避難者住宅:無料打ち切り 元の住所、線引き曖昧
毎日新聞 2014年05月14日 07時15分
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴う避難者を対象にした住宅の無償貸与が打ち切られるケースが出始めている。厚生労働省はどの都県からの避難者かによって区別して、2013年度末で一部の避難者に対する雇用促進住宅の無償貸与を終了。打ち切りの対象となったりならなかったりすることに戸惑いの声も上がり、避難者が置かれた不安定な住宅事情を浮き彫りにしている。【日野行介】
厚労省によると、雇用促進住宅は同省所管の独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が運営し、入居期間は2年間が原則。1年間の延長を経て無償貸与を終了したのは、18道府県の住宅に住んでいた青森、千葉、東京など8都県からの避難者113世帯で、うち40世帯が有償での居住継続を選び、残る73世帯は退去したという。同省は「震災から一定の時間がたち、機構の負担や他の入居者との公平性を考慮した」と説明する。
一方、福島、宮城、岩手の3県からの避難者が入居する住宅は、災害救助法に基づき国が家賃を補助する応急仮設住宅として扱われ、同住宅の入居期限に合わせ今年度は無償貸与を継続。茨城、栃木両県からの避難者についても無償を続けている。同省は「茨城県から継続の要望があった」としているが、栃木県からはなかったといい、線引きの基準はあいまいだ。
各自治体が独自に行ってきた避難者向けの公営住宅の無償貸与も、西日本を中心に終了する動きが出ている。大阪府吹田市は今年度から有償での居住継続か1年限定の無償継続(その後は退去)かを選ぶよう避難者に求めたほか、同府泉佐野市も昨年10月から市営住宅の無償貸与を終了した。
応急仮設住宅については当初、国は入居期間を2年間としていたが、2回にわたって1年間ずつ延長し、現在の期限は今年度末。自主避難者を中心に「安心して生活できない」など不安を訴える声が出ており、福島県から東京へ避難している人の団体が先月、長期的な延長を求める要望書を国や都に提出した。
日本弁護士連合会などで構成する「原発事故子ども・被災者支援法ネットワーク」は14日正午から、参議院議員会館講堂(東京都千代田区永田町2)で被災者の住宅確保を求める集会を開く。入場無料。問い合わせは日弁連人権第2課(03・3580・9956)。
【ことば】雇用促進住宅