(黒柳)こんばんは黒柳徹子です。
おととし92歳でこの世を去られた大女優森光子さん。
私は公私共にとても親しくさせていただいてまいりました。
今日5月9日は森光子さんのお誕生日です。
森光子さんのドラマを放送するのにふさわしい夜ということになります。
さて森光子さんは京都の芸妓さんの長女として生まれました。
お父さまは他に家庭のある人でしたのでいわゆる愛人の子供としてお育ちになりました。
さらに不幸なことに森さんが13歳のときにお母さまが肺結核でお亡くなりになり続けてお父さまも他界なさいました。
孤独と寂しさにうちひしがれながらも森さんは15歳で映画女優としてデビューします。
女優だけではなく歌手も兼業するという多才ぶりを発揮し戦時中には慰問団の一員として活躍なさいました。
戦後は再び歌手として舞台に立つようになるのですが今夜のドラマはその辺りから始まります。
でも92歳までの膨大な人生を描くわけではありません。
森さんが26歳のときから41歳で『放浪記』の初舞台を踏むまで。
この15年間にこそ大女優森光子誕生の秘話が潜んでいるのです。
私が出会うのはそれ以降ですから私の知らない森光子さんなんです。
皆さまがよくご存じの森光子さんには実はこんな物語があったということをどうぞじっくりとご覧ください。
(黒柳)
舞台『放浪記』を2,017回演じ女優として初の国民栄誉賞を受賞
テレビの役どころから日本のお母さんとして親しまれ多くの人に愛された大女優森光子
しかしもしかすると彼女は日本一寂しい女だったのかもしれません
誰の目にも「幸せ」と映った森光子の人生
その裏には誰も知らない果てしない孤独と愛が潜んでいました
(神崎)並木路子の大ヒット曲『リンゴの唄』歌うは当劇場の歌姫森光子です!
(男性)待ってました森みっちゃん!
(女性)日本一!
(光子)・「赤いリンゴに唇よせて」・「だまって見ている青い空」・「リンゴは何んにも言わないけれど」・「リンゴの気持はよく分る」お先でした!
(武春)はいお疲れさん!あ〜喉渇いた!相変わらず武春さんの一人勝ち?
(武春)当たり前やがな。
飯懸かってて負けれるかいな。
(祥子)そんなもんみんな一緒や。
はい。
(武春)はいロン頂きました!
(祥子)えっ!?あ〜やっぱりこっちやった!はい代わって代わって。
(武春)お〜やるかい?今日は負けへんよ。
・
(リチャード)光子。
リチャード。
どうしたの?
(リチャード)差し入れ。
皆さんもどうぞどうぞ。
(武春)お〜おおきにおおきに。
(祥子)いや〜ありがとう!うれしいわ〜。
いつもありがとう。
一緒に食べていけば?いや仕事あるから。
じゃあまた後で。
わ〜!サンドイッチがたくさん。
食べよ食べよ。
(武春)うん食べよ。
(祥子)も〜これやから好きやねん。
みっちゃんとおんなじ出番の日。
ホンマ助かるわ。
リチャードええやつやなあ。
よう言うわ!初めのころは「アメ公の差し入れなんか食えるかい」って言うてたくせに。
いやこんなうまいねんからお前背に腹代えられるかいな。
あっ!
(神崎)うわええな〜みっちゃん。
GIの恋人がいて。
食べ物には困らへんもんな。
彼と結婚すんの?
(武者)んなわけあるかいなお前。
ううん。
した。
(一同)えっ!?えっ「した」って結婚したん?うん。
昨日領事館で書類出してきた。
村上美津妻になりました。
・「みかんの花が咲いている」
(祥子)けどホンマみっちゃんも思い切ったな。
GIと結婚なんて。
うちやったら絶対親が反対して無理やわ。
まああの子も早くに親亡くして苦労してきたみたいやからな。
誰かに寄り掛かって生きていきたいって思ったんやろ。
・「青い海」ホントに?ホントに帰れるの?ついさっき除隊命令が出たんだ。
どうしても早く光子に教えたくて。
よかった!私もうれしい!
(武春)おいおい何や何や楽屋でいちゃつきやがって。
何かええことでもあったんか?リチャードの兵役が解けたの。
ハワイに帰れるって!
(祥子)へ〜おめでとう!えっ?ていうことはみっちゃんも?うん。
いっいつ?いつ?すぐだよ。
光子は軍用船に乗れないから僕がハワイに着いたらすぐにチケットを送るね。
うん!おいリチャード!みっちゃんのこと幸せにしたれよ。
任せてください。
任せましたよ。
(神崎・武春の笑い声)
(祥子)ホンマやで。
ええな〜ハワイ。
(神崎)なあ。
(男性)お願いします。
(女性)あいよ!
(せき)《リチャード何で?》《もう1年になるのに何で船の切符も手紙の返事もくれないの?》
(祥子)おはようさん。
おはようさん。
ま〜た書いてんの?
(せき)なあもう諦めた方が…。
(武春)みっちゃん!みっちゃん!来たで!リチャードから手紙や!
(祥子)えっ!?え〜!
(武春)よかったなあ。
(祥子)ホンマよかった!もう遅いわリチャード!
(武春)あ〜遅い。
(祥子)あ〜。
あ〜。
(武春)あ〜…もうあいつは。
何て?いつの船で来いって?
(祥子)うんうん。
どないしたんや?《結婚?》《リチャードが他の人と結婚…》《「幼なじみのアメリカ人女性と結婚した」と》《「申し訳ない」》《「仕方なかったのだ」》《「どうしようもなかったのだ」と》
(せき)
(せき)《お母さん私肺結核だって》
(せき)《このまま独りぼっちで死んでいくのかな》《愛する人と結婚をして家族揃って温かい食卓を囲みたい》《それが私の夢だったのに》《私はそんなささやかな夢を見ることもできないの?》《私はこれからどうなってしまうの?》・
(音楽)
(アナウンサー)連続放送劇『鐘の鳴る丘』を放送いたします。
(男の子)やだ!こんなやつやだ!
