弱くても勝てます 〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜 #5 2014.05.10

(田茂青志)これから『城徳』野球部は守備を捨てる。
お前達にその覚悟はあるのか?
(江波戸)あります!
(岡留)よっしゃ〜!これが俺達『城徳』野球部の戦略だ!
(増本)決まった!試合相手!
(璃子)試合?
(増本)『武宮高校』!『武宮高校』?
(樽見柚子)これより試合相手『武宮高校』について報告します。
(部員達)お願いします!
(柚子の声)私立『武宮高校』のある平塚市は神奈川県のほぼ中央相模平野の南部にあり背後に丹沢大山山麓西に富士箱根連山を遠望できる温和な気候に恵まれた町です。
10年前に創立されたばかりの『武宮高校』はそのフレッシュな力を学業とスポーツ両面に注いでいます。
以上!
(部員達)えっ?んっ?あっいや平塚市の良さは伝わったんだけどその野球部自体はどうなんだよ。
えっと10点満点で攻撃力4守備力3といった感じです。
(岡留)大したことねえな。
(赤岩公康)じゃあさ俺達は?ちなみに。
努力次第で2にも3にもなれる!じゃあ今は1なんだ。
わざわざ口に出すな。
ごめん。
(璃子)発展途上は向こうも同じよ樽見さん。
璃子さん。
『武宮高校』は資産家赤岩晴敏つまり赤岩君のお父様から多額の融資を受けている。
(亀沢)えっそうなのか?
(璃子)この試合が組めたのもお父様のご尽力があればこそ。
(白尾)おいそうだったのかよ。
親父さんによろしくな。
感謝していてばかりでいいのかしら?その資金力を生かして『武宮高校』は『甲子園』出場経験もある監督を雇ったのよ。
(白尾)『甲子園』!
(亀沢)ヤバいだろ。
甲子園監督か〜。
何よその顔は!うちにだって優秀な監督がいるじゃない!いや『甲子園』どころかひと月前に監督になったばかりのど素人だろうよ。
そんな身もふたもない。
いやまぁつまり俺も…あっいやまぁお前達も『武宮高校』に劣ってるってわけだ。
始めっから負け戦ってことですか?いや俺は優劣の話をしただけで別に勝敗の話はまた別だ。
いいか?俺達はどの高校よりも劣っているが勝つ。
いやだから劣ったまんまで勝つんだよ!それが俺達の戦略だろ?早い回で打ちまくってボロが出ないうちにコールド勝ちで逃げ切る。
(光安)勝つ。
(伊勢田)勝つ。
(牛丸)勝つ。
(志方)勝つ。
(樫山)勝つ。
勝つ。
勝つ!勝つ。
勝つ。
勝つ!野球は普通9回の裏まであるが『城徳』の野球には9回はない。
返事!
(部員達)はい!
(校長)わが校の発展は赤岩様のおかげです。
(赤岩晴敏)では監督予定通りに頼む。
(浦瀬)お任せください中盤までは夢を見させ終盤は完膚なきまでにたたきのめします。
どうぞ。
よろしい。
名付けて天国と地獄作戦だ。
(校長)しかし赤岩様ご子息もいらっしゃる『城徳』野球部をなぜそこまで憎まれるのですか?なぜかって?ありがとうございましたありがとうございましたふざけんじゃねえよ!覚えてろよまさに俺が天国と地獄を味わわされたからだよ!
(樽見楓)あ〜!あ〜!あ〜もうちょっと大丈夫?
