば、邪魔をして元に戻すこともない。
 放っておこう。

 リーリャは最終的に、そう判断したのだった。


 足腰もしっかりしてきて、二足歩行が出来るようになった。
 この世界の言葉も喋れるようになってきた。


---


 本気で生きると決めて、まずどうしようかと考えた。
 生前では何が必要だったか。
 勉強、運動、技術。
 赤ん坊に出来る事は少ない。
 せいぜい抱き上げられた拍子に胸に顔を埋めるぐらいだ。
 メイドにそれをやるとはあからさまに嫌そうな顔をする。
 きっとあのメイドは子供嫌いに違いない。

 運動はもう少し後でいいだろうと考えた俺は、
 文字を覚えるため、家の本を読み漁った。

 語学は大切だ。
 日本人は自国の識字率はほぼ100%に近いが、
 英語を苦手とする者は多く、外国に出ていくとなると尻込みする者も多い。
 外国の言葉を習得しているということが、一つの技能と数えられるぐらいに。

 よって、この世界の文字を覚えることを、最初の課題とした。

 家にあったのはたった5冊だ。
 この世界では本は高価であるのか、
 パウロやゼニスが読書家ではないのか、
 恐らく両方だろう。
 数千冊の蔵書を持っていた俺には信じられないレベルだ。
 もっとも、全部ラノベだったが。

 たった5冊とはいえ、文字を読めるようになるのには十分だった。
 この世界の言語は日本語に近かったため、すぐに覚えることが出来た。
 文字の形は全然違うのだが、文法的なものはすんなりと入ってきた。
 単語を覚えるだけでよかった。
 言葉を先に覚えていたのも大きい。
 父親が何度か本の内容を読み聞かせてくれたから、単語をスムーズに覚える事ができたのだ。
 この身体の物覚えの良さも関係しているのかもしれない。

 文字がわかれば、本の内容は面白い。
 かつては勉強を面白いと思うことなど、一生涯ないと思っていたが、よくよく考えてみれば、ネトゲの情報を覚えるようなものだ。
 面白くないわけがない。

 それにしても、あの父親は乳幼児に本の内容が理解できるとでも思っているのだろうか。
 俺だったからよかったものの、普通の一歳児なら大顰蹙ものだ。大声で泣き叫ぶぞ。



 家にあった本は下記の5冊だ。

・世界を歩く
 世界各国の名前と特徴が載ったガイド本。

・フィットアの魔物の生態・弱点。
 フィットアという地域に出てくる魔物の生態と、その対処法。

・魔術教本
 初級から上級までの攻撃魔術が載った魔術師の教科書。

・ペルギウスの伝説
 ペルギウスという召喚魔術師が、仲間たちと一緒に魔神と戦い世界を救う勧善懲悪のお伽話。

・三剣士と迷宮
 流派の違う三人の天才剣士が出会い、深い迷宮へと潜っていく冒険活劇。

 下二つのバトル小説はさておき、上三つは勉強になった。



 特に魔術教本は面白い。

 魔術の無い世界からきた俺にとって、魔術に関する記述は実に興味深いものである。
 読み進めていくと、いくつか基本的なことがわかった。

1.まず、魔術は大きく分けて3種類しかないらしい。

・攻撃魔術:相手を攻撃する
・治癒魔術:相手を癒す
・召喚魔術:何かを呼び出す

 この3つ。まんまだ。

 もっと色々なことができそうなものだが、
 教本によると、魔術というものは戦いの中で生まれ育ってきたものだから、
 戦いや狩猟に関係のない所ではあまり使われていないらしい。


2.魔術を使うには、魔力が必要であるらしい。

 逆に言えば、魔力さえあれば、誰でも使うことが出来るらしい。 
 魔力を使用する方法は2種類。

・自分の体内にある魔力。
・魔力の篭った物質から引き出す。

 どちらかだ。

 うまい例えが見つからないが、
 前者は自家発電、後者は電池みたいな感じだろう。

 大昔は自分の体内にある魔力だけで魔術を使っていたらしいが、
 世代が進むにつれて魔術も研究され、高難度になり、
 それに伴って消費する魔力が爆発的に増えていったそうだ。
 魔力の多い者はそれでもいいが、魔力の少ない者はロクな魔術が使えなかった。
 なので、昔の魔術師は自分以外のものから魔力を吸い出し、魔術に充てるという方法を思いついたのだ。