(女性)でもクロちゃんこの人はほっとけば死んでしまうのよ。
(男の子)死んだって構わないよ!こいつずっと昔加賀美先生に助けられたのにその加賀美先生に悪いことをしに来たんじゃないか!ひきょうじゃないか!《失意のどん底にいた私を救ってくれたのは初めて聞くラジオドラマでした》
(女性)診ていただきたいのはそこにいる人なの…。
《自分もラジオの中で演じてみたい》《芝居がしたい》《そのためには早く元気にならなくては》《闘病生活という長い孤独の中でようやく見つけた明日への希望でした》《そしてついに退院の日を迎えた私はその足でラジオ局へと向かいました》
(チャイム)
(アナウンス)ラジオドラマ『一粒の夢』の打ち合わせを行います。
担当者は3階第一会議室までお集まりください。
綿谷さん!お久しぶりです。
お元気でしたか?
(綿谷)嘘やろ?死んだんちゃうの?えっ!?
(綿谷)いやずっと姿見せんからおかしいな思ってたら「あら森みっちゃん病気で死んだわ」いうて噂聞いて葬式も出たやつおるって。
せやからてっきり…。
えっホンマ幽霊ちゃうやろね?も〜生きてますよ!ほら足かてちゃんと。
(綿谷)ほうか!何や生きてたか!はい!
(綿谷・光子の笑い声)
(綿谷)あっで今日はどないしたんや?ラジオ。
私ラジオドラマに出たいんです。
いらっしゃいませ。
あら牧田さん久しぶり。
(男性)ようしばらく。
ずいぶん奇麗になったねえ。
嫌ですよ。
そんなお世辞言ったって何にも出ませんからね。
ええなあ森みっちゃん。
あの子の勘の良さはもう天下一品やな!違う格好も見てみたいわ。
何を…。
注文いつものやつでいいでしょ?ああいいよ。
はいライスカレー一丁!
復興の勢いも大きかったその時代
ラジオに続いてテレビというものが誕生しました
当時はまだ録画の技術はなくテレビ番組は全て生放送でした
(AD)本番10秒前!
(ブザー)《生ドラマだから失敗は許されない》
(女性)あなた1つお聞きしたいことがあります。
(男性)んっ?
(女性)珠美さんって誰?お前俺を信用できないのか?何か空気悪いわね。
あなたそこの窓開けてちょうだい。
あっ。
あらさお持って釣りですか?いってらっしゃい。
(女性)まったく…。
(武春)しかしみっちゃんは機転が利いていいなあ。
舞台でもラジオでも重宝がられて大活躍や。
テレビでもね。
(武春)うん。
うん。
これからの世の中はテレビやと思う。
は〜そうか?テレビなんか置いてる家少ないぞ。
それに比べてラジオはどこの家にでもある。
ぎょうさんの人が聞く。
やっぱラジオやろ。
テレビだってきっとこれからどんどん増えるって。
そしたら私たち役者の顔もたくさんの人に知ってもらえるし。
けど顔が出るってことは結局映画とおんなじで奇麗な人しかいい役もらえないってことやないの。
そしたら私なんか無理やし…。
(武春)うんうん。
いや…声と芝居で勝負してる方がええわな。
テレビは映画と違うって。
もっと身近なんよ。
こう身近ってことは現実の世界と同じようにいろんなタイプの人間が…つまり役者がね必要なわけよ。
まあ確かに映画映えせんような小柄な役者やったらテレビの小ちゃい画面の方がいいかもしれんな。
でしょう?絶対これからはテレビ。
日本中のみんながテレビを楽しむようになる。
(男性)お疲れさまです。
お疲れさまでした。
(神崎)みっちゃんお客さん。
どうぞ。
(愛彦)すいません。
(愛彦)あっ初めまして。
あのNHK大阪でテレビドラマのディレクターやってる岡本です。
初めまして。
森光子です。
あっ今度僕が演出する作品です。
(愛彦)喜劇ではありませんがぜひ出ていただきたいんです。
あっ…大きな役ではないんですけど重要な芝居があります。
読んでみてください。
よろしくお願いします。
あっあの…。
はい。
あっ…はい。
読ませていただきます。
(神崎)何や。
ファンやなかったんか。
えっ?いや今の人ようみっちゃんの舞台見に来てるから。
そうなん?うん。
《それなのに喜劇じゃないドラマを私に?》《大きなチャンスが来たのかも》神山先生!
(女性)待っています。
(男性)先生は悔しい!
(愛彦)ちょっと待った。
初めはあくまで内にこもった不安です。
これから自分たちはどうなるんだろう。
彼を見る目。
何か言いたいんだけどこううまく言えない唇。
静かに静かに爆発していく不安。
いいですね?はい。
あんな楽しいリハーサル初めて。
作り手の熱い気持ちがねもう部屋中に広がる感じ。
(武春)ふ〜ん。
でも何でわざわざみっちゃん呼んで喜劇やないねん。
森光子いうたら喜劇やろ。
うん。
私もそれはびっくりした。
怒られたりしてない?怒るとかじゃないんよ。
役に対するアドバイス。
一緒にこの役を作っていきましょうっていう感じがもうすごくうれしくて。
だって今までそんな経験なかったから。
でも普通の芝居いうたらやっぱ勝手違うやろ。
大丈夫か?まあちょっとは不安やけどね。
でも頑張ってやってみせる。
せっかく岡本さんが声掛けてくれたんやもん。
あの人若いけどホントすごい演出家だと思う。
んっ…何?なあ。
んっ?ほれたか。
アホらし。
演出家として尊敬してるの。
あ〜そう。
ほれたか。
違うて!・
(神崎)武春さん祥ちゃんお願いします。
(武春)はいはいはいほれたかほれたか。
ほ〜れたほれた。
ちょっ…。
ほれたほれた。
(祥子)キャッ。
あんたらええかげんにしとき!
