***Column***

立澤 重良


                ★光ファイバの接続工事」                -第2回-

前回では、光ファイバと光ファイバ接続工法の種類について掲載しました。今回は光ファイバを融着接続するための具体的な技術や、必要な機器などについて書きたいと思います。
 光ファイバ融着接続は基本的には融着接続機が自動で行いますが、全体の工程の半分は作業者が工具を使って手作業をする前処理工程となります。この前処理工程は、良好な融着接続をするために非常に重要な部分となります。
 前処理工程は融着接続だけではなく、メカニカルスプライスやコネクタ組立などにも応用できるので、光ファイバ施工全般に必要な技術ともいえます。
 光ファイバ施工に関連する機器は高額な製品が多く、融着接続機や光測定器などは数百万円もします。前処理工程に使用する工具類も、工事用の工具としては高額です。ここで重要なのは、正しい知識を身につけておかないと、不要な物を購入したり、後で買い直すはめになったりして、非常に高額な費用を無駄にしてしまうということです。
 この第二回目では「光ファイバ融着接続について」と「機器の選定方法について」の2つについてご紹介します。

融着接続とは?

 融着接続は対向する光ファイバをアーク放電と呼ばれる気中放電の熱により光ファイバのガラス部分を溶融させて接続する技術です。融着には融着接続機や光ファイバカッタ、ストリッパなどを使用します。

 融着接続機は前処理を施した光ファイバをセットするV溝(断面がV字状の溝)があり、V溝に接続するそれぞれの光ファイバを整列させて軸の精度を合わせます。アーク放電を行う電極部分と、その様子を撮影する為の小型CCDカメラが内蔵されています。
 光ファイバの様子をCCDカメラが撮影し、映像をLCDモニタに映し、コンピュータが各工程や検査を自動で行います。

 このとき作業をされる方は、LCDモニタに映し出された融着動作の映像を見て、それぞれの工程で異常がないかをよくチェックします。

 融着接続が完了すると推定の接続損失を表示します。融着接続された部分は被覆がなくガラスが露出していますので、この部分に補強熱スリーブを被せて、融着接続機内蔵の加熱器を使用してスリーブを熱収縮させて曲げ強さを補強します。

多心型テープ心線を一括で融着接続できる古河電工S199M4(4心テープ心線対応)

補強熱スリーブで補強された融着部
(4心テープ心線)

融着作業は難しいの?

 光ファイバの融着接続は前項で記した通り、前処理工程が重要です。前処理工程は光ファイバ心線の被覆をストリッパで除去し、ガラス部分をエタノールを使用して清掃、光ファイバカッタを使用して切断するといった、繊細な作業となります。
 わずかな汚れや光ファイバ端面の欠けなども接続損失に影響してしまうので、スピード優先の乱雑な作業はご法度です。デリケートな光ファイバを繊細に取り扱うという意識があれば決して難しい作業ではありません。
 光ファイバ融着の実技を取り入れたセミナやメーカの技術者による指導を受ければ、より早く技術を習得できます。

◇ 前処理工程◇

ストリッパを使用して被覆を除去

エタノールでガラス部分を清掃

光ファイバカッタで切断

光ファイバを融着接続機へセット

機器や工具の選定方法

・融着接続機の選び方
使用する光ファイバの種類や心線数によって機種を選定します。一般的にLANの工事ではシングルモードファイバとマルチモードファイバが主ですので、特殊な光ファイバを接続できる高価な融着接続機を選定する必要はありません。心線数は単心から4心テープ心線が多く使用されていますので、4心テープ心線まで対応した機種をお勧めします。4心(多心)テープ心線まで対応した機種は単心線の接続も可能となっています。
 光ファイバ線路端末でコネクタ付き光ファイバコードと融着する作業のみであれば、単心線専用の機種でもよいと思います。
 古河電工ではSM、MM、DSF等の多種な光ファイバや、低接続損失で融着接続できるS199シリーズをはじめ、用途にあわせた製品をラインナップしております。
またLAN工事に最適なS121A(単心線専用)、S121M(単心〜4心)は価格も55万円※1からとコストパフォーマンスに優れています。

古河電工 S121M
単心〜4心テープ心線 超小型ハンディタイプ
SMとMMが接続可能。
古河電工 S199M8
単心〜8心テープ心線 二軸観察方式
SM、MM、DS、NZDSが接続可能

・ストリッパの選び方
光ファイバ心線の被覆を除去するストリッパは、多心テープ型心線を被覆除去可能なホットストリッパと単心線の被覆径0.25mm、0.9mmを被覆除去する単心線専用ストリッパの2種類があります。ホットストリッパは電源を使用しますが、このとき融着接続機やACアダプタなどから電源をとるタイプよりも、バッテリ式のホットストリッパの方がコードレスで作業ができるのでお勧めです。ホットストリッパは単心の0.25mmの被覆除去も可能です※2

古河電工 ホットストリッパ S218
電源はバッテリ、AC電源、融着機と接続の3種が可能
単心0.25mm、2〜12心テープ心線
古河電工 ストリッパ S210
単心線 被覆径0.25mmと0.9mm

・カッタの選び方
カッタは単心線専用タイプと単心線から多心テープ心線まで対応したタイプの2種類があります。単心線専用よりも多心まで対応したタイプの方が、簡単に高精度な光ファイバの端面を作ることが可能です。よって一般的には単心線の工事であってもこちらを使用することが多いようです。切断した屑ファイバを自動的に回収処理する機能がついた製品もあります。

古河電工 光ファイバカッタ S323
・高精度端面 ・心線屑回収機能付き
単心線〜12心テープ心線


・光ファイバホルダ
多心テープ心線対応の融着接続機などは、光ファイバホルダに光ファイバを固定して融着接続の作業を行います。光ファイバホルダは心線数別に種類があります。

写真上:4心テープ心線用光ファイバホルダ
写真下:単心線0.25mm用光ファイバホルダ

超小型融着接続機S121シリーズは専用タイプの光ファイバホルダとなります。


・補強熱スリーブ
スリーブ幅が40mmの単心〜多心対応のものと、60mmの単心線専用の2種類があります。40mmのタイプはガラス抗張力体が使用され、単心線専用のものはステンレス棒による補強部材が使用されます。

補強熱スリーブ S924
単心〜12心テープ心線対応  40mmタイプ


・接続キット
ストリッパ、カッタ、アルコールなどを1つのセットにした光ファイバ融着接続キットも製品化されています。

融着接続キット S424シリーズ
ストリッパ、ホットストリッパ、カッタ、アルコール等
多心光ファイバ融着接続に必要な工具のセット
(光ファイバホルダは含まれません)



※1 S121A本体標準価格   
※2 S218の場合        


☆次回は「融着接続の施工における注意点」と
                                           「よくあるトラブル」を予定しております。☆


立澤 重良
古河電気工業株式会社 93年入社
所属 ファイテル製品部 光メカトロニクス部
光ファイバ融着接続機のサービスエンジニアと営業技術を兼務


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