インタビュー・ミシマガ「人」

 以前より「インド映画を観に行こう!」「となりのインド人」などの特集をしたり、インドと聞けばなにかと血が騒ぐミシマガ編集部。
 それも全部、ミシマ社のインド博士こと装丁家・矢萩多聞さんからの影響でございます。ミシマガの人気記事「たもんのインドだもん」を連載してくださったり、ミシマ社本や紙版ミシマガジンの装丁をお願いしたり、なにかと日々やりとりさせていただくことが多いのですが、そんな多聞さんから、またしても気になるお話が。
 なんと、壷をたたいて生活している元・会社員のご友人がいらっしゃるらしいのです。

 えええ!? 会社を辞めて壷をたたいて生活? いったいどういうことでしょう。
 ・・・よっぽどの自由人なのでしょうか。ん〜、気になります。

 ということで、多聞さんにお願いしてみたところ、さっそくご一緒にミシマ社オフィスに来てくださいました!

(聞き手、構成:寄谷菜穂、山本ひかる 写真:新居未希)

第34回 南インドの打楽器・ガタム奏者 久野隆昭さん(前編)

2014.05.14更新

事前学習、これがガタムだっ!

 気になる多聞さんのご友人とは、日本で唯一のガタム奏者、久野隆昭さん。
 噂の壷はガタムとよばれる南インドの伝統的な打楽器だったのです。壷をたたいて生活している=ガタム奏者として生計をたてられている、ということ。

 あまりにも予備知識のないミシマガ編集部は、事前学習として、久野さんのブログ(その名も「ガタム」)をこっそり拝見。

 日本ではもちろん珍しいガタムですが、インドでも希少な楽器のようです。熟練した職人さんが100個焼き上げても実際に使用できるガタムは10個あるかないか・・・というほどに、入手困難な楽器らしいのです。

 噂の壷・ガタムについて少し予備知識ができたところで、動画も発見! 太鼓のような音がするけれど、これは壷なんですね〜。
 向かって右手が、ガタムを演奏されている久野さんです。


編集部、ガタムに出会う

―― こ、この壷が「ガタム」ですか。さわってもいいですか・・・。

久野どうぞどうぞ。両手の指・手のひら・手首を使って演奏します。そんなに大きい音じゃないからイベントのときなんかはマイクで音をひろうんです。壷の側面や口をたたきわけることで、いろんな音色を出せるんです。ふつうにドレミも表現できますよ。(軽くたたいてくださる)


―― わ〜!

久野水で濡らしたり、粘土や石鹸を貼りつけたりすることで、チューニングをしたりします。

―― へええ! 南インドに行ったら、ふつうにたたいている人がいるんですか?

久野それがね、あんまりいないんですよ。コンサート会場で、地元・南インドの人に向けてやっているくらい。行くところに行けば毎日のようにやっているんですけど。ふつうに旅行で行っても、まず見ないですよね。

―― ほう。普段はだいたい何人くらいで演奏するんですか?

久野南インドの古典演奏だと、3人から6人くらいかな。



―― みんなガタムなんですか?

久野ガタムは1人。ドラムみたいな感じなのかな。ボーカルなり、バイオリンなりのメロディーの主奏者がいて、その人の伴奏で使うかんじですね。ソロのパートになったら、わって前にでて演奏したりすることもあります。

―― リズムをキープするかんじですか?

久野そうそう。比較的特徴なのが、インドの打楽器って歌う感じがすごくあって。

―― へえ〜。どんな音だか気になります。

久野あ、いいですよ。
(おもむろに上半身裸に・・・!)


―― わあ! す、すみません! 服を脱いで演奏するんですね。

久野そうそう、服を着ていると音がこもってしまうので。お腹や胸を近づけたり離したりして、音階を調節するんです。


壷だし、上半身裸だし。

―― 久野さんがなぜガタムに出会ったのかが、すごく気になるのですが・・・。

久野それね、よく聞かれるんだけど、あんまりたいしたことないというか、流れでっていつも言っています。

―― 流れで、どうガタムに出会うのかがわからないんですけど・・・(笑)。


久野そもそも音楽家になろうとか、そういうところじゃなかったので。単純に音楽は好きだったけど。まあ、あえてきっかけを探すなら、旅行が好きだったので、大学時代にバックパッカーでいろんなところに行っていたんですよ。
 そうしているうちに民族音楽聞くようになって、インドにも行って、この楽器の存在も知って・・・。社会人になったときに週末に打楽器でもできたら楽しいかな〜と思ったんですよ。

―― ふんふん。ドラムなど他にもいろいろあるなかで、なぜあえてガタムに?

久野それはね、わかんないんですよね(笑)。壷だし、上半身裸だし。キャッチーだったんだよね、ぼくにとっては。

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