(祥子)あ〜もう嫌やわ。
(神崎)ホホホホ…。
神山先生。
(女性)待っています。
(AD)はい放送終了しました!お疲れさまでした!
(一同)お疲れさまです。
(愛彦)お疲れさまでした。
皆さんのおかげでいい番組が放送できました。
ありがとうございます。
(女性)お疲れさまでした。
(愛彦)お疲れ。
(男性)お疲れさまでした。
(愛彦)良かったよ。
またよろしくね。
(男性)お願いします。
(男性)お疲れさまでした。
(愛彦)あっご苦労さま。
(男性)お疲れさまでした。
(愛彦)ご苦労さま。
(男性)お疲れさまでした。
あっお世話になりました。
ありがとうございます。
お疲れさまでした。
ありがとうございました。
あの私の芝居…。
僕の目に狂いはなかった。
えっ?森さんあなたは喜劇女優で終わっちゃいけない人だ。
またぜひ一緒に仕事しましょう。
はい。
そんな中森光子の予想どおり新しい情報源であり娯楽であるテレビは確実に人々の生活に浸透していきました
(女性)森みっちゃんだ。
カワイイね。
森みっちゃん頑張って。
(男性)うわ森みっちゃん!いつもテレビ見て笑わせてもろてるで。
ありがとうございます。
あんたの喜劇好きやわ〜。
頑張りや。
はい。
これからも頑張ります。
《喜劇の森光子》《うれしくなくはないけれどやっぱり喜劇じゃなくてもっと本格的な…》
(チャイム)
(アナウンス)『テレビで一緒』にご出演の山田さま。
第二スタジオへお入りください。
すいません。
テレビドラマの岡本ディレクターお願いしたいんですけど。
岡本はこちらを辞めましたが。
えっ?「辞めた」ってじゃあどちらに…。
東京の民放に移りました。
東京?あっそうですか…。
《彼だったら女優森光子も女としての美津もきっと高みに連れてってくれる》《そう思ったのに》《私の勝手な思い込みだったっていうの?》《またぜひ一緒に仕事しましょう》《いつもチャンスが逃げていく》よろしくお願いします。
・
(神崎)みっちゃん!みっちゃんみっちゃん!この場面急きょ変更。
えっ?頭から出て最初の8分元気に明るくアドリブでよろしく。
あっはい。
(ブザー)
(岸)いや〜東京の菊田先生に作演出を手掛けていただけるなんて当劇場としては本当に光栄です。
(菊田)台本完成したら送るからね。
(岸)楽しみにお待ちしております。
(スタッフ)申し訳ございません。
ハイヤーがちょっと遅れておりまして。
もう少しお待ちいただけますでしょうか。
いや遅れるってどれくらい?先生汽車の時間がおありなんだから。
(菊田)まだ時間あるから。
1時間待つわけじゃないんでしょ?
(スタッフ)はい。
3分か遅くとも5分後には。
そう。
じゃあ中の様子でも見ながら待ちましょ。
(岸)あっはい。
おい。
(スタッフ)あっすいません。
明るく元気に8分8分。
元気に8分。
(男性)待ってました!森みっちゃん!さ〜て洗濯物干さなきゃね。
(男性)おう!早干せ干せ!
(男性)干せ干せ!よいしょ…よいしょよいしょ。
ハァ〜。
あれ?・「おーい船方さん船方さんよ」・「お月さん今晩は」・「噂をきいたら」
(男性)よっ森みっちゃん!
(男性)日本一!
(男性)日本一や!
(男性)最高やで!あの子年は17〜18?
(岸)えっ?いや確か38かと。
38?あっそう。
(スタッフ)お待たせしました。
ハイヤー参りました。
(岸)うん。
どうぞ。
・「俺は待ってるぜ」
(男性)森光子!
(女性)お疲れさん。
お疲れさま。
(岸)え〜っと…あ〜森みっちゃん大変や大変!来月菊田先生が次の芝居の稽古にいらっしゃるんやけどな…。
えっ菊田一夫先生分かるか?もちろん分かります。
演劇界の四天王のお一人ですもん。
(岸)そうそうそう。
その菊田大先生が森みっちゃんに会ってくれるて。
えっ!?何でです?いや分からん。
ただ今日の森みっちゃんの頭の芝居をちょこっと見た後にな…。
《来月来たときあの子呼んどいて》《はっ?》《今の年齢不詳の子》《今度こそつかまなきゃ》《絶対につかんでみせる》ねえあしたどうなってんの?先生連れてまいりました。
(菊田)んっ?おはようございます。
森光子です。
ああ…。
あっ座んなさい。
はい。
失礼します。
(菊田)うん。
君東京の芸術座でちゃんとした本の芝居に出たくないかい?出たいです!そう。
じゃあ連絡するから。
もういいよ。
え〜っと…。
よろしくお願いします。
芸術座!東京!ア〜ハハハ…!
(祥子)みっちゃんあんた大阪捨てるの?捨てるなんてそんなこと言ってない。
(武春)言うとるがな。
違うて!私は…。
(祥子)東京に引っ越すんでしょ?大阪捨てて東京選んだってことでしょ?私はただこのチャンスを生かしたいって…。
(武春)菊田一夫に声掛けられてアホらしゅうてもう大阪で喜劇なんかやってられんてか。
そんなこと言ってない!東京の方が偉いって思ってるんや。
偉いとかそういうんじゃないって!じゃあ何なの!?一緒に喜劇頑張ってきて大阪の芸能盛り上げてきたやないの!みっちゃんが売れっ子になったの仲間として誇りやったんよ?それやのに私ら捨てて東京行くやなんてそんなに普通の芝居がしたい?したい。
(武春)ハハ。
まあみっちゃん前から新しいもん強いもんにひょいひょいうまく乗っかってく女やったからな。
ひどい。
何それ!
