小さな旅「花慈しむ 機音〜埼玉県秩父市〜」 2014.05.10

(テーマ音楽)
(国井)
関東平野を流れる荒川の上流
深い山々に囲まれた埼玉県秩父市です
新緑がまぶしい4月の下旬
秩父路を行くのは巡礼の人々です
(鈴の音)
鎌倉時代に始まったと言われ100kmの道に点在する34の札所を巡ります
東京にも近く今も多くの人が訪れます
こんにちは。
こんにちは。
秩父の山を望む公園は花の盛りを迎えていました
13年前から増やしてきたシバザクラは40万株

鮮やかな花と草木の緑が秩父を彩ります
山あいの桑畑で春の作業が始まっていました。
土地が痩せて作物が育ちにくい秩父では養蚕が暮らしを支えてきました
100年以上続く養蚕農家の久米哲雄さんです
母親の文子さんと蚕の餌となる桑のせんていに追われていました
初夏から始まる養蚕。
古い枝を切り落とすのはこれから伸びる枝に葉が青々と茂るようにするためです
結構これ力が要るんじゃないですか?そうだいね。
こんな太いのを切るんですか?ハサミじゃ大変ですよ。
ねえ?桑が芽が出てくるとね木が軟らかくなるもっと。
水をうんと吸い上げるようになれば。
じゃあまだ硬いんだ?そうだいね。
秩父の養蚕農家は14軒。
年々減っていますが今も良質な繭を出荷しています
久米さんはこの日自宅近くの竹林に向かいました
長さ3m前後の竹
代々蚕を飼ってきた蚕室で使います
蚕を育てる前に大掃除をするのが春の習わしです
冬の間にたまった天井のほこりを払います
清潔好きで病気に弱い蚕。
掃除や消毒が欠かせません
それこそほんとは無菌状態で飼いたいぐらいなんだけどちょっとそれは無理なんできれいに飼うというのがお蚕の基本ですね。
結局手抜けばそれだけの事になってしまうんで自分のできる事はやってあとはそれこそ運任せというか神様任せ。
そんなんが農業ですね。
かつて江戸と強く結び付いていた秩父。
盛んだった養蚕を生かし絹織物の一大産地として発展しました
女性たちが着ているのは伝統的な絹織物「秩父銘仙」です
地元の文化を守ろうと市民グループが月に一度かつての問屋街に集まります
観光客に秩父銘仙の歴史や魅力を伝えています

大正から昭和にかけて大量生産され庶民にも手が届く絹織物でした
派手な配色と大胆なデザイン。
大正デモクラシーの時代社会進出する女性や女学生のふだん着として人気を集めました
(機音)機の声が聞こえる。
あ〜ここだ。
今秩父で銘仙を織っているのは数軒だけです
家族経営の小さな工場です
新井啓一さん。
15歳から織物工場で働き36歳で独立。
妻のヤスさんと秩父銘仙を織り続けてきました
秩父銘仙は縦糸を先に染め模様をつけてから横糸を通して織っていくため裏表がない生地になります
これ見てると随分使ってきた機ですね。
何歳?一番若い子で50年じゃないですか。
若い子?若い子ですよ。
息子や娘みたいなもんだ。
そうですねぇ。
やはり織機…。
まあ我々は勤めの方もそうですけど働けば賃金がもらえるじゃないですか。
多かれ少なかれ。
織機はそういうものがないから油と掃除ですね。
織機の手当はお給料は油をくれる事と掃除。
染める前の縦糸をそろえる仮織りです
長男の教央さん。
8年前東京の繊維関係の商社を退職しふるさとに戻ってきました
妻の園恵さんと一緒に両親の技術を引き継ごうとしています
ここからいくのがあれなんだよ…つれやすいんだよね。
だからこっちを少し弱くしておいた方がいい。
古い織機は念入りな点検が必要です
いいよ。
必ずこの動きを…。
よく動くかどうか締めたらば。
機音を聞き分け糸を織り込む速さや強さなどを調整します
どこにも目盛りが…。
目盛りが1個もついてないんですよ。
どこをどう…。
1つ目盛りを上げるとか下げるとか。
そういう目盛りっていうのが1個もついてないので全部勘でバランスで見ていくんだなっていう…。
まっ体で覚えるんだね。
体で覚えるんですね。
縦糸の染色は昔から地域で分業してきました
(教央)お世話になります。
(国本)は〜いどうも。
お疲れさまです。
国本実さん。
この道55年の職人です
縦糸の型染めは12反分およそ200mを一気に行います