3.魔術の発動方法には二つの方法がある。

・詠唱
・魔法陣

 詳しい説明はいらないだろう。
 口で言って魔術を発動させるか、
 魔法陣を描いて魔術を発動させるか、だ。

 大昔は魔法陣のほうが主力だったらしいが、今では詠唱が主流だ。
 というのも、大昔の詠唱は一番簡単なものでも1分~2分ぐらい掛かったらしい。
 とてもじゃないが戦闘で使えるものではない。
 逆に魔法陣は一度書いてしまえば、何度か繰り返し使用できた。

 詠唱が主流になったのは、ある魔術師が詠唱の大幅な短縮に成功したからだ。
 一番簡単なもので5秒程度まで短縮し、攻撃魔術は詠唱でしか使われなくなった。
 もっとも、即効性を求められない上、複雑な術式を必要とする召喚魔術は、未だに魔法陣が主流だそうだ。


4.個人の魔力は生まれた時からほぼ決まっている。

 普通のRPGだとレベルアップする毎にMPが増えていくものだが、
 この世界では増えないらしい。
 全員が職業:戦士らしい。
 ほぼ、というからには多少は変動するようだが……。

 俺はどうなんだろうか。
 魔術教本には魔力の量は遺伝すると書いてある。
 一応、母親は治癒術を使えるみたいだし、ある程度は期待していいんだろうか。

 不安だ。
 両親が優秀でも、俺自身の遺伝子は仕事をしなさそうだし。



 とりあえず俺は、最も簡単な魔術を使ってみることにする。

 基本的に魔術教本には魔法陣と詠唱の両方が載っていたが、詠唱が主流らしいし、魔法陣を書くものもなかったので、そっちで練習することにする。
 術としての規模が大きくなると詠唱が長くなり、魔法陣を併用したりしなければいけないらしいが、最初は大丈夫だろう。

 熟練した魔術師は、詠唱がなくても魔術が使えるらしい。
 無詠唱とか、詠唱短縮ってやつだ。

 しかし、なぜ熟練すると詠唱なしで使えるようになるのだろうか。
 魔力の総量が変わらないということは、レベルアップしてもMPが増えるわけじゃないだろうし……。
 逆に、熟練度が上がると消費MPが減るんだろうか。
 いや、仮に消費MPが減った所で、手順が減る理由にはならないとか。

 ………まぁいいか。
 とりあえず使ってみよう。
 俺は魔術教本を片手に、右手を前に突き出して、文字を読み上げる。

「汝の求める所に大いなる水の加護あらん、
 清涼なるせせらぎの流れを今ここに、ウォーターボール」 

 血液が右手に集まっていくような感触があった。
 その血液が押し出されるようにして、右手の先にこぶし大の水弾が出来る。

「おおっ!」

 と、感動した次の瞬間、水弾はバチャリと落ちて、床を濡らした。
 教本には、水の弾が飛んでいく魔術と書いてあるが、その場で落ちた。
 集中力が切れると、魔術は持続しないのかもしれない。

 集中、集中……。
 血液を右手に集める感じだ。こう、こう、こんな感じ……うん。

 俺は再度右手を構え、先程の感覚を思い出しながら、頭でイメージする。
 魔力総量がどんだけあるかわからないが、そう何度も使えないと考えたほうがいい。
 1回1回の練習を全て成功させるつもりで集中するんだ。
 まず頭でイメージして、何度も何度も頭の中で繰り返して、それから実際やってみる。
 躓いたら、そこをまた頭でイメージする。
 脳内で完璧に成功するまで。

 生前、格ゲーでコンボ練習する時はそうしていた。
 おかげで俺は、対戦でもコンボをほとんど落としたことがない。
 だからこの練習法は間違っていない………と思いたい。