(武春)もうええ。
話もしとうない。
アホらしい。
行くで。
(祥子)あ〜いのいて〜。
お疲れさ〜ん。
チャンスを生かして何が悪いのよ!
(コハル)ここまで大きくなった森光子が何でいまさら東京に行かなあきませんのや。
(コハル)菊田先生に言われて心が動くのは分かる。
けどな主役で呼ばれたわけでもちゃんと芝居が決まってるわけでもないんやろ?ちょっいやいやいや…あんたあんたまさかあんた主役なんてアホな期待してるんやないやろな。
あんな人にはそれぞれ役割がある。
脇役はどこまでいったって脇役や。
あんたしょせん脇役なんやで。
まあそれでもよう頑張ってなようここまできたわ。
もうすっかり大阪の人気者や。
それやったらそれでもうええやないの。
何もあんた東京行ってまたゼロから始めることないやろ。
まして下手な夢なんか見るもんやない。
何でです?何で夢見たら駄目…。
(コハル)私はあんた親心で言うてんねんで。
もうそんなんも分かれへんなんてもうはっ…はっもう情けないわもう。
・
(ノック)・
(スタッフ)コハル先生お願いいたします。
は〜い。
いい気になってると痛い目見まっせ。
いい気になってるわけではありません。
本気で夢を実現したいだけです!
(菊田)《君東京の芸術座でちゃんとした本の芝居出たくないかい?》《あなたは喜劇女優で終わっちゃいけない人だ》
(アナウンス)今月はテレビ普及月間です。
テレビの魅力を広く伝えていきましょう。
(チャイム)・
(愛彦)森さん。
お久しぶりです。
連絡もしないで伺ったりしてすみません。
とんでもない。
うれしいです。
(愛彦)東京へは旅行ですか?いいえ。
じゃあ…。
私芝居をするために出てきました。
そうですか。
菊田先生が。
はい。
私どうしてもこのチャンスを逃したくなくて。
そりゃそうだ。
役者なら誰だってそう思う。
そうですよね?そうなんです。
だから私どんなことがあっても絶対に頑張ってみせるって。
森さんらしいな。
えっ?お仕事でご一緒したときあなたのバイタリティーはじゅうぶん感じてましたから。
そうか。
じゃあまた一緒に仕事できるわけだ。
何かあったらお願いしてもいいですか?はい。
ぜひお願いします。
(愛彦)もしかして東京駅から真っすぐここに?あっあの東宝との約束の時間まで間があったので。
あっでも時間つぶしとかそういうことではなくて…。
頼りにしてくれてうれしいです。
男の僕だって最初は心細かった。
いつでも気楽に連絡ください。
いっいいんですか?もちろん。
ありがとうございます。
(菊田)お茶子の役ね。
(菊田)稽古は来週から。
はい。
よろしくお願いします。
ちょっと立ってみて。
はい。
君芝居は面白いけどやっぱり脇の人だね。
もういいよ。
失礼します。
(ため息)《脇役はどこまでいっても脇役や》《あんたはしょせん脇役なんやで》
(菊田)この下手くそ!
(菊田)そんな芝居しかできないんだったらなさっさと国へ帰ったらどうだ!さっきのあれ良かったよ。
あれでいきなさい。
(都志子)はい!ありがとうございます!
(スタッフ)休憩にします!休憩!
(杉森)すいませんでした!
(都志子)次はちゃんとやってね。
でもまあ怒られるだけ見込みがあるってことよ。
言われるうちが華ってね。
何にも言ってもらえないよりましよ。
(鈴江)ホント。
誰かさんはわざわざ大阪から呼ばれたのに何にも言われないもんね。
よっぽど見放されてるのかそれとも何か特別な理由でもあんのかしらねえ。
純情そうな顔して怖い怖い。
主役クラスならともかく脇にそういう特別な女優さまがいるとやりにくいわよねえ。
(鈴江)ねえ。
やだやだ。
ガマ口はんご寮さん白い喪服着てはる。
しっ…。
(杉森)堪忍してやってくれなはれ。
(男性)そりゃ勝手だな。
(鈴江)お父はん。
(都志子)お多加!あんた何でそんな白い喪服着てますの?ガマ口はんご寮さん白い喪服…。
あっあのな気持ちはそれでいい。
真っすぐに来るの分かる。
でもお客さんがいるんだからもっとそこでこの今のこれ…これを聞いて。
(鈴江)はい。
再縁はしないという誓いの印の喪服だっせ。
ガマ口はんご寮さん…。
(鈴江)《怖い怖い》《「あいつよりうまいはずだがなぜ売れぬ」》あっどうです?稽古の方は。
順調?ええまあ…。
何かありました?分からないんです。
何が?怒られも褒められもしないのってどうでもいいってことなんでしょうか?あっごめんなさい。
岡本さんにこんなこと。
菊田先生がどうでもいい芝居をする役者を自分の舞台に立たせると思いますか?でもやっぱり不安で…。
誰だって不安です。
僕だっていまだに不安だらけだ。
(愛彦)それを解消するには自分でとことん考えて試行錯誤して自力で道を開いていくしかない。
そう思ってます。
森さんあとはあなたしだいなんですよ。
あなたが女優としてどう生きたいのか。
そのためには何をするべきなのか。
その答えを持ってるのはあなただけなんですから。
そうですよね。
小言や褒め言葉待ってるなんて甘えた考えでした。
ありがとうございました。
私頑張ります。
白い喪服はもうどんなことがあっても再縁はしないという誓いの印の喪服だっせ。
でもあては吉三郎の妻だす。
はい!終わり。
お疲れさまでした。
(一同)お疲れさまでした。
ありがとうございました。
(菊田)森みっちゃん。
はい。
ずいぶん稽古してきたみたいだね。
良くなったよ。
ありがとうございます!でももっと…もっとね。
はい!