(楓)ええ大丈夫。
この嫌な予感の正体は分かってるわ。
あの近所の大人になり切れない大金持ちよ。
えっ?何それ?気を付けなさいよ青志君今度の練習試合晴さんはきっと何か仕掛けて来るわ。
何でキミちゃんのお父さんが?いやよく分かんないんだけど何かプリプリしてんのよ。
何を仕掛けられても問題はありませんよ。
そもそもうちに安心した試合はありませんから。
そうそう。
頼もしいわ。
『城徳』は昔も今も弱いけど何ていうか今の『城徳』の弱さにはう〜ん…。
ハリがあるわ!いやいやいやそれどんな褒め方よ。
いや…すごく嬉しいです。
つまり競争には必ず要求が付きもので要求がなければ競争は起きない。
じゃあお前達の要求は一体何だ?その点強豪校の要求ははっきりしてる。
「『甲子園』で野球がしたい」これだよ。
(松田)また野球?だったら俺達の要求も同じです。
同じじゃダメなんだよ!彼らはお前達よりはるかに強く要求してる。
はい「ただ勝ちたい」ってだけの競争じゃダメなんですか?そんなのは生物学的に話が通らないんだよ。
はい「グラウンドで校歌が歌いたい」じゃダメですか?歌いたいのか?いえ特に。
ハァ〜。
勝ちたい気持ちはみんな同じなんだよ。
競り合った時に勝ちたいっていう思いが強いほうが必ず勝つんだ。
漠然と勝ちたいって思ってるとそれは負けるんだよ。
だから勝負の前に必ず考えろ。
俺達は果たして何を手に入れたくて勝ちたいのか。
(白尾)はい。
はい。
はい。
はい。
・頑張れよ!・・頑張れ頑張れ!・
(拍手)ありがとう。
今日の授業は監督の闘志がビシビシ伝わって来たな。
授業で伝えるようなことじゃないけどね。
親善試合抜かせば監督の初戦だもん。
当然よ。
俺の気持ちは決して強豪校に劣らないぞ!樽見必ず『甲子園』に連れてってやるからな。
うん絶対連れてって。
バッターボックスに立てるのは一人だけなんだその場所をオーケストラで例えるなら指揮者台観衆の注目を一身に集める場所だ
(神田)んっ?亀沢?
(本山)何でバットなんて振ってんの?あっ…来週ついに練習試合があるんだ。
だから少しでもその前に大観衆の前に立つイメージをつくっておこうと思って。
(本山)練習試合に大観衆なんて集まるの?まぁ頑張れよお前は俺達の愛する音楽捨ててまで野球部行ったんだからな。
ありがとうそれじゃ。
亀沢君野球は楽しい?超楽しいよ。
あぁ〜〜!うわぁ〜〜!うわぁ〜〜!どうだ?
(牛丸)岡留さん江波戸さんとは最近どんな感じですか?江波戸?相変わらずビビってる感じじゃないですか。
チームにとっても良くないと思うんです。
周りも緊張するし。
俺は精いっぱいフレンドリーに接してるぞ。
いや言い方かな?高圧的なんですよね。
どこがだよ。
遠慮しないで言えよほら俺のどこが高圧的なんだよ?言えよ。
(岡田)・威勢がいいな岡留・
(田部)陸上部にいた頃とはまるで別人だ。
どういう意味だよ?
(岡田)いや否定はしないよひとより優位に立つために自分のレベルを上げるか周りのレベルを下げるか人それぞれだしな。
バカかお前ら!俺はなよりハードな環境に移ったんだよ。
(大田)ハード?野球の盗塁ってのはな失敗すれば被害はチーム全体に及ぶんだよ。
そのプレッシャーが個人競技のお前らに分かんのかよ!岡留さん。
(田部)じゃあお前その盗塁決めたのか?