「すぅ……ふぅ……」 

 深呼吸を一つ。
 足の先、頭の先から、右手へと血液を送るような感じで力を溜めていく。
 そしてそれを、手のひらからポンと吐き出すような感じで……。
 慎重に慎重に、心臓の鼓動に合わせて、少しずつ。少しずつ……。
 水、水、水、水弾、水の弾、水の玉、水玉、水玉パンツ……。
 邪念が混じった、もう一回。
 ギュッとあつめてひねり出して水水水水…………。

「ハァッ!」

 と、思わず寺生まれの人みたいな掛け声を上げた瞬間、水弾ができた。

「おっ、え……?」

 ばちゃ。

「……………あ」

 驚いた瞬間、水弾はあっけなく落ちてしまった。

 しかし、今、詠唱しなかったよな?
 なんでだ……?

 俺がやった事と言えば、さっき魔術を使った時の感覚を、そのまま真似しただけだ。

 もしかして、魔力の流れを再現できれば、別に詠唱しなくてもいいのか?
 無詠唱ってそんな簡単にできるもんなのか?
 普通は上位スキルだろ?

「簡単に出来るんなら、詠唱ってのはなんの意味があるんだ?」

 俺のような初心者でも、無詠唱で魔術を発動させることが出来た。
 身体の魔力を手の先に集めて、頭の中で形を決める。
 それだけで、だ。
 なら、詠唱なんて必要ないだろう。
 みんなこうすればいい。

 ………ふむ。

 もしかすると、詠唱というのは魔術を自動化してくれるのではないだろうか。
 いちいち集中して全身から血液を集めるように念じなくても、言葉を発するだけで全てやってくれる。
 それだけの事なのではないだろうか。
 車のマニュアルとオートマのようなもので、実は手動でやろうと思えば出来るものなのではないだろうか。

 『詠唱すれば自動的に魔術を使ってくれる』。
 これの利点は大きい。

 まず第一に、教えやすい。
 体中の血管から血液を集めるような感じでー……と、説明するより、詠唱すれば誰でも一発で出来る方が、教えるほうも教えられる方も楽だ。
 そうして教えている間に段々と、『詠唱は必要不可欠なもの』となっていったのではないだろうか。

 第二に、使いやすい。
 言うまでもない事だが、攻撃魔術を使うのは戦闘中だ。
 戦闘中に目をつぶって、うぬぬー、と集中するより、早口で詠唱した方が手っ取り早い。
 全力疾走しながら精緻な絵を書くのと、
 全力疾走しながら早口言葉を言うの、どっちが楽かという事だ。

「人によっては前者の方が楽かもしれんが……」

 パラパラと魔術教本をめくってみたが、無詠唱の記述はなかった。
 おかしな話だ。
 俺がやった感じでは、そう難しくは無かった。
 俺に特別才能があるのかもしれないが、他の人がまったく使えないって事はないだろう。

 こう考えるのはどうだろう。

 魔術師は普通、初心者から熟練者まで、みんな詠唱で魔術を使い続けるのだ。
 何千回、何万回と使い続けるうちに身体が詠唱に慣れきってしまい、
 いざ無詠唱でやろうとしても、どうやればいいのかわからない。
 ゆえに、一般的ではないとされ、教本には書かれていない。

「おお、辻褄があってる!」

 てことは、今の俺は一般的ではないってことだ。
 すごくね?
 うまいこと裏ワザを使えた感じじゃなくね?

『まさか くらいむ の かたりすと を おらとりお なしで?』
『ただ ふつうに この かたりすと を つかって ちゃねる を ひらかせただけなのに』
 って感じじゃね?

 うっは、興奮してきた!

