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忘れないために書きます

2014-05-14

[]京大SF研に入ってすぐオススメされた10冊 22:04

 そろそろ全国のSF研に新入生が入るころだろうし、思い出話として語ってもいいかなと思ってこのエントリを書いた。

 そもそものはじまりとして、高校3年の春休みにスタージョンの「海を失った男」を読んでSFの凄さに感銘を受け、そこからSF棚に平積みされていた伊藤計劃円城塔飛浩隆といった面々を消化し、いつの間にやらSF研のドアを叩いていたという、そういう人間である。

 なお、見事に青背ばかりが並ぶわけだが、実は20世紀SFをオススメされたり、SFマガジン2000年2月号をオススメされたりすることも当然あった、と書いておく。とはいえ残念なことに、アンソロはSF入門に極めて便利な一方で、僕自身がオススメされた時の記憶があまり残っていないので今回は避けることにした。

 


玩具修理者 (角川ホラー文庫)

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

 最初におススメされた本(装丁は違うやつだけど)。これの特に「酔歩する男」が薦められた。なぜ最初にこれだったのかは分からなかったが、確かに面白かったし、今年の新歓でもこれを使った読書会が行われたようだ。なお、この後『AΩ』を読んでしばらく温泉卵を食べられなくなったり、『目を擦る女』をオススメされたので先輩と一緒にポーズをとりながら「ターイムマスィーン」と唱えたりしたことを覚えている。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

 お次はテッド・チャン。「とりあえずチャンとイーガンを読ませておけ」という感覚で渡された。まあ真っ当だと思う。当時はまだチャンの巧さに気づけなくて、イーガンに比べると薄味だな、と今から考えれば大変不遜なことを思っていたものだ。

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

 そしてイーガン。『祈りの海』とセットで読んだが、多分順番としては『祈りの海』の方を先に読んだと思う。「『祈りの海』の方が、ハードSFに慣れていなくても読めるものが多い」という話だった気がする。

九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫SF)

九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫SF)

 そしてラファティイーガン、チャンまではいいとして、次にラファティに跳ぶのは割と京大SF研の特色だと思う。単にその時の先輩にラファティがとてもとても好きな人がいたから、というだけのことかもしれないが……。そしてもちろん、『つぎの岩につづく』、『どろぼう熊の惑星』も必修科目である。今なら『昔には帰れない』も入るんだろう。

 名前だけ借りた作品が有名になってしまったハーラン・エリスン。SFに格好いいものを求めていたので、やっぱり表題作にはハマった。他もサンタクロースの話を初めとして格好いいものばかりなんだけど、個人的なお気に入りは弐瓶勉バイオメガ』の元ネタと信じて疑わない「眠れ、安らかに」である。

 ティプトリーは基本だよね、ということで。とはいえ、前に『20世紀SF』で「接続された女」を読んでいたものの、殆どティプトリー初心者と言っていい当時の自分にとって、いきなりこの短編集を読むことはやはりきつかった。まあ、「接続された女」のところでようやく文章に慣れることが出来て、そこからはとてもドライブ感に溢れた読書を楽しめたんだけどさ。

 そしてコードウェイナー・スミス。なんというか、ここまで並べると京大SF研は伊藤・浅倉翻訳でひたすら新人を殴り続ける読書サークルのように思えてならない人もいるかもしれないが、それは半分は正解で、もう半分は多分、僕にも原因があったんだろうと思う。今現在、新入生にこのような教育が行われているとは聞かない。

完全な真空 (文学の冒険シリーズ)

完全な真空 (文学の冒険シリーズ)

 これはオススメされたというより、当時参加した「〈文学の冒険〉全レビュー」というキチガイ染みた企画の際に余りものを押し付けられた結果読むことになった、という方が実情に近い。まあ面白いからいいんだけど、1回生にレムのレビュー担当を渡すのって殆ど殺人的だと思う。

虚数 (文学の冒険シリーズ)

虚数 (文学の冒険シリーズ)

 これもそう。『完全なる真空』よりもSFっぽくて面白かったことを覚えているが、それはやっぱりこちらが序文であることと無関係ではないのだろう。ちなみに全レビュー企画については、他にソローキン『愛』やランドルフィ『恋する潜水艦』を担当させられて、中々ハードな体験だった。

ゴーレム 100 (未来の文学)

ゴーレム 100 (未来の文学)

 アルフレッド・ベスタ―である。この本を好きな人は、当時の京大SF研にとても多かった。オールタイムベストに選ぶ人が少なくとも3人はいた。かくいう自分も大好きで、最後の方は殆どページを破きかねない勢いで読み進めていたことを覚えている。あの全能感は他にピンチョン『V.』やバラード『クラッシュ』やラファティ『第四の館』を読んでいる時くらいにしか体験したことがない。

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