(岡留)それはこれからだ。
(岡田)お前やってもないくせに…。
でも絶対決める。
俺が何度だって決めてやるよ。
(大田)何を根拠に?根拠はな…。
ベースとベースの間その距離は27.431mお前にとっては…無敵だからだ。
カッコいいっす。
決定した通り『城徳』野球部は守備を捨てる。
練習イコール打撃練習だ。
1イニング最低10得点の攻撃力を身につける。
(部員達)はい!そして赤岩と江波戸のバッテリーは大崩れしないピッチングを心掛けてくれ。
はい!監督私も打ちたいです。
お前まだそんなこと言ってんのかよ。
(白尾)監督マネジャーの仕事は一段落してます。
打たせてやってください。
白尾君。
分かったよ許可しよう。
ありがとうございます!よしじゃ練習開始。
(部員達)はい!お願いします!お願いします!なぜこんなに打てないと思う?まともにスイングできてたの柚子だけだぞ。
えっ?えっ!?なぜなら柚子はボールに合わそうとしてないからだよ。
えっ合わせてます!じゃあ球に合わせちゃいけないんですか?いいか?お前達はタイミングを合わせようとし過ぎてスイングが小さくなってるんだよ。
タイミングなんて合うかもしれないし合わないかもしれないんだよ。
だったら合うっていう前提で思いっ切り振り切れよ。
(樫山)それで当たるものですか?スイング!いいか?ピッチャーが投げる前にスイングしたらそれは早いんだよ。
投げろ。
はい。
スイング。
いいか?キャッチャーミットに収まった後に振ったらそれは遅いんだよ。
(岡留)どういうこと?いや当たり前のことだよ。
つまりピッチャーの指先からキャッチャーミットに収まるまでのこの間のどこかに当たるタイミングは存在するんだ。
(光安)あそっか。
(光安)きっといつか当たるなら当たった時に備えて思いっ切り振っといたほうがいいですね。
確かに。
(伊勢田)たまたまタイミングが合った時にスイングが弱かったらもったいないですもんね。
まあな。
損だよな。
悔やみ切れねえな!分かったみたいだな。
よしじゃあ当たるという前提で練習再開だ!
(部員達)はい!全員で長打狙いのフルスイングか。
まるでギャンブルだな。
おう『武宮』に大胆なギャンブル仕掛けてやろうぜ。
お前は日増しに大胆になってるよ。
俺は初めから大胆だろ。
野球じゃないよ柚…樽見に対して。
俺が?変わらねえよ。
変わったよ特に俺の前で。
変わったとしても別にそんなの俺の自由だろ。
お前が気にする意味が分からない。
意味が分からないのはそっちだよ告白する気もないのに何であんな…。
赤岩。
お前は卑怯だぞ樽見から逃げてばっかいるくせにそうやって嫉妬だけはするんだから。
俺がいつ嫉妬なんか…。
俺は樽見が好きだからあいつの気持ちを尊重したい。
あいつには一番好きな奴と付き合ってほしいんだ。
そんなんただの臆病だろ。
かもな。
でも…それはお前だって同じだよ。
うわ〜!あ〜!うわ〜!あ〜!母ちゃん父ちゃん。
おう。
お…おかえり俊一。
(亀沢の父)何でそんな棒なんか持ってたんだよ。
あぁこれねバット代わり俺野球部入ったんだよ。
お前の学校の野球部はバットも持ってないのか?野球部は持ってるけど俺は持ってないからさ。
(亀沢の母)よしこんなところかな。
だいぶすっきりしたな。
あれっ!?
(亀沢の父)何?ねぇねぇえっちょっとどいてちょっとどいて。
何よあんた。
ちょっと…うわっ!うわっ!何?すっげぇ!家ん中で素振りができた〜!ありがとう母ちゃん。
これで俺勉強の合間に素振りができるわ〜。
(亀沢の母)あぁ…そう。
あれ?で何しに来たの?まぁ話は飯食ってからなっ?そうねさぁ俊一食べましょう。
(亀沢の父)食おう食おう。
うん…。
よっしゃ〜すっげぇ久しぶりに母ちゃんの作った飯食う!今度の試合また妙なことたくらんでんだろ。
聞き捨てならないな。
何か私に悪巧みされるようなことしたのか?息子として助言する。
何をするにももっとよく考えろ。
考えてたまるか。
開き直った〜。