(愛彦)それはよかったですねえ。
頑張りましたね。
ありがとうございます。
でももっと頑張らないと。
初日まであとひとつきか。
緊張します?楽しみの方が大きいです。
うん。
さすがみっちゃん。
そうじゃないと。
えっ…。
あっすいません。
あの「みっちゃん」だなんて。
あっいえ。
そっそう呼んでください。
何かうれしいな。
あっ…。
じゃあ私も「愛彦さん」って呼んでもいいですか?あっもちろん。
(店主)はいお待ち!
(愛彦)どうも。
どうぞ。
あっありがとう。
いただきます。
いただきます。
あっち!ハッ大丈夫?大丈夫。
熱いけどおいしいです。
愛彦さん今どんなドラマを?ああ『私は貝になりたい』というドラマです。
(愛彦)これ。
(愛彦)平凡な理髪店の男が戦後突然戦犯として逮捕され処刑されるまでを描いたドラマです。
戦争の理不尽と悲劇をやりたくて。
私も出たかったな。
愛彦さんのそういう人間の心に響くドラマ。
今度ぜひ何かの役で出してくださいね。
あっええ。
あっごめんなさい。
ずうずうしかったですね。
あっいやそんなことないです。
もちろんぜひ。
お願いします。
(菊田)いや〜ありがとう。
あっ森みっちゃん良かったよ。
楽までこの調子でね。
はい!ありがとうございます!
(菊田)あっお疲れさんです。
すいません。
(愛彦)初日おめでとう。
良かったよ。
ありがとう。
これお祝い。
楽屋ででも使って。
ありがとう!奇麗。
うれしい!大切にします。
うん。
え〜…。
『花のれん』は大成功のうちに終わり森光子の演技は評論家たちから高い評価を受け大絶賛されました
それと同時に森光子の恋人である岡本愛彦氏も芸術祭文部大臣賞を受賞し一流の演出家の地位を得たのです
(瞳)森さん岡本愛彦さんと仕事したことあるんですって?ええ。
大阪時代にね。
そのころからやっぱりカッコ良かったですか?そうね。
そのころから才能もあったしね。
きっとモテるんでしょうね。
でも奥さんがいるんですよね?そっ…そうなの?いるんですって。
噂によるとご病気らしいんですけどね。
肺結核っていったかな。
(菊田)小山田初枝役ね。
まあ脇だけど重要な役だからよろしく。
はい。
よろしくお願いします。
失礼します。
何かあった?えっ?フフフ。
元気ないから。
何にも。
元気です。
頑張ります。
フフ。
芸術祭おめでとうございます。
ありがとう。
実は話さなきゃいけないことがあって来てもらったんだ。
私もお話があって来ました。
先に僕の話から聞いてくれ。
僕には妻がいる。
知ってます。
だからお別れを言いに来たんです。
知ったのはついこの間です。
それまでは知らなかったからだから私好きになったりして…。
でも知ってしまった以上もう無理です。
妻とは別れる。
バカなこと言わないで!病気の奥さまからあなたを奪えるわけないでしょ!肺結核の苦しみは誰より私が知ってるの。
母もそれで亡くして私自身も何年も苦しんだもの。
その私にそんなひどいことさせないでください!今までのことは感謝してます。
ありがとうございました。
さよなら。
《今度こそ幸せになれると思ったのに》《私の幸せは何でいつもUターンして消えていくんだろ》熊はん権利書…権利書返して!権利書返せ!熊はん権利書…権利書返して!権利書返せ!妻と別れた。
帰ってください。
私はもうあなたとは…。
離して!離さない!ずっと一生離さない!頼むから僕の前から去らないでくれ!僕には村上美津が必要なんだ。
前に僕のドラマに出たいって言ってくれたよね。
あのとき僕はちゅうちょした。
それで自分でも嫌っていうほど分かったんだ。
僕が求めてるのは…森光子という素晴らしい女優以上に僕に必要なのは…。
あなたという一人の女性だって。
愛してる村上美津を。
もちろん森光子も。
あなたの全てをどうしようもなく愛してるんだ。
(記者)来たぞ!
(記者たち)森さん。
(記者)岡本さんとはどういう関係なんですか?
(記者)岡本さんと付き合ってるんですか?
(記者)一言下さいよ。
森さん!
(記者)森さん!
(記者)岡本さんを奥さんから奪ったんですか!?
(記者)これで主婦敵に回したな。
(記者)いくら菊田一夫の秘蔵っ子だっていったってこのスキャンダルじゃ岡本はともかく森光子の方はつぶれるな。
(記者)確かに。
ハハ。
この人ね吉田君。
今日から君のマネジャーだ。
えっ?
(吉田)初めまして。
吉田名保美と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
森光子です。
こちらこそよろしくお願いいたします。
吉田君はね大物政治家の有能な秘書だったんだよ。
お奇麗ですね。
何か吉田さんの方が女優さんみたい。
ハハハハハ…。
ウフフ…。
まあまあ座って。
(菊田)ハァ〜。
芸能人の私生活を一般の人が興味を持つ。
まあ言ってみれば豊かな時代になったっていうことかな。
森光子さんはいろんな意味で先駆けですね。
(菊田)まあね森みっちゃんも大人なら岡本君も大人だ。
結婚するかどうかは2人で決めればいい。
ただしね覚悟だけはちゃんと持っとくんだよ。
はい。
ご迷惑お掛けして申し訳ありません。
あっところで林芙美子って知ってる?ええ名前だけは。
小説家ですよね?
