資本主義社会の格差は今後ますます急速に拡大することを詳細に分析した、フランス人経済学者トマ・ピケティの『21世紀の資本論』(Capital in the Twenty-First Century)が欧米で大きな話題を呼んでいる。
あまりの注目ぶりに、著者は欧米のメディアでは "rock star" economist と呼ばれているほどだ。
この本の原著はフランス語で、2013年8月刊。
Le capital au XXIe siècle - Thomas Piketty - Amazon.fr - Livres
7ヶ月後、英訳が2014年3月に刊行されると評判が野火のように広がり始め、その後、資本主義や格差問題を語る上で欠かせない文献になっているのは周知の通り。
Capital in the Twenty-First Century
さて、日本語版はいつどこが出版してくれるのだろう? と思っていたところ、みすず書房が翻訳権を購入したことが下記の記事に報じられている。
日本でも格差は広がる―欧米で話題『21世紀の資本論』 - Japan Real Time - WSJ
残念なことに、ピケティ教授の著作が日本語に翻訳されるまでしばらく時間がかかる。日本での版権を持つみすず書房は、翻訳者の手配が最近終わったばかりで、まだ日本語版の出版日程は決まっていないと話した。フランスの出版社Editions du Seuilによると、日本語版は2017年3月に出版されるという
2017年3月……原書刊行から4年ですか。
「残念なこと」どころではない。
記事中にもあるように、
こうした結論は、安倍晋三首相の政策議論に一石を投じそうだ。法人税率の引き下げや消費増税など、安倍首相の推進する成長戦略が格差拡大を後押しする可能性がある。
にもかかわらず、日本語訳は原書に4年近く、英訳に3年近く遅れるわけです。
格差拡大という現代進行形の問題に一石を投じる可能性、格差拡大推進政策の歯止めとなりうる可能性があるこうした本を、なぜすばやく翻訳できないのか?
それに、3年後、まだこの本の需要はあるのだろうか?
たしかに、学術出版の世界(とくに人文系)では、これまで、原著の出版後数年(ひどいときには数十年)かかってようやく翻訳刊行、というケースも珍しくなかった。
しかし、変化の激しいアクチュアルな経済を論じている本の翻訳に数年もかけていては、著者も気の毒である。
こうした状況を踏まえて、みすず書房さんには、1日も早く翻訳を出版していただきたいと願います。
なお、自分は日本語訳待っていられないので英語版を読むことにします。