俺はもう小難しいことは考えず本能的に生きるって決めたんだ。
本能的?そうだ。
思えば本能とは無縁の人生だった。
小さい頃からあらゆる感情を押し殺し机にかじりついて生きて来た。
まぁそのおかげで今の地位があるわけだが。
つまりここに来てようやく本能を取り戻したってわけだ。
思う存分感じるままに生きようと思う。
大人の発言とは思えない。
これが俺の生き方だ。
否定するならお前は俺と違う人生を選べばいい。
今んとこ似てるがな。
ハハハ…。
(峠)『武宮高校』?あの浦瀬監督がその野球部に?やっぱり有名な監督なんですか?我々指導者の間では有名だ。
まぁ俺も一応指導者ではありますけど。
この私と並んで選手に対する厳しい指導で知られている。
フッまぁせいぜい頑張りたまえ。
用事はそれだけか?まぁだけですけど…。
「けど…」何だ?いや…。
あのスーツのサングラスがいないとこうも伸び伸びできるんですね。
ひとの学校で伸び伸びするな!はいやめて。
いいかお前達のスイングはな1・2。
1・21・2…。
やめろやめろ…!これ悪い見本だから。
(璃子)つまり彼らのスイングは2段階になっていると?その通り力を出す瞬間は一挙動1のタイミングで素早く振る。
そして2で戻す。
1・21・2…。
これをやるんだよ!やれよ!はい1・21・2…。
『武宮高校』との試合に向けてこの速素振りを徹底的に練習する続けろ!はい!1・2…。
(璃子)どうして速く振らなきゃいけないんですか?スイングのバランスが取れてると素早くトップまで戻って来れるんですよ。
でもああいうふうに問題があると…。
おい志方。
お前それ神主じゃないかよ。
(志方)違います。
ハァ〜。
全員戻しが弱いぞもっと素早く戻せ!鋭く戻せ!はい!戻せ戻せ!
(璃子)あの監督大事なのは振ることじゃないんですか?「いいスイングをしろ」って言ったほうが早くないですか?それができる連中だったらこんな練習はしませんよ。
あっそっか。
それに大胆に振る練習にもなるんです。
大胆に?うんこいつらは良くも悪くも真面目なんです。
打席に入ってガチガチになってしまうのはうまく打とうと思う気持ちが強いから。
それが普段からこうやって何万回と振ってればそのうちの1回だと思って大ざっぱに振れるんですよ。
大ざっぱでいいんですか?いいんですよ。
それが思いっ切り振れるんだったら。
(璃子)亀沢君!亀沢君?大丈夫?
(岡留)おい何だよまた寝不足か?実家の商売がいよいよ立ち行かなくなっちゃって…。
それでも両親は「卒業までは責任持つ」…なんて言ってくれてるんすけど無理してると思うんだよな。
(璃子)それは眠れないわね。
ってことは亀沢はご両親に無理をさせてまで卒業はしたくない…ってことなのか?う〜ん…そうも思うし。
でも何でもいいから卒業したいとも思うし。
フッどうなんでしょう。
まぁその亀沢のご実家の経済状況っていうのを完璧に把握してるわけじゃないからまぁ何とも言えないけどもいくら担任だからってそこまで立ち入った調査はできないと思うんだよ。
うん…そうっすよね。
両親だってプライドがあるし。
それはお前だってあるだろ。
えっ…プライドですか?あるんだろ?まぁたぶん…あるでしょうね。
あるわよ。
朝まで勉強してたみたいただの寝不足よ。
何だよもうよかったな〜。
よし行くぞ!ほら授業遅れちゃうから。
亀沢よかったな。
お前遅れんなよ。
部誌書いといて部誌。
江波戸君早くしてね。
(岡留)璃子さん。
んっ?あの『武宮高校』に取材に行く予定ってありますかね?あぁええちょうど今日の放課後の練習に。
よかったじゃあ俺も連れてってください。
何で?あの俺の仕事は盗塁なんでやっぱり相手ピッチャーの癖をこう少しでも探っときたいんですよ。
いやでも…。
迷惑にならないようにするんでお願いします。
え〜?
(樫山)おい見ろ。
岡留さんが璃子さんを口説いてるぞ!おい江波戸!お前も来いキャプテンとして。
(江波戸)えっ?どこに?思いっ切り振り切れ。
フルスイングだぞ!