(菊田)来年やる予定の芝居なんだけどね脇で林芙美子が出てくるんだ。
それ森みっちゃんだから。
あっはい。
まあ時間があるからね参考に彼女の小説も読んどいて。
はい。
森光子と岡本氏の結婚は人気女優と著名演出家のカップルということで世間をにぎわせました
舞台女優としての実力もますます向上し森光子は公私共に幸せをつかんでいったのです
おはよう。
おはよう。
舞台で疲れてるんだからパンでいいのに。
別に疲れてないもの。
出ずっぱりなわけじゃないし。
あっパンの方がよかった?味噌汁の方が好きです。
ただみっちゃんの体を心配してるだけ。
ありがとうございます。
じゃあいつか私が座長になったらパンで許してね。
そうなったら僕が作るよ。
何か手伝えることある?大丈夫。
んっ?もうすぐできるから新聞でも読んでて。
じゃあお言葉に甘えて。
(吉田)う〜ん。
どうしたの?そんなしかめっ面して。
やっぱりきついんですよねえ。
前田プロデューサーのドラマ入れたら休みなしですもの。
お断りした方がいいんじゃないですか?駄目駄目。
頂いたお仕事お断りするなんて。
そんなぜいたく言ったら罰が当たります。
でも忙し過ぎですよ森さん。
仕事だけじゃなくておうちのこともちゃんとやって…。
大丈夫ですか?大丈夫よ。
ちゃんと切り替えてるもの。
仕事のときは森光子。
うちに帰ったら村上美津。
岡本美津でしょ。
あっそうでした。
とにかく光子も美津も大丈夫。
(菊田)森みっちゃん。
あっはい。
ことしの秋林芙美子の『放浪記』やるから。
芙美子よろしくね。
あっえっ…。
『放浪記』の芙美子って主役ってことよね?ええ。
そうですよね。
そうですよ!主役よね?アハ。
主役だって!私が主役?よかったですね。
おめでとうございます。
え〜すごい!
(ドアの開く音)愛彦さんやったの!主役もらった!ホントに?えっ…いつの?何の芝居?10月。
林芙美子の『放浪記』私が芙美子!そっか。
ついにか。
おめでとう。
ホントにおめでとう。
ありがとう。
何か幸せ過ぎて怖いみたい。
怖がることなんてないよ。
今までどおり頑張ればきっとうまくいく。
うん。
『放浪記』の連絡来た?いえまだですよ。
そう…。
(菊田)《君芝居は面白いけどやっぱり脇の人だね》ただいま。
おかえりなさい。
まだ台本届かないの?うん。
やっぱり私に主役なんて無理だったのかも。
他の人がやるのかな?林芙美子。
本気でそんなこと思ってんの?だって…。
大丈夫だよ。
何も心配しないで待ってればいい。
いや林芙美子のこと勉強して準備してればいい。
ホントにそう思う?ああ。
林芙美子は君のものだ。
大丈夫。
(菊田)ハッ。
待たせたね。
林芙美子よろしくね。
ホントに私が主役なんですか?自信ない?いえ。
やります。
やらせていただきます。
森光子が41歳にして初めて手にした主役の座でした
(菊田)え〜それでは主役の林芙美子を演じる森光子さんです。
みんなで盛り立てて力を合わせていきましょう。
じゃ森みっちゃん。
はい。
森光子でございます。
皆さまのお力を頂きながら精いっぱい努めさせていただきます。
『放浪記』が多くのお客さまに深く愛される舞台になりますようどうぞよろしくお願いいたします。
え〜次は…ああ日夏京子。
(鈴江)え〜光栄にも…。
(鈴江)ねえねえねえねえ。
大丈夫かしらね?あの座長さん。
(杉森)脇でうまくったってね主役の芝居はまた別物だからねえ。
抜てきした菊田先生の顔に泥塗るようなことにならなきゃいいけどねえ。
(杉森)まっお手並み拝見といきましょう。
(都志子)フフ。
(鈴江)ね〜。
(菊田)違う違う!違う!この台本のいったい何を読んでるんだ。
座長が理解できてなくてどうする!すみません。
もう一度お願いします。
あ〜!すみません。
もう一度お願いします。
(男性)じゃあいきます。
よ〜いはい!
(手をたたく音)私偉くなんかなれないよ。
あんたを引きずってく力だってないよ。
そりゃ偉くなりたいと思う。
だから尾道から出てきたのよ。
何やってるの?ごめんなさい。
起こしちゃった?そんなこといいから早く寝ないと。
おだしとお米だけだからすぐ終わるし。
そんなむきになって家事やらなくたっていいだろう。
別にむきになんて…。
なってるよ!誰も頼んでないのにそんな何でもかんでもやろうと思うなって。
私がやりたいの。
大丈夫だから。
ねっ?僕のためだっていうんだったらやめてくれ。
別に局の食堂で食べればいい…。
そんなのやめて!無理なんてしてないから。
本当よ。
分かった。
でももう今日は遅いから寝よう。
はいはい。
うわ〜!はい。
やり直しだ。
やり直し。
いいかい?ここはね芙美子の人生の中での喜びの絶頂を表現しなきゃならないんだよ。
だからまず大きく手を上げてここから1回2回とでんぐり返しを打つ。
はい。
(菊田)そして女占い師につかまる!で彼女の力を使ってだね今度は後ろに1回回るんだ!それで喜びが表現できるんだよ!はい。
(菊田)いいね?いいね!?じゃあもう一度だ。
もう一度。
はいすいません!すいません。
もう一度お願いします!ほらほらとうとう出たぞ!うわ〜!すいません!もう一度お願いします!すいません。
はいはいはい。
森みっちゃん。
はい。
(菊田)ん〜ちょっと。
ちょっと。
はい。
やっぱり荷が重かったかね?そんなこと…。
君主役ってもの座長ってもの分かってる?このままじゃ君はこの芝居を殺すことになる。
当然森光子も死ぬだろうね。
自信がないんだったら今のうちにやめといた方がいい。
嫌です。
やらせてください!じゃあこれからは「すみません」は禁句です。
謝る前にちゃんとやりなさい。
せ〜の。
『放浪記』林芙美子。
ほらねとうとう出たぞ!うわ〜!もう!ん〜もう!とうとう出たぞ!
(一同)お〜!もう一回いきます。
もう一度お願いします。
うわ〜!あっあ〜。
(男性)お〜。
うわ〜!あっ…。
もう一回いきます!よし。
ほら!とうとう出たぞ!うわ〜!うわ〜!