 ………。
 おっと、いかんいかん。
 ちょっと落ち着け、クールになれ。

 生前の俺はこの感覚に騙されてあんなことになったんだ。
 パソコンが人並み以上に出来ることで選民意識を持ってしまったがゆえに、調子こいて失敗したのだ。

 自重しよう自重。
 大切なのは、自分が他人より上だと思わないことだ。
 俺は初心者。
 初心者だ。
 ボウリング初心者が初投で運よくストライクをとれただけ。
 ビギナーズラックだ。
 才能があるとか勘違いしないで、ひたすら練習に励むべきだ。

 よし。

 最初に魔術を詠唱して唱えて、その感覚を真似して、ひたすら無詠唱で練習する。
 これでいこう。

「それじゃあもう一発」

 と、右手を前に出してみると、妙にだるい。
 しかも、なんか肩のあたりにズッシリと重いものが乗っている感じがする。

 疲労感だ。
 集中したせいだろうか。

 いや、俺もネトゲプロ(自称)の端くれ、必要とあらば不眠で六日間狩りをし続ける事もできた男だ。
 このぐらいで切れる集中力は持ちあわせていないはず。

「てことは、MPが切れたか……?」

 なんてこった……。
 魔力総量は生まれた時に決まるのなら、俺の魔力は水弾二発分という事になる。

 うーむ。さすがに少なすぎね?
 それとも、最初だから魔力をロスしてるとか、そういうのなんかね?
 いや、そんな馬鹿な。

 念のためもう一発出してみたら、気絶してしまった。


---


「もう、ルディったら、眠くなったらちゃんとトイレにいってベッドに入らなきゃダメでしょ」

 起きた時には、読書中に居眠りして、そのままおねしょをした事になっていた。
 ちくしょう。
 この歳で寝小便したと思われるとは……。
 ちくしょう……ちくしょう……。
 って、まだ二歳か。寝小便ぐらい許されるか。

 てか、魔力少なすぎだろ。
 はぁ……萎えるわー……。

 まぁ、水弾二発でも、使い方次第か。
 精々、咄嗟に出せるように練習だけしておくか……。
 はぁ………。


--- 


 次の日は、水弾を4つ作っても平気だった。
 5つ目で疲れを感じた。

「あっれぇ……?」

 昨日の経験から、次の一発で気絶するとわかっていたので、ここでやめておく。

 で、考える。

 ふむ。
 最大6つ。
 昨日の2倍だ。

 俺は桶に入った水弾5発分の水(気絶対策)を見ながら、考える。

 昨日の今日で回数が2倍に増えた理由。
 昨日は最初から疲れていたとか、初めてだから消費MPが大きかったとか。
 今日は全部無詠唱でやったから、詠唱をする・しないで変わる事はないはず。

 わからん。
 明日になったら、また増えているかもしれない。


---


 さらに翌日。水弾を作れる回数が増えた。

 11個だ。
 なんだか、使った回数分だけ増えている気がする。
 もしそうなら、明日は21回になっているはずだ。

 翌日、念のため、5回だけ使ってその日はやめておく。

 さらに翌日、26個になっていた。
 やっぱり、使った分だけ増えていく。

(嘘こきやがって……!)

 何が人の魔力総量は生まれた時にきまっている、だ。
 才能なんて眼に見えないものを勝手に決め付けやがって。
 子供の才能ってのは大人が勝手に見極めていいものじゃねえんだよ!

 ま、本に書いてあることを鵜呑みにするなって事だ。
 この本に書いてあるのは「人の幸せには限界がある」とかそういうレベルの話なのかもしれない。
 あるいは、鍛えた結果の話なのだろうか。
 頑張って鍛えても、魔力総量には限界値があるという話なのだろうか。

 いやまて、そう結論付けるのはまだ早い。
 まだ仮説は立てられる。

 例えば……。
 そう、例えば、
 成長に応じて増えていく、とか。
 幼児の時期に魔力を使うと飛躍的に最大値が増える、とか。
 あ、俺だけの特殊体質ってのも捨てがたいな。
 ………いや、だから自分を特別だと思うなって。

 元の世界でも、成長期に運動すれば能力が飛躍的に伸びるとか言われていた。
 逆に成長期を過ぎてから、頑張っても伸び率が悪いとも。

 この世界だって、魔力とかなんとか言ってるけど、人間の体の構造は変わらないはずだ。
 基本は一緒。
 なら、やることは一つだ。
 成長期が終わる前に鍛えられるだけ、鍛える。


