日本!食紀行 2014.05.11

加賀百万石の私の育ったこの町は穏やかな時間が流れ人々の日常の中には和の薫りが漂います。
華やかで洗練された加賀料理という食文化。
それを支える自分もいつかはやってみたいなって…。
江戸時代から受け継がれる世界農業遺産能登の里海が育む全部自然が育ててくれるもんだから。
食を彩る「加賀料理」っていう大きな概念は「おもてなし」っていう一つの概念なんですね。
受け継がれる加賀料理の中には私たち石川県民が大切にしている郷土料理があります。
確かに金沢で郷土料理といえば治部煮ですが…。
金沢出身の私も普段の生活ではあまり食べない郷土料理治部煮。
作り方が難しいわけではありません。
使うのはまず麩や季節の野菜を煮ているだし汁に肉を入れ火が通るくらいに煮込みます。
器に盛り煮汁にとろみをつけた「あん」をかけ最後に「わさび」をそえて完成です。
治部煮。
郷土料理でありながら地元ではあまり食べられない不思議な料理。
今週の『日本!食紀行』はこの治部煮をひも解きながら加賀百万石の食文化に学びます。
まずは治部煮の主役鴨肉に注目です。
金沢から車で1時間。
日本海に面したここに鴨をはじめとした野鳥の楽園があります。
木々に囲まれ穏やかな水面をたたえる片野鴨池。
1993年にラムサール条約に登録されました。
周囲3キロ10ヘクタールと広さは野球場2つ分。
日本で最も小さなラムサール条約登録地の一つとして世界的にも貴重な湿地です。
11月からコハクチョウをはじめ1万羽近い野鳥が越冬地として羽を休めに来ます。
最も多いのはミコアイサや国の天然記念物ヒシクイなど珍しい野鳥も多く見られます。
こちらは鴨池の象徴2000羽近いトモエガモが毎年見られるのは日本ではこの鴨池だけです。
毎年多くの鴨が鴨池に集まるのには理由があります。
鴨たちの餌場は鴨池近くの田んぼ。
鴨は水と一緒でなければ餌となる落ちモミなどを食べられないため近くの農家が協力して冬も田んぼに水を入れ餌場を確保しているんです。
夕方餌を求めて飛び立つ鴨たち。
これを狙うのが江戸時代から300年以上続く坂網猟です。
長さ3メートルY字形の網を上に投げて鴨を生け捕りにします。
猟期は11月から2月までのおよそ3か月間。
ワンシーズンおよそ200羽しか捕れない難しい猟です。
江戸時代この坂網猟は武士の鍛錬でした。
銃などを使わず乱獲につながらない坂網猟は自然保護にもつながっています。
池田豊隆さんは子どもの頃から坂網猟に慣れ親しんだ大ベテランです。
人間の五感を使って。
耳で聞いて目で見て。
ほいで手から離れた網に入る時に手ごたえっちゅうもんが感じるんよ。
考えられんやろ?わしら上げて入るぞっちゅう時のバクッていって入っていく時のそのスリルっちゅうかのぉ…それが手ごたえのように感じる。
そのへんが魅力やな。
池田さんが子どもだった昭和20年から30年代は100人を超える坂網猟師がいました。
簡単なら誰でもするし…。
世の中に至るところにあるはずや今も残って。
そやからここに残ったっちゅうのは京都以上の食材を使った料理をする坂網猟で捕った鴨をメーンとした晩餐会が東京南青山のレストランで開かれました。
腕を振るったのは「世界のベストレストラン50」でアジア最高位の…。
3か月で200羽すべて生け捕りの貴重な坂網鴨。
世界の食材を知る成澤シェフの目に坂網猟と鴨はどのように映ったのでしょうか?だなと思いました。
真実の行為。
新人猟師が自然に挑みます。
どうやったらもっとうまく捕れるのかなとか…。
緊張の瞬間です。
坂網猟の猟期は残り1週間です。
きのうは全然…うーん…。
本職は農業の今シーズンデビューした新人です。
(男性)10か…。
そうですね。
それぞれの猟師にはあらかじめくじでいくつかの猟場が決められています。
その中からその日の天候を見て場所を選びます。
300年積んできたデータがあるんでそれベーシックでその時のベストのところを探って構えるんですけどそこの読み加減がほぼ…。
なかなかその…。
何番におるかでだいぶ違う。
そうそうそう。
なかなかなくなってきたんで…。
でこういうベテランさんがどう条件を読んで入るかを聞きながら僕らほんならどうするかなと。
フフフフ…。
どうしようかというとこです。
でユウジさん今日どこですか?で今ああやってもういっぺん風見に行くんですって。
どっちからどう吹くか。
雪の山道を登る山根さん。
鴨池から飛び立つ鴨を見渡せる高台にこの日の坂場を決めました。
手際よくいつもと同じ5本の坂網を組み立てます。
自分で捕った鴨猟に誘ってくれた先輩との記念写真です。
これまで新人猟師としては上出来の3羽を仕留めました。
本当にいい環境なので。
午後5時半頃コハクチョウが餌場から鴨池に戻ってくると鴨がいよいよ飛び立ちます。
鴨を狙えるのはわずか15分間。
勝負です。
(羽ばたく音)飛び立ちました!緊張が坂網に伝わります。
距離を測った山根さん。
身をかがめて備えます。
(風の音)吹き荒れ始めた風。
この日山根さんの坂網が空に上がることはありませんでした。
番小屋に戻ってきた猟師たち。
伸び上がるっちゅうか…。
上がりたかったけど。
そうですね。
まだあと…。
それ一番困ります。
悪天候の中成果を上げる先輩たち。
ハハハ…!さすがや!いただきました。
いやぁやるわ!有言実行や!