染め上げるのは新緑を意識した草花です

柄がずれないように型を正確に重ね濃さにむらが出来ないよう適度な力加減で染料を染み込ませます

一晩置いたあと型染めの仕上げです
蒸気で熱したドラムでゆっくりと乾かしていきます

絹糸に咲いた草花が輝きます
昼下がりの新井さんの工場
歌舞伎の粋だとか何かいいから着物だけ見てくれれば…。
休憩の時話題はいつも織物の事です
やりたいものの出来るまでの段階でいうとどのくらいまで?まだ2割いかないな1割…。
1割もいってないかな。
大体形は出来てきたよね初めから見れば。
初めは父が1時間で出来るところを私は1週間たっても出来ないわけですから。
今日はうまくいったなと…。
今日は全然駄目だとかいう事の繰り返しがあるのでそういう事は結構私の中では励みになります。
それはうれしい楽しい事の一つですね。
秩父銘仙の美しさに魅せられた人がいます
木村和恵さんです。
秩父で生まれ幼い頃から野の花に親しみながら育ちました
庭にはラショウモンカズラやニリンソウなど10種類以上の野草を植えています
木村さんは生け花教室を開いています
芽吹きの方と芽が吹いてないとこごちゃ混ぜにしてしまうと分からないので…。
木村さんの祖父母そして両親も織物工場で働いていました
母は銘仙を何枚も仕立て直して幼い木村さんに着せてくれました。
その絹のぬくもりが忘れられないと言います
(木村)チューリップ。
あ〜こう見ればよく分かる。
(木村)いろんなものを花にやってしまってる。
これも花?はいツバキです。
大きな柄だなこれ。
木村さんは15年前から花柄を中心に古い秩父銘仙を集めています
ふだん着だった秩父銘仙がほとんど残っていない事に寂しさを覚えました
これもちょっと派手なやつだね。
そうですね。
それからこのツバキ。
これが三大花の。
一番多いものなんですね。
こんなに大事なものをね今から15年ぐらい前みんな燃してしまうとか捨てちゃったとかって話をいっぱい聞いたんですね。
それで地元の市民としてはこれ何とかしなきゃいけないなと思って始めたのがこれ。
秩父が大好きだからその中の一つの…。
代表というか。
私が秩父の産物だから銘仙を愛しちゃってるのかな。
全国各地を巡り集めた秩父銘仙は1,500枚以上。
身につけた女性一人一人に思いをはせると言います
明るい花柄は心躍らせる女学生
大柄で落ち着いた模様はデパートやカフェーなどで生き生きと働き始めた女性
弓矢の柄は娘が結婚する際戻ってこないよう幸せを願った親の心
100年近くたっても色あせない銘仙です
秩父銘仙を織る新井教央さんと妻の園恵さん。
新緑の季節家族で散歩を楽しみます
愛犬の名前は絹美
末娘の葉子さんはこの春中学生になりました
(葉子)わ〜いっぱい!見て。
(園恵)いたいた。
ハハッ。
尻尾振ってる。
尻尾。
東京から秩父に戻って8年。
ふるさとの自然と共に銘仙を織る日々です
四季折々の草木の変化山の変化とかそういうのをほんとに肌身に感じて過ごせるので。
自分の中に取り込んだ色形空気っていうのは形に出てくるんじゃないかなと思うしそういうものが何らかの形で発信できたらいいなと思いますね。
いいものが出来たという時にはほんとに無条件で喜べるっていうかね。
そういう事が一番やりがいがあるという事につながりますかね。
続けられるっていう。

染め上がった縦糸を織機に掛けいよいよ本織りを行います
1,600本の縦糸を均一の強さで引っ張り慎重にそろえます

受け継がれる機音
(機音)
秩父の春が織り上がっていきます

(テーマ音楽)
(テーマ音楽)2014/05/10(土) 05:15〜05:40
NHK総合1・神戸
小さな旅「花慈しむ 機音〜埼玉県秩父市〜」[字][再]

新緑の季節を迎えた埼玉県秩父市。山あいの桑畑ではせん定作業。町には「秩父銘仙」という大正から昭和に女性に親しまれた絹織物の工場が残る。故郷に寄せる思いに触れる旅

詳細情報
番組内容
新緑の季節を迎え、札所巡りや芝桜をめでる人でにぎわう埼玉県秩父市。江戸時代から養蚕で栄えてきた町でもある。この時期、山あいの桑畑では、せん定作業が始まる。一方、町には「秩父銘仙」と呼ばれ、大正から昭和にかけふだん着として、女性たちから人気を集めた絹織物を作る工場が残る。秩父の草花などを題材に、職人の技で色鮮やかに仕上げられる織物。人々の思いが詰まった織物を今に残す女性。故郷に寄せる思いに触れる。
出演者
【語り】国井雅比古

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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