(一同)お〜!
(男性)お〜すごい!
(男性)やったな。
はい。
はいはいはいはい。
いやいいでしょう。
やるじゃない。
その調子でね。
(菊田)じゃあもう一度あの…頭から同じとこ。
座長よろしく。
はい。
よし。
ほらほら『放浪記』林芙美子!ほらね!とうとう出たぞ!
(一同)お〜!「今日は8時には帰ります」「一緒にごはん食べましょうね」「美津」
(一同)・「北はサガレン南はジャバよ」・「浮草ぐらしのバクレン娘」ハハハハハ…。
ホントですよ。
10回も。
(記者)10回も?ハハハハハ…。
(一同)・「好きな主さん探して渡りや」・「拡い荒野に種まきしてござる」アラエッサッサ〜!
(一同の笑い声)
そしてついに『放浪記』は初日を迎えました
(スタッフ)すいません。
私昔から上がり症で学芸会や受験の日母がいつもこうしてくれたんです。
そしたら不思議と落ち着いて。
もう少しの間お願い。
ええ。
(アナウンス)菊田一夫脚本演出『放浪記』5幕9場間もなく開演いたします。
(ブザー)・
(音楽)何で静かなの?拍手は?いや分からない。
どうしたんだ?・
(拍手)
(男性)先生おめでとうございます。
(菊田)お〜よかったね。
よかった。
本当によかった。
ありがとう。
岡本君。
よっ。
ちょっと…。
いやどうも。
素晴らしい舞台でした。
ありがとうございます。
いやこちらこそありがとう。
あっ森みっちゃんとこ一緒に行きましょ。
あっいえ。
僕はこれで。
会っていかないの?
(愛彦)ええ。
では失礼します。
初日めでたく大入り袋も出て本当にお疲れさまでした。
(一同)お疲れさまでした!あしたからまた頑張るためにも初日の乾杯といきましょう。
(男性)いただきます!
(男性)ありがとうございます!
(杉森)何?座長の差し入れ?初日だもの。
でも飲み過ぎちゃ駄目よ。
先生乾杯の音頭よろしくお願いします。
ハハ。
あっありがとう。
あ〜いいかな?みんな。
それでは初日の成功とそして明日からのさらなる進歩に乾杯!
(一同)乾杯!頑張りましょう!
(一同)お〜!
『放浪記』は現在の芸術祭大賞に当たる芸術祭文部大臣賞を受賞し森光子は一躍時の人となりました
あ〜。
(吉田)失礼します。
荷物こちらでいいですか?ええありがとう。
もういいわよ。
帰ってちょうだい。
何かお手伝いすることあったら…。
ないから。
これは私の仕事だから私がやらなきゃ意味がないの。
だって妻の仕事だもの。
約束したんだもの。
女優も妻もちゃんとやるって。
愛彦さんは「無理してる」って言うけど全然そんなことないのよ。
だって私家事だって大好きなんだから。
ものすごく得意なんだから。
私偉くなんかなれないよ。
あんたを引きずってく力だってないよ。
そりゃ偉くなりたいと思う。
私偉くなんかなれないよ。
・
(ドアの開閉音)おかえりなさい。
まだ起きてたのか。
何か眠くなくて。
何で隠す必要がある?別に隠したわけじゃ…。
「家に仕事を持ち込むな」なんて僕が言ったことあるか!?ないだろ!なのに何で隠す必要がある?僕を悪者にしたいのか?いや確かに悪いのは僕だ。
森光子を結婚させてしまったんだからな。
何でそんなこと言うの!?私は幸せよ!森光子としても村上美津としてもあなたと結婚して幸せよ!だから頑張れたの。
これからだって頑張れる!その頑張りが男には重いんだよ!もう無理だ。
別れてくれ。
嫌。
別れたりなんかしない。
あなたのことが好きであなたに尽くしたいって思うことがそんなにいけないこと?女優だけじゃなく女としてもちゃんと愛されたいって思うことがそんなにいけない?そんなに嫌?だったら何で私と結婚したのよ!何で「一生離さない」なんて言ったのよ!森光子がこんなに大きくなるなんて思わなかったから?だったらやめる!森光子なんかやめてやる!そんなことできるわけないだろ!できるわ!森光子は関係ない。
僕に好きな人がいる。
嘘…そんなの嘘よ。
嘘なんかじゃない!だから頼む。
別れてくれ!あとは全て森光子さんに任せます。
荷物近いうちに取りに来るから。
(記者)おい来たぞ!
(記者)すいません森さんご主人との不仲が噂されてますけどホントですか?
(記者)別居なさってるんですか?
(吉田)とんでもない。
仲良くしていますからどうぞご心配なく。
(記者)森さん一言頂けますか?
(記者)森さん!
(記者)森さん!
(記者)森さん!
(記者)森さんこっち向いて…。
尾道はこだまの町なり。
山が呼び掛け海が答える。
ありがとうございました。
涙が出てきたわ。
人間はね…人間は食わなきゃ死んじまうんだよ。
死にそうにならなきゃ…。
(愛彦)行くよ。
村上美津を幸せにしてあげられなかったことごめん。
じゃあ。
・
(ドアの開閉音)だから尾道から出てきたのよ。
だけど女一人の力じゃこんな競争の激しい世の中でとても…とてもとても何ともなりゃしないって思ったからある新劇の役者の嫁さんになった。
この新聞見たんだよ。
この林芙美子だ。
この林芙美子だって言ったんだよ。
ついでに新聞もらってきたんやった。
『放浪記』林芙美子。
ほらねねっ!ほらほら出た!とうとう出たぞ!うわ〜!花の命は短くて苦しきことのみ多かりき。
花の命は短くて苦しきことのみ多かりき。
(記者)あっホントですか?