(男性)おお〜!2羽を仕留めたつわものも。
いやいやいやいや…!いや〜!しっかり成果を上げてくる先輩たちの姿に山根さんは…。
いやぁうれしいです。
うれしいっていうかすごいなと思います改めて。
毎回持ってきたりとか…。
やっぱりこんな状況下で数少ないですけど必ず持ってくるっていう…。
やっぱりそういうのをまねしていきたいなって…。
まあまねっていうか自分もいつかはやってみたいなって…はい。
4羽分の重さはどや?4つおるんか?坂網猟で捕れる鴨は3か月でわずか200羽。
その貴重な食材のほとんどが地元の料亭に運ばれます。
無傷で捕られる坂網鴨には血生臭さがありません。
空腹の鴨を捕るので肉は新鮮なまま保たれジビエ本来のうまみが凝縮しています。
新鮮な坂網鴨でいただく郷土料理の治部煮を熱々で食べたいという地元の声から生まれたごちそうです。
じぶすきを考案した鍋に入れるつみれには子どもの頃の思い出が。
(山岸さん)家庭で作ってましたから。
その材料はこちら。
鴨の背中側の骨です。
鴨の骨は他の鳥と比べてやわらかくミンチ機に入れるとひき肉のような状態になります。
これに卵を加えしっかりとこねたら一度湯通し。
骨のつみれが完成です。
治部煮のように小麦粉をつけてじぶすきに入れれば昔懐かしい家庭の味がよみがえります。
なかなかそれでうまく包丁でたたけないもんですからね口の中に骨が残ったりね歯の間に挟まったりして。
坂網猟の地元ならではのあったか料理です。
続いては金沢で作られる治部煮に欠かせない食材。
それがこちら。
美しいすだれ模様としっとりとした食感の麩は江戸時代の中頃に加賀藩お抱えの料理人舟木伝内が考案したといわれています。
金沢市郊外にある麩の工場。
石川県で最も大きな不室屋の工場です。
すだれ麩はグルテンと米粉を原料とするこの筋張った生地からできます。
この生地を機械で練ると…。
こんなにしなやかな生地に。
これに空気を入れながら伸ばしていきます。
この作業がすだれ麩にふんわりとした食感を与え味がよく染みる気泡を作ります。
続いてこれがわずか5秒の職人技!左手の指を巧みに使いながら生地を中に詰め右手で表面を伸ばします。
すだれの模様をきれいに出すためにはつるっとした表面にしなければなりません。
その重さは1つ80グラム。
すべて手作業でもこのようにピッタリです。
お見事!次は厚みが均等になるように生地を伸ばします。
米粉をつけたすだれ。
このすだれ巻きが商品の美しさを左右します。
職人が最も気を使う作業です。
すだれをまとめて熱で膨らんだ生地にはくっきりとすだれの模様が。
完成です。
このすだれ麩の作り方は創業から150年変わることなく受け継がれています。
そしてこのすだれ模様にも治部煮と相性抜群の秘密が。
表面積が大きくなれば炊いた時に味が染み込みやすくなりますのでそのために巻いてます。
不室屋のお食事どころで出されている治部煮です。
こちらの治部煮の主役は昔から鴨ではなくニワトリ。
同じ治部煮でも店によってさまざまなバリエーションがあります。
治部煮の本来の姿を知ることができる歴史的資料が加賀藩の御膳所だった大友楼に残されています。
7代目の「じぶじぶと煮て候」ってここに書いてある。
「じぶじぶと」ここに「じぶじぶと煮て」って書いてある。
「じぶ」という名前自体はこれは江戸の初めぐらいに『料理物語』っていう江戸の版木本の中に出てます。
それでその同じ文句「じぶじぶと煮て候」というものはそれから150年ほどした『料理力草』という加賀藩の料理人がしたためた本の中にもそれと同じ文章が出てるわけですね。
この「じくじく」や「しふしふ」という擬音語が治部煮の語源になったというのが有力な説です。
また記されているレシピをひも解くと当時の治部煮は雁や鴨の肉とわさびだけの料理だったことがわかります。
治部煮にすだれ麩や野菜を入れるようになったのは幕末以降と考えられています。