(三條)お〜これなら『武宮』との試合も期待が持てそうだ。
校長。
(三條)実に気持ちのいいスイングをしている。
思い返すと俺は高校時代一度も思いっ切りバットを振った覚えがないんですよ。
(三條)あ〜私の時は守りの野球だったし。
でも信念を持っておやりになられてたんでしょ?信念というか…。
当時も守りは下手だったのに何で守り勝とうとしたのかなぁ。
でも今俺だって得点力もないのにコールド勝ちしようとしてますよ。
物足んねえぞ!どんどん来い!亀沢君すごい気合だね。
あぁ…。
んっ?おい江波戸と岡留どこ…。
知りませんよ!何でそんな怒って…。
スポーツ専門誌『トロフィー』の利根璃子です。
でこちらが…。
カメラマンのモトマスです。
アシ…アシスタントのトメオカです。
見習いのハトエです。
監督の浦瀬ですまぁ適当に見て行ってくださいよ。
(璃子)ありがとうございます。
ほぉ…。
部長まで何ですかその格好は。
「カメラマンの風格を出せるのは俺をおいて他にいない」とおだてられつい…。
機材は全て写真部から借りました。
あぁ…。
恥ずかしいなぁ…。
連れてるこっちが恥ずかしいわ!まるでうちのグラウンド見てるみたいだな。
(浦瀬)おい!もっと腰を落とさないと。
全然言うこと聞いてくんなくて。
あれが『甲子園』に行ったこともある監督ですか?
(璃子)そのはずなんだけど…。
帰ろう帰ろう。
わざわざ平塚くんだりまで連れて来られてとんだ無駄足だぜ。
勝手について来といて何よその言い草は!帰ろ。
あの記者は『城徳』のルポを書いてる。
あとの見るからに怪しい3人も『城徳』関係者だろ。
奴らがいる間はこのまま弱小校で通せ。
はい。
クソ。
あんな相手じゃ偵察行く必要なかったな。
よ…よかったじゃないたくさん盗塁できそうで。
バカだったら俺じゃなくてもいいじゃねえかよ。
あ…ご…ごめん。
謝んなよ。
いや俺はさ一応スカウトされた身だからやっぱり期待には応えたいんだよ。
そうだよね元からいた俺達とは違うもんね。
そう…お前達に「入部してくれてよかったな」って思わせたいんだよ。
俺が出塁してる時にもしもお前の打順が来たら長打はいらねえからな。
どんな打球だろうと俺がこの足で試合決めてやるよ。
それは助かるよ。
(岡留)うわぁ〜!!
(江波戸)待ってよ。
(白尾)あっ俺な…。
ああ。
次の試合に負けたら樽見に告白してみるわ。
えっ!分かりやすいな。
何で…何でそうなるんだよ。
お前見てたら我慢してんのバカらしくなったんだよ。
お前なんかを好きでいたら樽見がかわいそうでしょうがねえ。
(白尾)だって付き合うつもりないんだろ?いや…そりゃ幼なじみだぞお前ほとんどきょうだいみたいなもんなんだよ。
それがいきなり…。
別にお前の事情とかいいからさとにかくぶつかってみるよ。
あっ…じゃ…何で負けたらなんだよお前普通そういうの勝ったらだろ?こんなところで負けてたら『甲子園』なんて絶対無理だ!樽見の笑顔も見られない。
だったらせめて…気持ちだけは伝えたいんだ。
(白尾)ほらさっさと投げろ。
お前の得意な打たせる球をな。
どりゃあ!!帰国しても渡米しても騒がれちゃうんですね。
そんなの話題づくりのために行ったり来たりしてるだけなんだろそれ。
あっ監督こないだの対談原稿チェックしてもらえますか?あっ!谷内田健太郎との対談?「憧れの選手だった谷内田さんと対談ができて幸せです」?いや…こんなこと一つも言ってないぞ!彼が勝手に書き直したのよ。
へぇ〜。
こんなもん絶対載せないでくれよ!でも変よね。
『武宮』みたいな弱いチーム使って晴さん何をするつもりなのかしら?