---


 翌日から、限界まで魔力を使っていく事にした。
 同時に、使える魔術の数を増やしていく。
 感覚さえ覚えれば、無詠唱で再現することは簡単だ。
 とりあえず、近日中に全系統の初級魔術は完全にマスターしたいと思う。

 初級魔術というのは、文字通り攻撃魔術の中で最も低いランクに位置する。
 水弾や火弾はその中でも、特に入門的な位置づけにある初級魔術だ。

 魔術の難易度は七段階に分かれている。
 初級、中級、上級、聖級、王級、帝級、神級。

 一般的に一人前と呼ばれている魔術師は、
 自分の得意な系統の魔術が上級まで使えるが、
 他の魔術は初級か中級までしか使えないらしい。

 上級より上のランクを使えるようになると、
 系統に応じて火聖級とか水聖級とか呼ばれて一目置かれるのだとか。

 ちょっと憧れる。

 しかし魔術教本には、火・水・風・土系統の上級の魔術までしか載っていなかった。
 聖級以上はどこで覚えればいいのだろうか……。

 いや、あまり考えないようにしよう。
 RPGツ○ールで最強のモンスターから作ると、高確率で挫折する。
 まずは最初のスライムからだ。
 もっとも、俺はスライムから作っても完成させたことがないがね。



 教本に書かれている水系統の初級魔術は以下の通りだ。

水弾:水の弾を飛ばす。ウォーターボール。
水盾:地面から水を噴出させて壁を作る。ウォーターシールド。
水矢:20cmほどの水の矢を飛ばす。ウォーターアロー。
氷撃:氷の塊を相手にぶつける。アイススマッシュ。
氷刃:氷の剣を作り出す。アイスブレード。

 氷も水系に含まれるらしい。
 ひと通り使ってみた。

 初級と一口に言っても、使う魔力はまちまちだった。
 水弾を1とすれば、大体2~20ぐらいか。

 基本的には水系だ。
 火を使って火事にでもなったら危ないからな。
 火事と言えば、消費魔力は温度も関係しているのか、上級になればなるほど氷が増えていくようだ。
 しかし、水矢とか飛ばすとか書いてあるのに飛んでいかなかった。
 なんだろう、どこかで何かを間違えているのだろうか……。
 うーむ。わからん。

 魔術教本には、魔術の大きさや速度についても書いてある。
 もしかすると、弾を作り出した後に、さらに魔力で操作するのだろうか。

 やってみる。

「お?」

 水弾が大きくなった。

「おお!」

 ばちゃん。

「おぉ……」

 しかし、やはり落ちてしまう。
 その後、色々やって水弾を大きくしたり小さくしたり、
 違う水弾を2つ同時に作ったり、
 それぞれの大きさを変えてみたりと、
 新たな発見はあったが、一向に飛んで行かない。

 火と風は重力に影響を受けないせいか空中に浮いているのだが、結局は一定時間で消えてしまう。
 ふよふよと浮いた火の玉を風で飛ばしてみたりもしたが、何かが違う気がする。

 うーむ……。


---


 2ヶ月後。
 試行錯誤の末、ようやく水弾を飛ばすことが出来た!

 それが切っ掛けとなり、詠唱の仕組みが解明できた。

 詠唱は、
 生成→サイズ設定→射出速度設定→発動のプロセスを辿っているのだ。
 そのうち、サイズ設定と射出速度設定を術者がいじることで、魔術が完成する。

 つまり詠唱をすると、
 まず自動的に使いたい魔術の形が作り出される。
 その後、一定時間以内に魔力を追加して、サイズを調整、
 サイズ調節後、さらに一定時間以内に魔力を追加することで、射出速度を調整。
 準備時間が終わると、術者の手を離れ、自動的に発射される。

 多分間違っていない……と思う。

 詠唱の後、2回に分けて魔力を追加するのがコツだったのだ。

 サイズ調節をしなければ、射出速度の調節に行かない。
 どおりで飛ばそうとしても大きくなるだけで何も起こらないわけだ。


 ちなみに無詠唱でやる場合は、それら全てのプロセスを自分でやる必要がある。
 面倒に思えるが、サイズと射出速度の入力待ち時間を短縮できるため、
 詠唱するよりも数段早く発射する事ができる。

 また、無詠唱ならば生成の部分もいじることができた。
 例えば教本には書いていないが、水弾を凍らせて、氷弾にするとかだ。
 これを練習していけば、カイザーフェニックス(ドヤ顔)とかも出来るだろう。

 アイデア次第でいくらでも応用が効くのだ。
 面白くなってきた!