現在は山の幸だけでなく海の幸も。
石川県北部の七尾西湾。
春先の治部煮にピッタリの食材がこの海にあります。
その食材とは…。
カキです。
能登半島は日本海側一のカキの産地。
冬が旬だと思われている真ガキですが実はこの桜の季節が一番うまいとこの道30年の木村さんは語ります。
6月の産卵期を前にカキは体内にグリコーゲンやタンパク質をため込むのでこの時期のカキは身が大きく味も濃厚になります。
また世界農業遺産に指定されている能登の海はカキの成長が早いのも特徴です。
(木村さん)能登のこの自然大事にしていかなきゃならないっていうのはカキの養殖にしてもそうだし大切なことだと思います。
金沢市民の台所近江町市場には新鮮な食材がいつでもそろっています。
夏は白身魚を使ったり旬の野菜地物の野菜を使うなど流通の発達とともに治部煮にも旬の味覚が使われるようになっています。
金沢を訪れた人が目を奪われる華やかな近海の刺し身や旬のタケノコ。
祝いの席に欠かせない鯛の背中におからを詰めるこの郷土料理などがお座敷で振る舞われます。
「加賀料理」っていう大きな概念は「おもてなし」っていう一つの概念なんですね。
(大友さん)それからお料理の器も九谷焼があったりまた輪島塗があったり加賀蒔絵があったりするように「じぶ」を一つ取ってみればおもてなしの一つの器として「治部椀」がよく使われている。
治部煮専用の器。
この独特のとろみを生かすその秘密とは!?治部煮専用の器治部椀は底が浅いのが特徴です。
食べる時に中の具材がひと目で見て楽しめます。
治部煮の特徴であるとろっとしたあん。
器が浅いのでほどよい量を具と一緒に味わえます。
伝統の猟で捕ったこだわりの鴨。
(男性)さすがや!いやぁやるわ!いやぁうれしいです。
うれしいっていうかすごいなと思います改めて。
職人の手が生み出す金沢独特のすだれ麩。
旬の食材も取り入れます。
郷土料理はおもてなし料理に。
おいしいです。
はい。
わさびが合うね。
いいお味です。
加賀百万石おもてなしの心が詰まった郷土料理治部煮。
一回食べに来まっし!次回の『日本!食紀行』は東京湾。
江戸前ハマグリをよみがえらせた漁師たちに学びます。
2014/05/11(日) 06:00〜06:30
ABCテレビ1
日本!食紀行[字]

日本全国各地の「食」を通して、地域の歴史や文化、人々の英知や営みを学び、温かいコミュニティーなどを四季折々の美しい風景とともに描き出す教育ドキュメンタリー番組。

詳細情報
◇番組内容
石川県の郷土料理…治部煮(じぶに)。鴨肉、麩、しいたけ、せりなどの青菜を煮込み、あんをかけた比較的簡単な料理です。客人と食べる「おもてなし」の郷土料理ですが、なぜか地元の人はあまり食べません。しかし、そこに使われる食材一つ一つを紐解くと、加賀百万石の食文化の歴史が見えてきます。
◇番組内容2
江戸時代から伝わる伝統猟法「坂網猟」で捕られる鴨肉は、貴重な食材で、ほとんどが地元で消費されます。治部煮に使われる「すだれ麩」は、金沢独特のもので、映画「武士の献立」でも注目を集めた加賀藩の料理人・舟木伝内包早が考案したと言われています。まさに、おもてなしの逸品をたっぷりとご紹介します。
◇ナレーション
田中美里(女優 金沢市出身)
◇音楽
エンディングテーマ曲
Bom Dia ! / 柏木広樹
◇制作
企画:民間放送教育協会
制作著作:北陸放送
◇おしらせ
☆番組HP
 http://www.minkyo.or.jp/
◇おしらせ2
この番組は、朝日放送の『青少年に見てもらいたい番組』に指定されています。

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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