(璃子)監督だって評判倒れもいいとこ。
あれなら田茂監督のほうがずっとマシよ。
でもそれなら『城徳』の目指すハイリターンでノーリスクが早くも実現するかもしれない。
ねぇ監督。
んっ?あ〜まぁするかもしれないししないかもしれないよ。
弱気ですね珍しく。
いやだってまだただ一つの仮説にしかすぎませんからね。
実験データが一つもないんだから。
これから実験を重ねて行くわけね。
まぁそうですね。
実験結果が出たらそれをフィードバックしてまた新たな仮説を立てるまぁそれの繰り返しですよ。
野球はこれから何度も実験できるけど亀沢君の問題はそうもいきませんね。
変わりませんよ。
何をするにしたって初めから結果が分かってるなんてことはほとんどありませんからね。
生きて行くってことは仮説と実験の繰り返しなんですよ。
そう言っちゃそうだけど。
実験が失敗したら記事にはなりませんか?あっ亀沢君のことは書きませんよ!試合のことですよ!あぁ…。
そりゃまぁ…成功したら嬉しいけど。
たとえどんな結果になろうと納得行くまで書くつもりです。
私にだってありますからね。
プライドが。
あの…。
はい。
もう少し早く歩けませんかね?えっ?いや…このままだとスーパー閉まっちゃうんですよ。
いや…送ってくれてたんじゃないんですか?ハァ…。
試合前に主砲にケガさせるエースがどこにいるんだ?すいません。
よけられなかった俺も悪いんです。
大丈夫なの?検査の結果は問題ない。
でも念のため明日の試合は…。
ああ休め。
えっ?いやダメだよお前がいなかったら…試合勝てないよ!出てくれよ!赤岩。
赤岩!大丈夫なんだろ?出てくれって!赤岩!お前は鬼か。
もう…。
すいません。
勝ちたい気持ちは分かるけど…。
お前自分でやったんだろ!大丈夫だよ!みんなバッティング練習はみっちりやったんだし。
絶対勝てるよ。
はい。
じゃあ明日の打順を発表する。
お願いします。
お願いします。
1番赤岩。
はい。
2番江波戸。
はい!3番樫山。
はい!4番牛丸。
はい。
5番光安。
はい。
6番伊勢田。
はい。
7番志方。
はい。
8番岡留。
はい。
9番亀沢。
はい。
以上だ。
(白尾)いや監督1番は足の速い岡留にするべきだと思います。
2番の江波戸だってバントが下手ですよ!いや1番は俺がいいと思います。
おめぇは足遅ぇだろうがよ!俺は少しでも多く打席に立ちたいんだよ!確かに白尾の言う通り1番が出塁して2番がそれを送り345のクリーンアップでそれをかえすのがセオリーだ。
まぁそれは分かるけどもそのセオリーはうちには通用しない。
どうしてですか?確実に1点取ったところでその裏で10点取り返されるのが目に見えてるだろ。
(部員達)あ〜。
だから俺達は10点取られるという前提で15点取れる打順を組まないとならない。
でそれがこの打順ですか?うん。
守備は悪いが強い打球が打てる赤岩が出塁。
そして次は白尾の次に打撃好調の江波戸が登場。
345のこのクリーンアップはまぁそこそこ打てる。
どうだ?なかなか圧迫感があると思わないか?いや…ただそこそこ打てるバッターを上位打線に並べてるだけな気がしますけど。
だから打順を線で考えるんじゃなくてこう…輪として考えるんだよ!うん輪として考えれば上位も下位も存在しないだろ。
確かに…。
だからうちは先頭打者が8番9番の時は実はチャンスなんだよ。
だって岡留と亀沢だってそこそこ打てるぞ。
その2人がヒットを打ったらどうなる?ピッチャーは「うわ下位打線に打たれた」とうろたえるに決まってるだろ。
そこで間髪入れずに赤岩がド〜ンと長打を打つんだよ!相手はお前らと同じ高校生。
うちみたいな弱小に連打を浴びたとなればもうそのショックは計り知れない。
でも俺達はまだまだ攻撃の手をやめないぞ。
ここで登場するのが打撃好調の江波戸だ。
その後はダメ押しでそこそこトリオが出て来たらもううちの勢いは止まらない!この回は間違いなく大量得点できるイニングとなる!勢いに乗ってどさくさに紛れたら勝てるんだよ。
(部員達)お〜!これで行こう!
