情報科学屋さんを目指す人のメモ

方法・手順・解説を書き残すブログ。私と同じことを繰り返さずに済むように。

AppStoreで人気の「無料音楽アプリ」5つを通信解析してわかった音楽無料提供の仕組みとは (iLoveMusic・MusicCloud・DropMusic・Music Stream・Music Bank)

タグ:iPhone(103件), 著作権(3件)
コメント:0件

iPhoneのAppStore総合ランキング上位に多数存在する「無料で音楽聴き放題アプリ」たち。数百万というダウンロード数と、そこからの広告収益を稼ぐそんなアプリたちに共通する「最新の音楽を無料で提供できる仕組み」について紹介します。キーワードは金脈API、かな。

free-music-applications

↑中高生の認知度がかなり高いのではないか、と予想しています(自分自身が使っていなくても、友達の一人くらいは使っているだろう的な)。「無料音楽プレイヤー」「無料音楽取り放題」なんていう言い方もあります。

分析対象の人気の無料音楽アプリ一覧

無料で音楽が聴き放題という宣伝をしているアプリたちは多数あるのですが、その中でもアプリランキング1位を経験済みのような、レビュー数が1000を越えるアプリを対象にしました。

  • iLoveMusic(総合無料2位)
  • MusicCloud(総合無料20位)
  • DropMusic(総合無料55位)
  • Music Stream(ミュージックジャンル無料上位)
  • Music Bank(ミュージックジャンル無料上位)

※順位は最高順位ではなく、ダウンロードするときにチェックした現在のものです。

これらはどれも大人気で、Twitter上のやりとりを検索したりすると、これらの「無料で音楽を聞けるアプリ」がかなり浸透していることが分かります(学生中心?)。

普通に350万ダウンロード以上のアプリもあって、驚かされます最近色々記事を書いたGunosyアプリは170万ユーザーを達成したそうです。アプリの説明より)

分析方法

iPhoneをMacに接続して、Wiresharkを使って通信内容をチェックしました。

参考:iPhoneの通信をWiresharkでパケットキャプチャする方法

前回の記事で、音楽アプリの「検索機能」を分析すると、音楽を実際に再生しなくてもいいし、なんならそれ以上の情報がとれたりする、ということがわかったので、今回は完全に「検索機能」に絞って通信をチェックしています

分析結果

各アプリの分析結果は、次のようになりました。

全分析を総合した結論はシンプルなものなので、各アプリの分析結果はさらっと読む程度で問題ありません。一気に結論をちら見してもいいと思います。

iLoveMusic

コンテンツについての説明

【コンテンツについて】
当アプリ内においての音楽は一般にインターネット上で公開されているサービス上に掲載されているコンテンツであり、ダウンロードする機能はありません。
当アプリでは当該コンテンツの著作権に関しては関知しておりませんのでご了承ください。
本アプリにおいて著作権を侵害している又はその恐れがあるものについては、対応致しますのでお問合わせより御連絡下さい。

分析結果

iLoveMusicの分析は無料音楽アプリ「iLoveMusic」はどこから音楽ファイルを取得しているのかという記事で詳しく紹介しました。

その分析から、iLoveMusicは、音楽データを中国のXiami.comというサイトから調達し、その音楽データを直接Xiami.com(中国)からストリーミングしていることがわかりました

このXiami.comには、音楽検索APIがあり、簡単にアプリに組み込むことができることがわかりました。

これがきっかけで、「ほかの無料アプリも似たことをしているのではないか」と思ったのがそもそもこの記事のきっかけです

MusicCloud

コンテンツについての説明

※注意
MusicCloudは完全無料のストリーミングアプリです。ダウンロードする機能は一切ありません。

※必ずお読みください
MusicCloudは一般的にインターネットで公開されている音源を使用しております。私的使用だとしても、違法にアップロードされた著作権のある音楽を視聴することは違法です。そのような音楽は絶対に視聴しないでください。
ご理解とご協力をお願い致します。

※著作権のお問い合わせについて
サポートページのDMまでお願い致します。

分析結果

検索機能利用時の通信を解析したときの画像がこちら(こんな感じで通信内容の詳細を見ています)

music-cloud-search-request

ここから、iLoveMusicと同じxiami.comの楽曲検索APIを利用していることがわかりました

また、ジャケット画像はimg.xiami.netのデータを使っており、コンテンツについてもxiamiを使っていることが分かります(検索APIの結果がxiamiのコンテンツのURLを返すんだから当たり前)。

したがって、MusicCloudも、結局Xiami.comを使っていることがわかりました。

DropMusic

  • 無料総合・音楽ランキング1位獲得
  • 350万ダウンロード突破
  • Ignom Inc. という会社が作っていることになっていて、ignom.jpというjpドメインが取得されていて、それがアプリ中でも使われている(ただし、ignom.jp, www.ignom.jp にサイトは無し。WHOISではGMOペパボ株式会社の代理公開になっていて、ムームードメインで取得したことがわかる)

コンテンツについて

まず、「DropMusicはYoutubeなどで公開されている曲を様々な方法で提供しています」と書かれています。Youtube「など」が気になるところです。

【コンテンツについて】
当アプリ内において表示されてる動画や音楽は、一般にインターネット上で公開されているサービスに掲載されているコンテンツです
当アプリでは当該コンテンツの著作権に関しては関知しておりませんのでご了承ください。
なお、当該コンテンツにおいて著作権を侵害している又はその恐れがあるものについては、対応致しますのでお問い合わせフォームにてご連絡ください。

分析結果

検索ワード入力中に、検索ワード候補を表示するサジェスト機能では、「api.bing.com」に、1文字入力するごとにアクセスしており、「api.bing.com/osjson.aspx?query=abc」のようなURLで取得しているようでした。なるほど、という感じです。