 ……………………けど、基本は大事だ。

 色々と実験するのは、魔力総量がもっと増えてからにしよう。

 魔力総量を上げる。
 息をするように無詠唱で魔術を使えるようになる。
 次の課題はこの2つだ。

 いきなり大きな目標を立てると挫折しちゃうからな。
 小さなことからコツコツだ。
 よーし、頑張るぞ。



 そうして、俺は毎日、気絶寸前まで初級魔術を使い続けて過ごした。

無職転生 - 異世界行ったら本気だす - ©理不尽な孫の手

執筆の狙い

実力がどの程度なのか知りたい。
本音を聞かせて下さい。

理不尽な孫の手

182.250.246.7

感想と意見

匿名希望者

小説家になろうサイトのランキング1位ですから、素晴らしい作品だと思います。

2014-05-15 02:35

210.162.60.8

不眠子

ふつーに最後まで読んだけど、面白かったから、読んだだけで、文書がうまいかと言われれば、投稿してもまず落ちるレベルですね。
何で、こんなこというかって、これ多分、投稿するやつですよね?ごはんに載せるために書いたにしちゃいろいろ変だし。

それにしても、前半でもっと魔法使い(ふつーの意味の)とか、そっちの世界に憧れてるとか、やたら魔法に詳しいって事を書いておいた方がよさそうですね。
それと、
ま、尻切れで投稿してるし、たたかれるかもしれませんね。ロクでもないと言われても文句言えませんでしょう。
僕はラノベ大好きなんで、楽しみました。ごはんてラノベ好きにきびしーですからね。

2014-05-15 02:40

126.205.66.234

匿名希望者

書庫化された作品ですからプロの方ですね。ここへ投稿されずとも編集者の方の指導があるのでは?

2014-05-15 02:49

210.162.60.8

七篠朋次郎

数多いなろう作品でのトップを取るというのは大変なことです。
私は貴方様の発想や文章力に素直に敬服します。
参考にした魔術やゲームは皆無でこれをご自分の頭で一人考えられたのなら
尊敬もします。(大変失礼な書き方ですが過去私がほめた小説やイラストが二次創作もので
なぜあんなのをほめた? ◎◎を知らないのかと怒られた経験ありなのでちょっと慎重です)

最初のつかみは本当に上手でわかりやすい。一般読者が理解のできない
コ難しい小説で社会的地位を得ている純文学者よりずっと親しみを感じます。
転生前の話で主人公はほんと共感もできないひどい男ですがこの伏線どうやって
回収するのだろうと思いますがまだ未完結ですね、ラストで元の世界へのとっかかりは
有にしてほしいと個人的には思います。
でないと、人生転生でベビーからのやり直し路線魔法付き。ご都合主義の転生したもの一人勝ち。
どこぞの偉い批評家さんに現実を直視しない若者が好む小説逃避ありきで心理がどうの
とかの見本としてやられそう。

とりあえず作者本人様が楽しんで書くことが一番です。リアルで出版でもできているし
自信もって前進んでください。応援しています。

2014-05-15 05:41

203.99.225.20

一ファン

文庫持ってる!