(部員達)お〜!
(増本)帰りの切符なくすなよ!俺は絶対渡したからな!ちゃんと確認しろなくしたら自腹だからな!増本。
よし行くぞ!
(部員達)はい!
(白尾)お願いします!お願いします!お願いします!お願いします!お願いします!
(浦瀬)いわゆるガリ勉タイプは1人もいませんな。
これは手ごわそうだ。
手ごわくありたいものです。
試合は公式ルールにのっとりましょう。
5回10点差コールド制で。
(浦瀬)はい。
(主審)集合!
(主審)お願いします。
(部員達)お願いします!・行くぞ!・
(三條)さぁ田茂君の初戦の始まりだ。
実験は成功しますかね?実験!?赤岩君!頑張って!当ったり前だろ。

(主審)プレー!お〜!来た〜!お〜!やった!江波戸!続け!
(江波戸)はい頑張ります。
イェ〜イ!よし!突っ込め!よっしゃ〜!よしナイスプレー!
(岡留)おい!点入った!やった!すごいすごい!何だ?この急成長は。
・さぁ行こう・
(主審)プレー!よし!よし!
(主審)ストライクスリー。
よっしゃ!
(晴敏)やりますな〜『城徳』は。
赤岩さん!
(晴敏)ご無沙汰しております。
息子さん大活躍ですよ。
田茂監督率いる今の『城徳』にしてみたらこんな新設校の野球部なんか物足りないんじゃないんですか?でもこの試合をコーディネートしたのは赤岩さんですよね?・行け行け・あ〜!よっしゃ〜やった〜!!やった〜!!もっとだもっとどさくさ打線に火付けろ!どさくさ〜!どさくさ〜!赤岩勝つぞ!勝つ!
(打球音)・行け行け・回れ!行ける行ける行ける!
(三條)よっしゃ〜!
(璃子)やった〜!赤岩さんが寄付してくださったネットのおかげです!まさか余計なお世話だったって反省してますよ。
(璃子)何をおっしゃるんですか。
「あれのおかげで無駄な練習時間が減った」って監督もすごく感謝してました。
監督が?俺に?えっ…感謝?
(三條)監督だけじゃない選手達も大喜びですよ。
はぁ〜そうですか。
えっちょっとあの…それ…ホントにですか?ええ。
はぁ。
(主審)ストライクスリー。
・ナイスピッチング!・ねぇ白尾君これ絶対5回コールド勝ち狙えるね。
このまま行けばな。
うん。
セーフセーフ。
(岡留)しゃ〜!どさくさ!おい!いつまでこんな寝ぼけた試合やってんだよ。
はい?まだ前半…。
つべこべ抜かすなちゃんと正々堂々と戦ってやれ。
失礼じゃないか!すいません。
おら〜!!とっとと交代せぇ!!戻って来いや〜!!だ〜!!あっちの監督急に怒りだしたぞ。
おとなしそうな人が怒るとおっかねえな〜。
(主審)ストライクスリー。
何だ?あのピッチャー。
急に球が速くなったな。
ストライクスリー。
ストライクスリー。
打ちに行くぞ〜!はい!・しゃ〜!・・しゃ〜!・
(三條)さっきまでとはまるで別のチームだなぁ。
(璃子)全部芝居だったってこと?スクイズ!?
(審判)セーフ。
もう逆転?
(増本)あの大量リードは何だったんだ。
これでいいこれでいい。
取られた分は10点増しで取り返せ。
はい…。

(主審)ストライクスリー。
またそのスイングに逆戻りかよ!おい志方バットを短く持つな。
空振りでいいんだから思いっ切り振り切れよ!