そして本題の音楽検索クエリの送信先ですが、こちらも「api.xiami.com」でした。なんとまぁ。

DropMusicは、動画検索機能もあるのですが、こちらでは、「http://gdata.youtube.com/feeds/api/videos?v=2&maxResults=20&alt=json&q=searchword&startIndex=1」というYouTubeのAPIを利用していました。

つまり、「YouTubeを使っている」と書いてあったのは動画部分であって、音楽部分はまるごと毎度おなじみXiami.comだった、というわけです。

そして、ちょっと気になったのが、「dropmusic.ignom.jp/suggests.json」へのアクセスです。検索実行と同時に、「user_id」と「word」が送信されていました。wordは、検索キーワードで、何に利用しているのかはわかりません。

Music Stream

コンテンツについて

Music Streamはネットで公開されている邦楽・洋楽を『完全無料』で楽しめます。

コンテンツについての説明はかなりあっさりしています。今までのアプリ全部謎でしたが、こちらもほんと謎です。

分析結果

このアプリは「GET /search/song/page/1?key=earchword HTTP/1.1」というリクエストを送っていました。今までのXiamiAPIの形式とは違います

で、その送信先ドメインは…「www.xiami.com」。なんだまたか。

つまりこのアプリは、「http://www.xiami.com/search/song/page/1?key=searchword」というページにアクセスして、返ってきたHTMLをパースして、検索結果を作成していた、というわけです。

したがって、こちらも完全に音楽データはXiami.com由来だった、ということが分かります。

Music Bank

コンテンツについて

このアプリに至っては、音楽コンテンツの入手ルートや著作権に関する表記は一切アプリの説明にはありませんでした

分析結果

起動直後に「大ヒット 農場育成ゲーム」なんていうダイアログが出てきてさっそくインストールを迫られるという、広告が極端に多い無料音楽アプリの中でも、インパクトのあるアプリでした。

遂に、ここは検索にxiami.comを使っていませんでした

検索時、アクセス先は「www.minariapis.com」でした!!!なんだか意外!

さて、検索完了直後、検索結果を表示するために、サムネイル画像(ジャケット画像)を読み込むのですが、そのサムネイル取得のリクエストヘッダを見てみると…「img.xiami.net」でした。。。結局こうなるのね。。。

実際、www.minariapis.comからのレスポンスを確認してみると、api.xiami.comの結果と同じでした。

つまり、www.minariapis.comがプロキシとして動作しており、api.xiami.comに代理アクセスしているようでした

minariapis.comはお名前.com(GMOインターネット)で取得されており、あまり細かいことはわかりませんでしたが、結果がわかったので十分です。「ここもXiami.comに依存している」と。

結論

無料音楽アプリが揃いも揃って中国の無料音楽ストリーミングサイト「xiami.com」から音楽データを取得していた

つまり、

人気の無料音楽アプリたちの正体は、揃いも揃って、「中国の無料音楽ストリーミングサイトからデータを取得するクライアントアプリ(プレイヤー)」だった

と言えそうです。自分は直接解析をしたのでだんだん分かってきた感じだったのですが、いきなりこれを知ったら「全部中身一緒だったのか!!!」と驚く人が多いのではないでしょうか。

今回、大人気の無料音楽再生アプリ5つの分析結果を紹介しました。実際は検索機能に限定した分析でしたが、どのアプリも中国の音楽ストリーミングサイト「虾米音乐网(xiami.com)」のAPI(api.xiami.com)を利用していることがわかり、音楽データがXiami.comから調達されていることがわかりました

ほんとこれは驚異的で、あれだけ沢山のアプリがあるのに、少なくとも上位にある音楽再生アプリたちが揃いも揃って同じ仕組みで音楽を入手して、大量の広告を付加して利益を上げている、それもAppStoreの超上位に位置しているわけですから、その規模はとてつもないものだと予想されます。

これを見ていると、アプリ開発者が「api.xiami.com」という金脈を掘り当てたかのようです。

最後に重要な特徴に触れておきます。

どのアプリも、アプリの説明に「Xiami.comを利用している」ということが一切書かれていない

これはなんだか重要な事実だと思います。

ちなみに、このxiami.comを利用しているという事実は、このような無料音楽アプリを批判したりする時の重要な事実だと思います。批判したりする機会がある人は、ぜひ参考にしてみてください。

こうなってくると忘れてはならない最重要事項が「xiami.comとは一体何者なのか」、なのですが、それはまた今度。というか現時点で途中までしかわかってない感じです;ただ「わかった」の基準が高過ぎる気もするので、分かる範囲でほどほどに明日までに書くことにします(予定)。

音楽業界の人、特に歌手の人なんかは、最近のこういうアプリの流行について、知ってたり意識してたり気にしていたりするんでしょうか。歌手の人のアピールが、すごく手っ取り早くユーザーに影響を与えそうなんですが。

↑リツイート用にツイート用意しました。

ブログの更新情報はこちらから

RSS を 購読 する Facebook いいね! は こちら から Twitter で @did2memo をフォロー

コメント(0)

新しいコメントを投稿




  • カテゴリ ナビ
  • 自己紹介

    author : did2

    ブログが趣味で、BLOGOSブロガーです。
    開設後 約1年半で月間150万PV達成。
    Yahoo!ニュースなどの大手サイトからのリンク多数。

    最近の関心は、スマホなどに詳しくない人の行動や思考と、そんな人を手助けする方法・枠組み。

    というわけで、このブログの多くの記事は、詳しくない人向けとなっています。

    Windows/Mac/Android/iPhone/WordPress/トラックボール/HHKB JP/AutoHotkey/Eclipse/マルチモニタ(9面)