(記者)どうも久しぶり。
・
(ドアの開く音)先生今日はお世話になります。
うん。
大丈夫?ええ。
まあねしょうがないんだよ。
女優の仕事と結婚は両立するわけがない。
ましてや君は主役だからね。
主役の座と妻の座両方は無理だ。
どっちか選ばなきゃ。
君の選択は正しい。
ありがとうございます。
あっこれね君に渡してくれってね岡本君に頼まれた。
(愛彦)「前略」「まずは今日の記者会見のことあなた一人に背負わせてしまい申し訳ありません」「心よりおわびします」
(愛彦)「芸術座での『放浪記』の再演拝見しました」「初演のときからまたさらに一皮も二皮もむけた林芙美子に深く感動しました」
(愛彦)「森光子という素晴らしい女優と出会えたことその高みへの羽ばたきをそばで感じられたことの幸せを今しみじみと感じています」
(愛彦)「ありがとう」「本当にありがとう」
(愛彦)「森光子さま」
(愛彦)「岡本愛彦」前にね岡本君に聞いたことがあってね。
「森光子にどんな役が合うと思う?」って。
(菊田)《いや君のことを見込んで聞くんだけどね森光子って女優にはどんな役が合うと思う?》《林芙美子です》《これはまた即答ですか》《彼女には絶対林芙美子をやらせるべきです》《生意気な男だね》《私と同じこと考えてるなんて》《えっ?》《やっぱり『放浪記』だね》《年齢不詳の森光子には林芙美子の一代記がぴったりだ》《当たれば幾つになっても演じ続けられるだろうしね》《楽しみだ》《ところで森みっちゃんと結婚でもするつもり?》《彼女が何か?》《あの子は何も言わないよ》《でもそう…だけどあれだね》《森みっちゃん結婚しても仕事辞めないよ》《もちろんです》《彼女の才能も何もかもひっくるめて僕には掛け替えのない人ですから》
(菊田)彼も森光子の育ての親ってわけだ。
育てて…そして守ったんだね。
彼も君もお互い傷ついて血を流しながらね。
そうですね。
たくさん血を流した気がします。
誰か1人人が死んだくらいたくさんの血を…。
あのとき美津は死にました。
私がこの手で殺しました。
先生。
んっ?私森光子を生きます。
女優として生きて生きて森光子を全うします。
森光子にしかできないことがある。
それを一生かけておやりなさい。
はい。
皆さま本日はお忙しい中私森光子の離婚の報告の場にご足労いただきありがとうございます。
アラエッサッサ〜!
(一同)お母さん。
(男性)お疲れさま〜。
お疲れさま。
(2人)お疲れさまです。
(女性)お母さんお茶どうぞ。
ありがとう。
(男性)お母さんNGすいませんでした。
その後森光子はみんなから「お母さん」と呼ばれ慕われていきました
よ〜。
んっ。
(男性)あ〜。
はい。
(男性)お母さんド〜ン!えっ?
実生活では母親にはなれなかったけれど日本一のお母さんになったのです
彼女の周りにはいつも人の輪がありました
多くの人に愛された彼女は飛び切り明るくそして飛び切り孤独でした
飛び切り強く強い分だけ孤独でした
一生森光子でいようと決めたときからのそれが彼女の運命だったのです
(光子)ただいま!
そして92歳のその日まで彼女は見事に森光子を演じきりました
女優としての誇りを胸に
2014/05/09(金) 21:00〜22:52
関西テレビ1
金曜プレステージ・森光子を生きた女[字][多]
日本一愛されたお母さんは、日本一寂しい女だった…壮絶略奪婚、主役への執念、女優と妻の葛藤…そして離婚。放浪記誕生の裏に隠された人生最大の悲劇、今夜解禁。
詳細情報
番組内容
終戦後の大阪で、森光子〈本名:村上美津、当時26歳(仲間由紀恵)〉の肩書きは歌手だった。光子はGIと結婚し、先にハワイへ帰った彼に何度も手紙を書き、連絡を待つが…。
光子は13歳の時に亡くなった母と同じ肺結核にかかり、長く苦しい闘病生活を送る。失意のどん底にいた光子を救ったのは、初めて聞くラジオドラマだった。光子は退院したその足でラジオ局へ向かい、瞬く間にラジオ界で人気の喜劇女優になっていった。
番組内容2
昭和28年、テレビが誕生。当時はすべて生放送で、機転の利く光子は重宝がられた。そんな時、光子を訪ねてきたのはNHK大阪でドラマのディレクターをしている岡本愛彦(藤木直人)だった。初めての喜劇ではないドラマの役と、岡本の熱い演出に光子はどんどん引き込まれていった。
その後、光子は岡本を訪ねるが、すでに岡本は東京の民放へと移っていた。
数年後、光子は、当時の演劇界を牽引する演出家・菊田一夫(石坂浩二)
番組内容3
の目に止まり、「東京で芝居してみないか?」と誘われる。大阪の喜劇女優の桂木コハル(久本雅美)らは、東京進出に舞い上がる光子に冷やかだった。
菊田は、脇役の光子を気にも掛けない様子で、稽古が進んでいく。光子は岡本にしばしば芝居の相談をしながら、2人の距離は縮まっていった。
岡本が芸術祭で文部大臣賞を受賞し、実は岡本には妻がいるということを知った光子は、別れを告げに行くが…。
出演者
森光子: 仲間由紀恵
岡本愛彦: 藤木直人
吉田名保美: 市川実和子
柳田武春: ケンドーコバヤシ
吉永祥子: 三倉佳奈
綿谷真太郎: ミスターちん
神崎ユージ: 宮地大介
佃都志子: 田根楽子
杉森圭一: 大波誠
桂木コハル: 久本雅美
菊田一夫: 石坂浩二
【ナレーション】
黒柳徹子
スタッフ
【脚本】
龍居由佳里
【編成企画】
太田大
【プロデュース】
栗原美和子
【協力】
森光子芸能文化振興財団
【演出】
星田良子
【制作】
フジテレビ
【制作著作】
共同テレビ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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