著作権とかもろもろ、ここに投稿しちゃって大丈夫ですか?
心配です。

2014-05-15 08:08

210.231.57.32

童子繭

冒頭だけさらして imasara 意見なんかいらないだしょう はああ

しかし 魔術もので自己逃避ものって 受けるんですねえ ここまでスカスカな文章でないと駄目なのかなあ ハルヒとかのほうがやっぱり面白いかなって思う


でもこれって本当に純粋なる宣伝行為ですね・・・・・・ 

もう未来がなくて 草食化している若者にすれば 格好のオナニー内容で マーケットを的確に把握していて 問題ないんじゃないでしょうか

2014-05-15 08:20

175.139.103.94

カジ・りん坊

俺は引きこもった。
 断固として引きこもった。
 同年代の知り合いが、みんな俺の全裸磔と股間部のアップの写真を見て笑っていると思っていた。
ぐらいで挫折した。

この話長くなる?

2014-05-15 08:45

219.96.5.229

クリキントン

拝読いたしました。
ラノベ読んだことのないものとして感想を書かせていただきます。
まず題名がいいですね。なんだこりゃ!?と思って目を引きましたし、主人公のクソっぷりも面白いです。
ワクワクしながら読み進めたのですが、
>リーリャはアスラ後宮の近衛侍女だった。
以降から、一気に訳がわからなくなり、読むのを挫折してしまいました。突然話が飛んでますよね?今までの話と繋がっていなくて、読み進めればわかるのかもしれないけど、そこまで至る前に読むのをやめてしまいました。なので、もったいないなあという印象です。
なんか異世界とか持ち出さない方が面白いと思うんですけど、でもそれだとやっぱラノベ的にはダメなんですかね。

2014-05-15 09:06

110.133.51.122

若手プロレスラー

これって書籍化されたものですよね。
投稿主はご本人様なのでしょうか?
既に出版されているということは権利は出版社に帰属していると思うのですが、
大丈夫なのでしょうかね? ここは自から削除できないので。
感想といたしましては私も先の方と同じように、異世界に行くまでは楽しく読めました。
いろいろツッこむところはありますがこの主人公は面白いので、現実的な話でどんどん進んで欲しかったですね。

2014-05-15 10:15

126.117.173.120

なろう読者

本人か不明な上、小説家になろうサイトでの孫の手さんへ通報させていただきました。

2014-05-15 11:12

180.14.49.253

匿名

話区切りをそのままにして投稿するなよ。違和感がでる。
おそらく本人じゃないと思うけど、そうだとしたら盗作になるからね。
特にこれは書籍化された作品だから相応の懲罰は覚悟した方がいい。
お疲れさまでした。

2014-05-15 11:26

219.19.186.92

umikurage

これすでに書籍化された作品
つまり誰かが勝手に盗作して晒してるんだろうね
メディアファクトリーから訴えられても知りませんよ

2014-05-15 11:39

210.171.31.13

童子繭

でもなろうのサイトみたらこの作品いまだに掲載されているから 書籍化した内容は変えてあるとか? 意外にご本人かもよ 宣伝をかねた

そういうビジネス形態なんではないでしょうか でもなりすましだったら 削除しなきゃだめだから報告するのはナイスでした

http://ncode.syosetu.com/n9669bk/1/

2014-05-15 11:46

60.51.78.18

匿名希望者

まあ、ご本人ならちゃんとした返信もあるでしょうから、それを伺うことにしましょう。
1週間以内の感想への返信は義務ですから。

2014-05-15 11:59

210.162.60.8

理不尽な孫の手

すいません、お騒がしまして。
本人ですが宣伝を名目に載せました。
お許しを。

2014-05-15 12:52

182.250.246.9

名無し

本人ならTwitterに呟いてみてくれ

2014-05-15 13:10

182.249.246.25

童子繭

本人証明に創作秘話を披露してくださいい 後学のために わくわく

2014-05-15 13:16

60.51.78.18

ドリーマー

拝読しました。
文章は読みやすいし、ストーリーも(掲載分は)面白かったです。
ただ最初から最後まで説明ばかりで描写がほとんどないせいか、状況は分かるのですが情景が思い浮かびません。なんだか背景のない一人芝居を見ているようでした。
もしかしたらこういう書き方は、ラノベなら『お約束』なんでしょうか。
普段ラノベを読まない、頭の固い一読者の感想なので、的外れなことを言っていたらすみません。

2014-05-15 16:04

220.211.183.119

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3,000字以内