(主審)ストライクスリー。

(楓)いやいや…。
まだ早い。
(打球音)岡留君走って!うわぁ〜!行け〜!
(三條)よ〜し。
さぁ10点差か〜。
この回無得点ならコールド負けです。
(主審)ストライクスリー。
チクショ〜!赤岩!分かってるよ!打ってよ!赤岩君。
おう。
今日一番いい三振だった。
しゃ〜!すごい成功した!打て赤岩!打ちます!頑張れ公康!セーフセーフ!
(審判)セーフ。
よし!よし!やった〜!よし。
江波戸!はい頑張ります。
よし。
バカ…。
戻れ!戻れ!戻って戻って!戻って!
(審判)アウト!
(歓声)悔しいな〜もう。

(主審)ゲーム!あの局面でスクイズだなんて。
あれお前強いチームのやることなんだよ江波戸。
誰かのためにチームのために貢献しようってのはそもそも人間の本能じゃない。
つうか江波戸だけじゃないぞ。
俺はお前達が本能的に大胆にやっていいことをああも縮こまってオドオドしてるのを見てると本能的に我慢できないんだよ。
だって正直3回までは素晴らしかったんだ。
あれこそ俺達が目指していたどさくさ野球だ。
じゃあ何でそれが続かなかったと思う?プライドの欠如だよ。
俺達がどんなスタイルでどんな野球をやりたいのか…という考え方に対する自信だそれがプライドなんだよ。
だってプライドなくて守備が捨てられるか?1回で10点目指せるか?弱いから強くなるんじゃないんだよ。
弱いまんまで勝つんだ。
そうやってみんなで勇気を出して決めた方法じゃないか。
勝ったからプライドを持てるんじゃないんだよ。
そんなもん次負けたら簡単に崩れ去る。
いいか。
初めからプライドを持ってる奴だけが勝てるんだよ。
だから俺はお前達に弱い気持ちで持つんじゃなくて強い気持ちでプライドを持ってもらいたい。
いいか?
(部員達)はい。
じゃあ反省会は終わりいただこう。
(楓)さぁどうぞ。
(一同)いただきます。
ごめんな。
えっ?いや俺が…。
大丈夫だよ次はお前なんかに気ぃ使わせずに走るから。
分かった。
樽見。
あっ!なぁ…なぁ白尾白尾白尾!お前今日の試合は無効だぞお前出てないだろ。
えっ?何が?そうだな。
それに今日のお前見ててもうちょっと待っていいかなって思えたよ。
何を待つの?いや待ってくれ!だから何をって!もうちょっとだけ…。
(璃子)つまりこういうことですよね?あぁ…まぁまぁ…そういうことです。
うんカッコいいと思います。
なぁ戻ろう食べよう。
だから何をって!
(白尾)まぁまぁまぁいいからさ。
いただきます。
おめでとうフフ。
さぁみんなにステキなプレゼントがあるわよ。
(白尾)デカっ!すご〜い!
(亀沢)監督。
お〜おはよう何だ?精が出るな。
俺…。
やっぱり学校やめることにします。
2014/05/10(土) 21:00〜21:54
読売テレビ1
弱くても勝てます 〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜 #5[字][デ]

「守備を捨てとにかく打ちまくり、コールド勝ちで逃げ切る!」というトンデモ戦法で練習試合に臨む城徳野球部。だが、この試合は赤岩の父・晴敏が裏で糸を引いていて…。

詳細情報
番組内容
「守備は捨て打ちまくり、コールド勝ちで逃げ切る!」というトンデモ戦法で練習試合に挑む城徳野球部!
だが実はこの試合は、勘違いから城徳野球部に恨みを抱いた赤岩(福士蒼汰)の父・晴敏(光石研)が、城徳野球部に恥をかかせるために仕組んだものだった…。
一方、白尾(中島裕翔)が柚子(有村架純)との距離を縮めていくのが、何故か気になってしまう赤岩。さらに白尾は練習試合に負けたら柚子に告白する、と宣言して…。
出演者
二宮和也
麻生久美子
福士蒼汰
有村架純
中島裕翔